「ワンオペ解雇」の原作者に聞く!生成AI時代の情シスのサバイバル技術

「ワンオペ解雇」の原作者に聞く!生成AI時代の情シスのサバイバル技術

WEELメディア事業部です。

企業のIT面を支える情シススタッフのみなさんなら、『え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?』をご存知ですよね!バナー広告に出てくる、優秀なコスプレエンジニアの漫画です!

この度はその原点、つまり小説版『ワンオペ解雇』の著者である、下城米雪(かしろめ・ゆき)さん(@naro_shogakusei)へのインタビューが実現!その内容を、記事2本立てでお届けしていきます。

後半にあたる当記事では、ITエンジニアとしても活躍中の下城米さんに生成AI時代の情報システム部門のあり方をお聞きしていきます。

前半の記事をご覧になっていない方はこちらからご確認ください。

目次

生成AI時代の情報システム部門のあり方

小学校ではITを学ばれている下城米雪さん。そんな下城米雪さんに、生成AI時代の情報システム部門のあり方を予想していただたきました。

生成AIは「そろばんに対する電卓」

WEEL

下城米さんはITエンジニアとしてキャリアを積んでいらっしゃると思うんです。それに『ワンオペ解雇』の主人公(佐藤愛)って、もともとシステムエンジニアでしたよね。

© Yuki Kashirome / 主婦と生活社
下城米雪さん

はい。

WEEL

この先、生成AIの台頭でITエンジニアとくに情報システム部門はどのようになるとお考えになってますか?

下城米雪さん

未来のことを考えるにはまず、過去を考えるといいと思います。生成AIの台頭について、一番近そうな事柄は「計算機の変遷」でしょうか。

下城米雪さん

私が生まれる前ですけども、そろばんから電卓、コンピューターへと移り変わる時代があったじゃないですか。そのときに一気に切り替わったかっていうと、そんなことは全くないんですよね。

下城米雪さん

例えば過渡期には、
● そろばんと電卓がセットになった計算機
● Excelの計算結果を電卓で検算する上司
といった笑い話が出てくるんですけども、今まさにこれと同じことが起きてるなと思いますよ。

WEEL

なるほど!

下城米雪さん

計算機の話をAIに当てはめると、8年前の時点で「画像認識AIの判断基準」について事細かに説明を求める風潮があったんです。それで最近だと「まだ生成AIは信頼性に欠けている」といった、議論があるじゃないですか。

下城米雪さん

その気持ちもわかるんですけど、まさにExcelの計算結果をそろばんで検算するような話だなと。だから、あと50年もすればそんな議論はなくなると思うんですよ。

WEEL

そうですよね!同感です。

下城米雪さん

電卓が「1+1=2」と返すように、AIが一番売れそうな小説のプロットを指し示す。で、それを人が信じる。というのが当たり前になってくるはずですよ。

WEEL

なるほど、わかりやすいです!生成AIの登場は「そろばんから電卓への変遷」みたいなものなんですね。

下城米雪さん

そうです!だからみなさんの目の前には今、生成AIという電卓があるんですよ。「そろばんの代わりに電卓が使えるようになって、今どうなっているか」ということを考えてみると、情シスの未来が見えてくるのかなと思います。

WEEL

すごく腑に落ちる話ですね!

生成AIで、人間は労働から解放される

WEEL

今のお話だと、下城米さんは生成AIに希望をお持ちだと思うんです。それについて、「生成AIに人間の仕事が奪われる」という不安はないのでしょうか?

下城米雪さん

そこは、OpenAIを束ねるサム・アルトマン氏のビジョンを考えてみるといいですよ。

下城米雪さん

彼の研究の目標は「AIで仕事を消し去る」ことです。これは人々を不幸にしたいのではなく、「人間を労働から解放したい」という話ですね。

WEEL

確かに、そうでしたね!

下城米雪さん

そうなるとAIが、人間の労働を全て肩代わりして、自動で価値を生み出してくれますよね。

下城米雪さん

そしてAIが生み出した価値を全人類で分配すれば、生きているだけでお金が手に入る時代になる。それこそが、彼の目指す世界です。

下城米雪さん

だから恐れることはないんですよ。もしもサムが夢を叶えてくれたら、我々は一生アニメを見て、好きな小説を読むだけで生きていける。

WEEL

たしかに。それこそ社内システムをワンオペするような、過酷な労働がなくなりそうですよね。

社用PCは生成AIとGPUを搭載する時代へ

WEEL

情シスのお仕事の中には、まだ生成AIに任せられないものもあると思うんです。その点について、下城米さんはどう思われていますか?

下城米雪さん

これはですね、まだ生成AIが大きすぎるからだと思うんですよね。

下城米雪さん

私の場合も学校で生成AIを使ってみたいなと思う瞬間がたくさんあるんですけど、そこまで気軽には使えないですよね。

WEEL

うーん、そうかもしれないですね。

下城米雪さん

例えば、機密情報をインターネットにアップロードすることはできないので、多くの場合はローカル環境にAIを構築する必要があります。当然、それなりの計算資源が必要です。

下城米雪さん

だけど大多数の情シススタッフはGPUを持っていないと思うんです。とくに社員用のノートパソコンを使っている場合は、GPUなしが基本ですよね。

下城米雪さん

だから現時点での情シスでは、生成AIが扱いきれないのかなと思いますよ。

WEEL

なるほど!

下城米雪さん

ただ将来的に、GPUが社員用ノートパソコンの標準装備になった場合は話が変わってきそうですね。

WEEL

つまり計算リソースの民主化が、ブレイクスルーのポイントになってくるということですよね。

下城米雪さん

おっしゃるとおりです!今はChatGPTにせよGeminiにせよ、誰かが汎用性重視で作ったものを流用させていただくしかありません。

下城米雪さん

各自の目的に合わせたチューニングができるのって、一部の会社ぐらいですよね。そこが情シスの生成AI導入における、ネックなのかなと思います。

WEEL

業務に合わせてファインチューニングされた小型LLMが各自のパソコンに載っている、という未来を予想されているんですね。

下城米雪さんの今後の目標

下城米雪さんの今後の目標についても、お聞きしていきます。まずは「なろうRaWi」に追加されるかもしれないツールのお話から、詳しくみていきましょう!

次は「読者HP推定ツール」を開発したい

WEEL

今後、「なろうRaWi」に機能を追加するご予定とかってありますか?

下城米雪さん

今のところは、あまり考えていないです。だた企画倒れしているものだと、「読者HP推定ツール」がありますね。

WEEL

読者HP?

下城米雪さん

これはWeb記事における離脱率と同じ意味の用語ですね。

下城米雪さん

例えば小説投稿サイトで連載を開始すると、1話から2話、3話と進むたびに読者が離脱しちゃうわけです。そのタイミングを指して「読者HPがゼロになっている」という言い方をしますね。

WEEL

ああ!なるほど。

下城米雪さん

それで、各話の内容をAIに見せて読者HPの増減を予測してもらうという企画があったんですよ。でも今のところ、その企画は倒れていますね。

WEEL

そのツール、めちゃめちゃ欲しいです!

作家活動も楽しみながら続けたい

WEEL

下城米さんの著作『え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?』は、だいぶ売れていますよね。

© Yuki Kashirome / 主婦と生活社
下城米雪さん

はい、ありがたいことに。

WEEL

だからもう、印税だけで生きていけるんじゃないかな、なんて僕は思っちゃいました。ちょっと下世話ですね(笑)

WEEL

それで、下城米さんに質問があります。今後も、作家活動を継続されるご予定はありますか?

下城米雪さん

もちろんです!

下城米雪さん

願わくば、(某)国民的少年漫画雑誌の作品よりも売れたいですね(笑)

WEEL

なるほど!そこは果たしたい目標ですね。

WEEL

そこから発展して、下城米さんにもう一つお聞きしたいことがあります。人生をかけて叶えたい理想についてぜひ、お教えください!

下城米雪さん

まあやっぱり、幸せに生きたいですよね。幸せの形は人それぞれですけど、私はシンプルに「楽しいことをして、みんなの楽しいがつながって生きていられるような世界」になったらいいなと思います。

WEEL

今もそれを実践なさっている途中、ということですか?

下城米雪さん

はい!私はすごくのんびり生活してますよ。

下城米雪さん

世界を見渡すとハードな状況ですけど、私の周りは私基準で、すごく落ち着いていますね。

WEEL

本業の学校と副業の創作活動を両立されていて、なんかすごく忙しそうに見えてしまうんですが、そんなことはないんですね。

下城米雪さん

まあそれが私の当たり前なので。よく言うじゃないですか「職業漫画家が休憩時間に別の漫画を書く」みたいな。それと同じ感じなんです。

WEEL

好きなことがあったら、そうですよね。

下城米雪さん

365日稼働でも、全然苦になりませんよ!

WEEL

表現を少し変えると「みんなが好きなことだけをして生きていけるような世界」を実現したい、ということですよね。

下城米雪さん

そうです!もうぜひ、サム・アルトマン氏には頑張ってもらいたい。

WEEL

同感です!サム・アルトマン氏も、ChatGPTとかWorldcoinを作って世界を変えようとしていますからね。みんな、似たような願いをもっているのかもしれないです。

AGIで「異世界転生」したい

WEEL

そういえば、サムアルトマンは汎用型人工知能(AGI)を目指していますよね。そんなAGIが実現した暁に、下城米さんは何を試してみたいですか?

下城米雪さん

異世界転生したいです!

WEEL

AGIが作った仮想世界にダイブして遊ぶ、という夢ですよね。

下城米雪さん

そうです!私は本気で信じてますからね。AGIなら絶対に叶えてくれます!

WEEL

どういう世界に転生したいとか、そういった要望もあるんですか?

下城米雪さん

そこはランダムに作って欲しいです!転生先が分かっちゃったら面白くないので。

下城米雪さんが通う「学校」のお話

ここからは下城米雪さんが通う会社、もとい「学校」について詳しくお聞きしていきます。小学生(概念)の日常はいかに……

下城米さんの通う「学校」は生成AIウェルカム

WEEL

まずは、下城米さんの通う「学校」について。授業や宿題に生成AIを使うのってアリなんですか?

下城米雪さん

私のクラスの場合、プログラミングなどの局所的な部分でしか生成AIは使わないですね。

下城米雪さん

ただマネージャー……じゃなくて先生は、すごく積極的ですよ!ホームルームの度に、AIの単語が出てくるぐらい積極的なんです。

WEEL

AIウェルカムな雰囲気なんですね!いい学校だなぁ……

下城米雪さん

いやー、いい学校ですね!

プログラミングの宿題に生成AIを活用

WEEL

プログラミングの業務……じゃなくて宿題に、生成AIを使われていらっしゃるのですよね。

下城米雪さん

はい。

WEEL

生成AIでプログラミングをするときって、下城米さんはどんな手順で行なっていらっしゃるのですか?

下城米雪さん

私の場合は必ず、コーディングの最初に生成AIを使います。

下城米雪さん

もともとは人力で、メモに箇条書きしたフローチャートをプログラミング言語に翻訳していました。

下城米雪さん

だけど一度、このフローチャートを生成AIに入力してしまうと、60点ぐらいのソースコードが返ってくるんです。生成AIでかなり、プログラミングが加速しましたよ。

WEEL

そうですよね!弊社のIT部門でも、最初の案出しの部分はGitHub CopilotやGPT-4にほぼ任せています。

下城米雪さん

すごいですよね。

WEEL

仕事を奪われるというよりも、単純に「便利で仕事が捗るツール」になってますよね。

下城米雪さん

はい、素晴らしいです!Googleでエラーの原因を探す手間がかなり省けました。

WEEL

そうですよね!Googleで調べるのは、ChatGPTで解決できないエラーだけになりましたよね。

生成AI以外にも自由な校風

WEEL

そういえば下城米雪さんの通う学校の雰囲気について、お答えいただいてもよろしいでしょうか?

下城米雪さん

自由な校風ですよ。私の通う学校は毎月、生徒のアイデアを競わせるアイデアソンを開いているんです。

下城米雪さん

「生成AIで実現できるビジネス」についてアイデアを募っていますね。優勝賞金1,000万円です!

WEEL

え、毎月1,000万円出してるんですか?

下城米雪さん

そうです、毎月校長先生のポケットから出てきます。

WEEL

そのコンテストって参加できるのは、ゴリゴリのITエンジニアだけなんですか?それこそLLMをゼロから作るような……

下城米雪さん

いえ、アイデア勝負ですね。使用するAIとターゲット層を選定して、アイデアをまとめる感じです。私も頑張ってるんですけど、まだ参加賞のPayPay2,000円とかしかもらえてないです。

WEEL

あ、あとで申し込もうかな……

『ワンオペ解雇』でエンジニアへの第一歩を踏み出せ!

WEEL

これでインタビューは終わりなんですけど、最後にちょっと下城米さんに相談がありまして。

下城米雪さん

えっ!なになに……

WEEL

(インタビュー記事の終わり方ってどうしましょう……?)

下城米雪さん

(良いこと言って、終わりましょうか……?)

WEEL

(ぜひお願いします……!)


下城米雪さん

この宣伝が入る部分、つまり記事の一番最後まで読んでくださった読者のあなたは、必ずエンジョイしてると思うんですよね。

下城米雪さん

そんなあなたをエンジョイさせた、この下城米さんっていう人は小説を書いてるらしいんですよ。どんな小説か気になるんじゃないですか?

下城米雪さん

全然関係ない話をするんですけども、エンジニアの資質ってなんだと思いますか?

下城米雪さん

何か気になることを見つけた時に、徹底的にそれを探求することなんですよね。インタビューの中でも言いましたけど、不満を放置しないということです。

下城米雪さん

そう、何か課題があったら今の新しい技術を使う。それこそAIでも、生成AIでも、何でも使って解決する。それがエンジニアなんですよ。

WEEL

わかるーっ!!

下城米雪さん

そう。逆に「気になった時に放置しちゃう」とか「これは放置しよう」とか、こんなのはエンジニアじゃないです。

下城米雪さん

生成AIも同じですよ。新しい技術ですよね。これに対して「信用できない」とか「嘘つくから参考程度だよね」とか言ってる人では、エクセルの計算結果を電卓で検算する上司にしかなれないですよ。

下城米雪さん

そんなこれからの時代で通用するエンジニアになるための第一歩が、今ここにあります!『ワンオペ解雇』よろしくお願いします!

WEEL

WEELからも、よろしくお願いします!

© Yuki Kashirome / 主婦と生活社
© io © Yuki Kashirome / 主婦と生活社

前半の記事をご覧になっていない方はこちらからご確認ください。

最後に

いかがだったでしょうか?

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投稿者

  • 2sc

    テクニカルライター 大学時代はアリの生態を研究。 ラボで唯一、Pythonを使ってデータ分析を効率化していた。 現在はライターとして、オウンドメディアや学術記事の執筆に当たっている。

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