転移学習とは?ファインチューニングとの違いややり方をわかりやすく解説

転移学習 とは ファインチューニング 違い やり方 わかりやすく 解説
押さえておきたいポイント
  • 転移学習とは、大量のデータで学習済みのモデルを別のタスクに転用する手法
  • 少ないデータでも精度を出しやすく、開発期間と計算コストを圧縮可能
  • 分野が離れすぎると精度が落ちる「負の転移」やライセンス制限に注意

転移学習とは、大量のデータで学習済みのモデルを別の目的に転用する手法です。ゼロから作らずに済むため、データが数百枚でも実用的な精度を狙えます。画像分類で使われるMobileNet V2も、140万枚の画像で学習済みです。

とはいえ「ファインチューニングと何が違うの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。本記事では転移学習の意味・メリット・種類・やり方・注意点を解説します。最後まで読めば、自社のAI開発に使えるか判断できます。

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監修者田村 洋樹

株式会社WEEL代表取締役 / 累計25社以上のAIアドバイザリーを担当 / 企業向けセミナー・大学講義でのべ10,000人超に登壇 / 日本HP・インテルなど、大手企業主催カンファレンスへの登壇実績多数。AI導入支援・生成AIを活用した業務改革のプロとして、アドバイザリー・PM・講演者など多面的な立場から企業を支援中。

目次

転移学習とは

転移学習とは、大量のデータで学習済みのモデルを、別のタスクに転用する手法です。英語では「transfer learning」と表記します。

ゼロからモデルを作る場合、数万〜数十万件のデータと膨大な計算資源が必要です。一方の転移学習は、すでに一般的な特徴をつかんでいるモデルを土台にするので、手元のデータが少なくても目的に合ったモデルを用意できます。土台になるモデルは学習済みモデル(事前学習モデル)と呼ばれ、画像認識ならVGGやResNet、自然言語処理ならBERTなどが代表格です。

なお、心理学や教育学にも「学習の転移」という言葉があり、過去に学んだ内容が別の学習に役立つ現象を指します。英語を習得した人がフランス語を覚えやすい、といった話です。着想は似ていますが、AI分野の転移学習が指すのは人ではなくモデルの再利用であり、両者は別物として理解しておきましょう。

土台となるモデルの種類や選び方について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

転移学習のメリット

転移学習のメリットは、少ないデータでも精度を出せることと、開発期間・コストを削減できることの2つです。学習済みモデルという資産を借りてくる発想のため、AI開発のハードルが大きく下がります。

少ないデータでも高い精度を出せる

転移学習の学習曲線グラフ
参考:https://www.tensorflow.org/tutorials/images/transfer_learning?hl=ja

転移学習の最大の利点は、手元のデータが少なくても実用的な精度に届く点です。学習済みモデルは輪郭・色・質感といった汎用的な特徴をすでに獲得しており、そこから学び直す手間がかかりません。

TensorFlowの公式資料によると、画像分類でよく使われるMobileNet V2は、140万枚・1000クラスのImageNetで事前学習されたモデルです。

ゼロから同じ水準の特徴を身につけさせるには膨大な画像が要りますが、転移学習なら1クラスあたり数十〜数百枚のデータからでも着手できます

製造ラインの不良品検知や自社商品の判別など、社内にしか存在しないデータを扱う場面ほど、この差は効いてきます。データ収集の工数を抑えられる点も見逃せません。

開発期間・コストを削減できる

学習済みモデルを再利用すると、学習にかかる時間と計算コストを大きく圧縮できます。ゼロから学習する際に必要な、大規模なGPU環境での長時間の計算を省けるためです。

特徴抽出(学習済みモデルを活用し、判定部分だけを新しいタスク向けに変更する方法)のように土台部分の重み(学習済みモデルの各層に保存されている数値)を固定する方法なら、更新するのは付け足した層だけになります。数日単位だった学習が、条件によっては数十分で終わるケースもあるほどです。

検証サイクルを速く回せるので、「小さく試して効果が見えたら本格開発へ」という進め方とも相性が良い手法といえます。PoC(試験的な導入検証)段階の予算を抑えたい企業にとって、現実的な選択肢になります。

転移学習の種類

転移学習は、学習済みモデルのどこまでを再学習させるかによって、特徴抽出とファインチューニングの2種類に主に分かれます。PyTorchの公式チュートリアルでも、この2つが代表的なシナリオとして紹介されています。まずは両者の仕組みと使い分けを整理しましょう。

特徴抽出(Feature Extraction)

特徴抽出とは、学習済みモデルの大部分をそのまま使い、最後の判定部分だけを新しいタスク向けに作り替える方法です。土台部分の重みは「凍結」して更新せず、付け足した層だけを学習させます。

特徴のつかみ方には手を加えないため、学習が速く、少ないデータでも結果が安定しやすいのが強みです。手元のデータが数百枚規模で、元のモデルと分野が近い場合に向いています。

一方、元のモデルが苦手な特徴は補えません。医療画像や赤外線画像のように、一般的な写真と見え方が大きく異なるデータでは、精度が伸び悩むこともあります。

ファインチューニング(Fine Tuning)

ファインチューニング前後の精度の変化
参考:https://www.tensorflow.org/tutorials/images/transfer_learning?hl=ja

ファインチューニングとは、学習済みモデルのパラメータそのものを新しいデータに合わせて再調整する方法です。土台部分の一部または全体を解凍(更新できる状態へ復帰)し、付け足した層とまとめて学習させます。

モデルの内部まで手を入れるので、特徴抽出より高い精度を狙えます。ただし更新する範囲が広いぶん学習時間は延び、必要なデータ量も増えると考えてください。

実務では、学習率を小さめに設定して元の知識を壊さないようにするのが定石です。まず特徴抽出で当たりをつけ、精度が足りなければファインチューニングへ進む流れが扱いやすいです。

ファインチューニングの手順や費用感を詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

転移学習とファインチューニングの違い

スクロールできます
項目特徴抽出ファインチューニング
土台部分の重み凍結して更新しない一部または全体を更新する
学習させる範囲付け足した出力層のみ出力層と既存の層
必要なデータ量少なめ多め
学習時間・コスト短い長い
向いているケース元のモデルと分野が近い元のモデルとやや分野が離れている・高精度が必要
特徴抽出とファインチューニングの比較(2026年7月時点)

両者は対立する概念ではなく、ファインチューニングは転移学習に含まれる手法の一つです。学習済みモデルの知識を別のタスクに活かす取り組み全体が転移学習であり、その中に特徴抽出とファインチューニングという2つのやり方がある、と整理すると混乱しません。

ただし文脈によっては、特徴抽出だけを指して「転移学習」と呼び、ファインチューニングと並べて比較する場合もあります。資料を読むときは、どちらの意味で使われているかを確かめると理解がぶれません。

転移学習のやり方

転移学習は、学習済みモデルの選定・出力層の差し替え・再学習という3ステップで進みます。ここでは画像分類を例に、実務の流れとPythonでの実装イメージを順に見ていきましょう。

STEP
学習済みモデル(事前学習モデル)を選ぶ
スクロールできます
モデル名主な用途特徴
VGG16画像分類構造がシンプルで扱いやすい。パラメータ数は多め
ResNet画像分類層を深くしても学習が進みやすく、汎用性が高い
MobileNet画像分類軽量でスマートフォンやエッジ端末に載せやすい
YOLO物体検出画像内の位置と種類を同時に検出できる
BERT自然言語処理文章分類や感情分析の土台として使われる
転移学習でよく使われる学習済みモデル(2026年7月時点)

最初に、解きたい課題に近い分野で学習済みのモデルを選びます。画像認識ならVGGやResNet、MobileNetなどが定番で、軽さを取るか精度を取るかで選択肢が変わります。

選ぶ際は、元のモデルが学習したデータと自社データの見え方が近いかを確認しましょう。ここがずれていると、後述する負の転移につながります。

STEP
出力層を新しいタスクに合わせて変更する
出力層を差し替えた転移学習モデルの構成図
参考:https://www.tensorflow.org/tutorials/images/transfer_learning?hl=ja

次に、モデルの最後にある判定部分(出力層)を、解きたい課題に合わせて作り替えます。ImageNetで学習したモデルは1000クラスを見分ける形になっており、そのままでは自社の2〜3クラスの分類には使えないからです。

具体的には、元の出力層を取り外し、必要なクラス数を持つ新しい層を付け足します。TensorFlowなら読み込み時にinclude_top=Falseを指定し、PyTorchなら最終層を新しい全結合層に差し替えるのが一般的な流れです。

土台部分を凍結するかどうかも、この段階で決めます。凍結すれば特徴抽出、解凍すればファインチューニングになると考えてください。

STEP
手元のデータで再学習する

出力層を差し替えたら、集めたデータでモデルを再学習させます。データは学習用・検証用・テスト用に分け、検証用データで精度を確かめながら進めるのが基本です。

学習率は小さめから試し、精度が頭打ちになったら土台部分を段階的に解凍していくと失敗しにくくなります。画像の回転や反転でデータを水増しするデータ拡張も、少量データでは効果的な打ち手です。

最後にテスト用データで評価し、狙った精度に届かなければモデルの選定やデータ収集まで戻ります。1回の学習で決まる作業ではないと考えておくと、進め方に迷いません。

Pythonでの実装イメージ

実装には、PythonのTensorFlow(Keras)やPyTorchを使うのが一般的です。どちらも学習済みモデルを数行で読み込めるため、専用のコードを一から書く必要はありません。

【コード例】# TensorFlow(Keras)で学習済みモデルを読み込み、土台部分を凍結する例

base_model = tf.keras.applications.MobileNetV2(
    input_shape=(160, 160, 3), include_top=False, weights='imagenet')
base_model.trainable = False

読み込むモデル名を変えれば、VGG16やResNet50にも同じ手順で差し替えられます。ただしモデルごとに推奨される前処理が異なるため、公式ドキュメントの preprocess_input も併せて確認してください。PyTorchでもtorchvision.modelsから同様に呼び出せるので、まずは公式チュートリアルをそのまま書き写して動かしてみるのが近道です。

転移学習のデメリット・注意点

便利な手法である一方、転移学習には分野のずれ・過学習・ライセンスという3つの落とし穴があります。導入前に押さえておきましょう。

ドメイン(分野)が違うと精度が下がる「負の転移」

元のモデルの分野と新しいタスクの分野が離れすぎていると、かえって精度が下がる場合があります。この現象は負の転移(negative transfer)と呼ばれ、学術研究でも形式的な定義づけと分析が試みられている課題です。

日常写真で学習したモデルを、レントゲン画像や工業製品の微細な傷の判定にそのまま持ち込むケースが典型例です。見え方の前提が違うため、学習済みの知識がノイズとして働いてしまいます。

対策は、なるべく分野が近い学習済みモデルを選ぶことに尽きます。判断に迷うときは、小規模なデータで試し、ゼロから学習したモデルと精度を比べてみてください。

過学習が起きやすい

手元のデータが少ないと、そのデータの偏りまで覚えてしまう過学習(オーバーフィッティング)が起こりやすくなります。学習用データでは高い精度が出るのに、本番のデータでは精度が出ない状態です。

背景や写り方が似た写真ばかり集めた場合、モデルが被写体ではなく背景で判定してしまう、といった失敗が起こります。防ぐには、更新する層を絞る・学習率を下げる・データ拡張で多様性を持たせるといった工夫が有効です。検証用データの精度が悪化し始めた時点で学習を止める早期終了も、よく使われる手立てになります。

ライセンス・利用規約の確認が必要

スクロールできます
機能コミュニティ向け AGPL-3.0Ultralytics エンタープライズ
ソースコードへのアクセス
オープンソース化せずに商用利用×
非公開環境へのデプロイ×
エンタープライズモデルの利用×
商用化を目的としたモデルの調整・学習×
組織内での非公開利用×
個別の契約条件・専用サポート×
サポートレベルコミュニティ高度なSLA
年間ライセンス料金不要必要
変更・派生物の所有オープンソース化が必須ライセンス保有者
Ultralytics AGPL-3.0とエンタープライズライセンスの比較(2026年7月時点)

学習済みモデルには、商用利用に制限がかかっているものがあります。無償で公開されている=自由に使える、とは限らない点に注意しましょう。

物体検出で広く使われるUltralytics社のYOLOは、学習済みモデルもAGPL-3.0ライセンスで提供されています。自社製品や社内システムに組み込む場合、プロジェクト全体を公開するか、別途エンタープライズライセンスを取得する必要があります※4。

導入前に、モデルカードや公式のライセンスページを必ず確認してください。転移学習で作った独自モデルにも元のライセンスが及ぶケースがあるため、法務担当と一緒に見ておくと安心です。

よくある質問

転移学習と知識蒸留は何が違いますか?

知識蒸留は、大きなモデルの知識を小さなモデルに移してモデルを軽量化する手法です。別のタスクへ知識を移す転移学習とは、目的が異なります。

転移学習と強化学習は何が違いますか?

強化学習は、試行錯誤と報酬を通じてエージェント(AI)が行動を学ぶ枠組みです。学習済みの知識を再利用する転移学習とは別の概念であり、強化学習の中で転移学習を使う研究も進んでいます。

転移学習にはどのくらいのデータ量が必要ですか?

明確な基準はありませんが、画像分類なら1クラスあたり数十〜数百枚が目安です。元のモデルと分野が離れるほど、多くのデータが必要になると考えてください。

転移学習を体系的に学べる書籍はありますか?

はい、講談社の機械学習プロフェッショナルシリーズ『転移学習』(松井孝太・熊谷亘 著、2024年)など、転移学習を扱った専門書が刊行されています。G検定の出題範囲にも含まれるため、資格試験の教材で概要をつかむのも一つの方法です。

転移学習を活用して少ないデータからAI開発を始めよう

転移学習は、学習済みモデルの知識を借りて開発の負担を減らす手法です。特徴抽出とファインチューニングを使い分ければ、社内に数百枚のデータしかない状態からでも実用的なモデルを目指せます

一方で、負の転移や過学習、ライセンスの確認といった判断は、経験がないと迷いやすい部分でもあります。自社のデータで本当に精度が出るのか、どのモデルを土台にすべきかは、要件を整理したうえで見極めることが欠かせません。

社内データを活かしたAI活用を検討中の方は、まず課題の整理から専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

最後に

少ないデータからのAI開発を検討している方は、無料相談で自社データに合った学習済みモデルの選び方や進め方についてお気軽にご相談ください。

「生成AIで新しいプロダクトを作りたい」「もっと本格的に生成AIを業務に組み込みたい」とお考えの方は、ぜひ株式会社WEELにご相談ください。

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