ノウハウを活用した文章品質向上のための校閲AI開発

自社のノウハウを活用した高精度の校閲基準により、公開前の文章品質を担保し、競合との差別化を実現!

導入前の課題(Before)

校閲業務は、公開前に問題がないか確認するプロセスを含め、多大な時間と労力を要していました

特に、ライティング自体は別の会社に依頼していたものの、完成した文章が公開基準を満たしているか確認する校閲作業は効率が悪く、リソースを圧迫していました。

さらに、校閲時の判断基準が属人的で、基準の統一が難しいことや、確認作業での見逃しや誤りが発生するリスクも課題となっていました。これにより、効率的かつ信頼性の高い校閲プロセスの構築が求められていました。

導入背景(WEELを選んだきっかけ)

【クライアント様からの回答】

自社の校閲プロセスにAIを活用できないか模索する中で、WEELのメディア記事を通じて生成AIの実践的な活用事例を知ったことがきっかけだったそうです。

初回の打ち合わせでは、PoCの進め方や技術的な実現可能性について具体的かつ現実的な見通しを共有してもらい、「単なる理論提案」ではなく、検証プロセスまで伴走できるパートナーだと感じていただけたとのこと。

要件が広範で曖昧だった当初から、対話を重ねる中で焦点を整理し、現実的な解決策へと導いてくれた点に信頼を置き、WEELへの依頼を決定されたそうです。

ソリューション概要

AI校閲のプロトタイプを構築

本プロジェクトでは、独自の校閲基準をLLMに反映し、原稿に対する修正理由と修正文を一貫して提示できるAI校閲のプロトタイプを構築しました。

初期は「校正前→校正後」を直接生成する精度検証から着手し、続いて理由出力を先行させるChain of Thought(CoT)型のプロンプト設計、さらに参照情報を付与した上での推論など、アプローチを段階的に拡張。

モデル種別の変更や学習データ拡張も含め、手法・データ・モデルの三方向から改善可能性を評価しました。

実装プロセス/プロジェクト体制

PoCは短期集中で実施し、要件の再定義と仮説検証を小さく速く回す体制を採用しました。

WEEL側はプロンプト設計・データ前処理・評価指標設計を担当し、クライアント側は校閲基準の明文化やサンプル提供、レビューを担う協働体制を構築。プロジェクト初期は要件が広範で曖昧でしたが、中盤で改めて焦点を絞り込み、評価観点と成功条件を再設定したことで、以降の検証効率が大きく向上しました。

プロジェクトのステップ

まず、既存記事の「修正前・修正後・修正理由」を整理し、50件規模のデータセットを用いて直接推論の有効性を検証しました。

次に、理由を先に出力してから修正文を生成するCoT(Chain of Thought)プロンプトへと拡張し、入力文をそのまま出力してしまう課題の軽減を確認。さらに、リファレンスや引用箇所、前後文脈などの参照情報を付与した推論や、データ量の段階的拡張を実施しました。

加えて、テキスト補完型モデルによる比較検証も行い、出力精度と一貫性の違いを多角的に評価しました。

実装のポイント

直接推論では、修正文が入力文の写しに近くなる傾向が見られたため、**推論過程を言語化させるCoT(Chain of Thought)**を導入し、モデルに「なぜその修正に至るのか」を明示させる仕組みを取り入れました。

しかし、CoT導入後も精度の頭打ちが見られ、理由の妥当性やスタイル適合の面で社内基準に満たないケースが残りました。これにより、モデルの変更だけでは限界があることが明らかになり、データ品質(参照情報の粒度、前後文脈の包摂、理由記述の具体性)とプロンプト設計(観点の体系化、評価ルーブリック化、反証要求の組み込み)を並行して磨き込む必要性が浮き彫りとなりました。

また、テキスト補完型モデルでは理由の無視や出力の一貫性欠如が顕著に見られたため、最終的にはチャット補完型モデルを主軸とする方針を再確認し、改善を重ねました。

導入後の成果(After)

校閲業務の工数を削減し、文章の品質向上を実現

AIによる校閲支援ツールの導入により、校閲業務が効率化されました

自社のノウハウや知見を活かし、競合優勢を確保する校閲基準をAIに反映することで業務がスムーズになりました。

これにより、校閲業務の工数を削減し、文章の品質向上を実現。また、判断基準が標準化されたことで、人的な誤りのリスクを低減し、公開基準を満たす文章を安定的に確認できる環境を整備しました。

今後の展望

校閲プロセスをさらに細分化し、各段階に最適な方法を取り入れたPoC開発を進めていきます。

具体的には、AIの強みを活かして、校閲の各フロー(誤字脱字チェック、文法チェック、スタイルガイド適合性確認など)を独立して検証するフェーズを設け、最適化を図る予定です。

各フローにおいて技術的に可能かどうかを精査した上で、業務効率や精度向上にどの程度寄与するかを確認し、データ収集・モデル改良・プロンプト設計を通じて、AIを活用した校閲システムの精度をさらに高め、実用化に向けた取り組みを加速させます。

将来的には、校閲業務のすべてを統合的にカバーできるAIツールを構築し、業務全体の効率化を目指します。

担当者コメント

WEEL: 田村

担当者の方と何度もお話しする機会を設けていただき、その中で課題を共有しながら実現可能性を検討し、最終的には現実的なシステムに落とし込むことができました。この過程で得た成果は非常に大きかったと感じています。
次の開発では、具体的な方向性を定めながらスムーズに実装を行い、良い成果を目指したいです。

クライアント様

AIの可能性を探る中でWEELのメディアに触れ、打ち合わせでは具体的な検証プロセスと技術的な見通しが共有されました。
初期はやりたいことが多く要件が散らばっていましたが、対話を重ねて現実解に収束できた点に価値を感じています。自社のノウハウを基準化し、品質とスピードを両立する道筋が見えました。