生成AIによる教育業界の業務DX化!効率化と授業品質UPが狙える活用法や現場の導入事例を紹介

- 教育DXでは教職員の負担軽減と学びの質向上を両立するデジタル活用が重要
- 生成AIは教務の効率化から個別学習・アクティブラーニングの支援まで幅広く活用可能
- 導入時は個人情報保護・セキュリティ・教員のICT活用力を踏まえたルール整備が必要
「教員の数は減っているのに、多様化する子どもたちへのきめ細やかな対応が求められる……」「既存の指導要領に上乗せして、デジタル社会を踏まえたカリキュラムを組まなくてはいけない……」など、目まぐるしい令和の教育現場にお悩みの先生方は多いはずです。
そんな教育現場の課題ですが、近年注目されている生成AIが解決してくれるかもしれません。生成AIでできることは「通知表・お便りの原案作成」から「授業の刷新・品質向上」まで多種多様です。
この記事では教育DXの推進役として期待される生成AIについて、活用シーン・導入事例・現場の課題まで解説します。ぜひ最後までご覧ください。
\生成AIを活用して業務プロセスを自動化/
教育業界が抱える問題

教育業界が抱える問題の代表例は以下のとおりです。※4、5
- 教員不足や長時間労働
- 生徒ごとのレベルに合わせた教育指導ができない
- 授業以外の雑務が多い
- 情報化・デジタル社会を前提とした教育カリキュラムが十分でない
- ICTインフラの整備・更新にかかる費用負担
- 児童生徒の個人情報保護・情報セキュリティ対策
- 教員のICT活用指導力の底上げ
特に、教師の長時間労働は大きな課題です。教師の月45時間を超える時間外在校等時間の割合は小学校で約25%・中学校で約43%・高校で約28%と、早急な改善が求められます。
また、教員不足も課題です。文部科学省の「教師不足」に関する実態調査によると、令和7年5月1日時点では全体で3,827人の教員が不足しています。こうした現状が悪循環となり、教師を目指す人はさらに減っていくことが懸念されているのです。
さらに、教育DXを進める際は、ICTインフラの整備・更新にかかる費用負担も考える必要があります。GIGAスクール構想第2期では、第1期に整備した1人1台端末が更新時期を迎えており、文部科学省は5年程度をかけた計画的な更新を進めています。※9
児童生徒の学習データや成績などを扱うため、個人情報保護・情報セキュリティ対策も欠かせません。文部科学省は教育現場でのクラウド活用が進んだことを踏まえ、2025年3月「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改訂しています。
教員のICT活用指導力を高める取り組みも必要です。文部科学省の令和6年度調査では、「授業にICTを活用して指導する能力」が82.2%、「児童生徒のICT活用を指導する能力」が83.1%でした。数値は前年度より上昇していますが、継続的な研修や支援体制の整備が重要です。※10
ChatGPTと教育業界の関係について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

教育特化のAIツールは下記でも解説


教育業界における生成AIのユースケース
生成AIは、教育業界における以下6つの場面で活躍が期待できます。
- 個別指導
- 学校運営での活用
- 高度な語学学習
- 外国籍の生徒への対応
- アクティブラーニングの補助
- デジタル教育への活用
これらの場面で生成AIを使いこなせば、教師1人あたりの業務負担が減るはずです。以下で詳細を解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
個別指導
教育業界の課題として、生徒のレベルに合わせた教育指導ができないというものがありますが、生成AIを使用すればこの課題を解決できる可能性があります。データ分析を得意としている生成AIなら、生徒一人ひとりの学習データを分析し、その理解度や進捗に基づいてカスタマイズされたアドバイスを提供できるからです。
例えば、特定の科目でつまずいている生徒には、その生徒に合った補足説明や練習問題を自動的に提示し、学習を支援できます。また、得意分野ではさらなる挑戦を促すアドバイスを行い、学びの意欲を高めることが可能です。
学校運営での活用
生成AIを教育現場で使用すれば、以下のような学校運営に関する業務(教務)も自動化・効率化できます。
- 面談などの日程合わせ
- 教材の生成
- 採点業務
- 各種お便りの原案作成
- 校内研修の補助etc.
これらの業務を効率化できると、教師の負担軽減にもつながるので、長時間労働などの課題を解決可能です。もっと広い視点でみると、教師の働き方が改善されれば、教師不足の現状も徐々に解決に向かうことが期待できます。
また、教師はよりよい授業の考案や生徒とのコミュニケーションにより多くの時間を割けるのも大きなメリットです。結果として、教育の質の向上につながります。
高度な語学学習
生成AIを使用すると、語学学習において以下のメリットがあります。
- 多言語を勉強できる
- 英会話ができる
- さまざまな言い回しを勉強できる etc.
生成AIのなかには、音声入力や音声出力に対応したものもあるので、1人で英会話の練習もできます。生成AIが適切な文法や発音の指導を行ってくれるので、即座に修正ポイントを把握できるのが魅力です。生成AIは多言語に対応しているので、英語以外の言語も同じ環境で学べます。同じ内容を丁寧な表現とくだけた表現で言い換えてもらえば、場面に応じた使い分けも身につくでしょう。
外国籍の生徒への対応
教師や周りの生徒が外国籍の生徒の母語を理解できていないがために、コミュニケーションに課題を抱えているケースが多々あります。本来、全ての生徒にとって教育の機会が平等であるべきですが、外国籍の生徒に対してはその平等性を確保できていないのが現状です。
しかし、生成AIは多言語対応が可能で、生徒の母語での学習支援や説明を提供できます。例えば、授業内容や教材をリアルタイムで翻訳したり、外国語での指導をサポートしたりすることで、言語の壁を越えた教育を実現可能です。
また、生成AIは生徒の文化的背景を考慮した個別の学習プランを作成し、適切なサポートを提供できます。外国籍の生徒もスムーズに学習に取り組めるので、彼らの教育機会の平等性が確保できるというわけです。
アクティブラーニングの補助
生成AIは児童生徒らが主体的にアイデアを出す「アクティブラーニング」にも応用が可能です。
アイデアを生成AIに入力してもらうことで、考えを整理したり視点を補ったりといった補助が受けられます。生徒・教員に次ぐ第三の視点が加わることで、より多角的かつ深い議論が可能となるでしょう。
デジタル教育への活用
生成AIは下記に挙げるような、デジタル教育にも活用ができます。
- 情報モラル・取捨選択能力の育成
- プログラミング思考のような問題解決能力の育成
- プログラミングの補助 etc.
そもそも生成AI自体が、「誤った情報を出力することもある」や「筋道立てて入力しないと望み通りの出力が得られない」などの特徴をもち、デジタル教育の教材にうってつけです。
日々の授業に生成AIを取り入れることで、児童生徒らのデジタルリテラシーを自然に伸ばせるかもしれません。
教育業界に生成AIを取り入れた導入事例
教育業界に生成AIを取り入れた導入事例として、6つの機関をご紹介します。それぞれの事例を確認すれば、自分たちの環境で生成AIを活かせるアイデアが見つかるかもしれません。詳細を解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
事例①立命館大学
立命館大学は2023年の春学期、生命科学部の英語授業に「ChatGPT」と機械翻訳を組み合わせた学習ツール「Transable」を試験導入しました。※1
学習ツールの仕組みとしては、機械翻訳が直訳した文章をChatGPTが自然な文章に訳して、さらに翻訳した文章を解説してくれるとのこと。実際の授業では、直訳が難しい日本語を自力英訳・機械翻訳・Transableによる英訳を実施し、どの方法で英訳されたかを予想するといった使われ方をしています。
授業を受けた生徒によると、ChatGPTによる英訳は日本語の細かいニュアンスまでしっかり伝わるとコメントするなど、その手応えを感じているようです。
事例② 愛媛大学教育学部附属中学校
愛媛大学教育学部附属中学校では、授業中の生徒の質問に対して、一部ChatGPTで返信を行う取り組みを実施しています。※2
理科の実験にて水溶液の性質を学んだあと、最後の振り返りとして生徒が入力した感想や質問に対して、ChatGPTが瞬時に返答しているそうです。
以下、やり取りの一部を例として共有します。(実際の入力内容とは異なる可能性があります)
生徒:「マグネシウムがお酢に溶けたのはどういった変化が起きていたのか」
ChatGPT:「マグネシウムがお酢に溶けると、マグネシウムが酸化され、水素ガスが発生します。この反応は『酸化還元反応』と呼ばれます」
生徒:「実験がうまくいかず、今後改善したい」
ChatGPT:「実験の改善を考えているという姿勢、素晴らしいです。このようなチャレンジ精神を持っていることは理科学習で大切なことです。引き続き頑張ってください!」
質問に対して回答している様子は想像できると思いますが、2番目の生徒を鼓舞するような文章には驚きを隠せません。まるで本当に先生が励ましてくれているかのような文章なので、生徒のやる気を維持することにもつながりそうです。
教師の負担削減にもつながるので、ぜひ真似してみてください。
事例③ つくば市立みどりの学園義務教育学校
つくば市立みどりの学園義務教育学校は、令和5年度の文部科学省「リーディングDXスクール」指定校で、同年度には「生成AIパイロット校」にも指定されました。教師向けに生成AIの利用について研修を繰り返し、今では授業でも生成AIを活用しています。※3
実際に授業で使用したシーンとして、道徳の授業が挙げられるとのこと。「むねにとげがささる」という意味について生徒に説明する際に、まずは生成AIに生徒が質問して、生徒が生成AIに触れる機会も確保しています。
ほかにも、国語の授業の題材としてよく使われる「走れメロス」のメロスの心情を理解する目的でも生成AIが使われています。ここで紹介した事例から、つくば市立みどりの学園義務教育学校では教師の仕事を効率化するだけでなく、生徒が生成AIに触れるという目的に特化していることがわかりますね!
事例④ 神奈川県相模原市立中野中学校
神奈川県相模原市立中野中学校は、生成AIを生徒の視点を補うツールとしてフル活用しています。※6
単に発表内容の添削に使うだけでなく、資料を要約して自分で調べた内容と比較してもらう、バスケットボールの練習風景を入力して課題を議論してもらうといった使い方をしています。
また、国語の授業では、和歌から受ける印象を言語化・プロンプト化して画像生成AIに入力するという試みも。クラスメイトどうしで生成された画像を比較して、しっくりくる表現を探ってもらうという取り組みをしています。
事例⑤ 熊本県熊本市立桜山中学校
熊本県熊本市立桜山中学校では、生徒の調べ物に生成AIを活用しています。※7
こちらでは、生徒らが修学旅行の旅程・理科の実験計画・地域社会への意見文などを作成する際の補助に生成AIを使用。生徒たちが調べ物をするために必要な知識(修学旅行なら旅行先の土地勘)を持っていない状態でも必要な情報が得られる、という効果がみられました。
教員側も通知表や学級通信の叩き台作成や記号選択問題の採点、発表会の意見要約・分類などに生成AIを活用しているとのことです。
事例⑥ 苅田町立新津中学校
苅田町立新津中学校では、主に教員の業務に生成AIを活用しています。※8
研修や授業の内容をブラッシュアップする際の相手役として使っているほか、各人が業務で作成したプロンプトを校内ポータルサイトで共有するといった試みもなされています。生徒らも修学旅行の旅程決めや英作文・スピーチの添削、発表内容の壁打ちに生成AIを活用しているとのことです。
教育現場に生成AIを導入・DX化するステップ
ここでは教育現場に生成AIを導入するまでの流れを4つのステップに分けてご紹介します。
導入目的・方針の決定
生成AIを導入するにあたってはまず、導入目的・方針を決めることが大切。何にでも使えてしまう生成AIだからこそ、目的・方針に沿って使い道を限定したほうが迷わずに活用できます。
教育現場の場合は、「生成AIを導入して教務・教育を改善したい」というふんわりとした目的ではなく、以下のような具体的な導入目的・活用方針を定めておくとよいでしょう。
- 教員自身の業務に活用し、時短を目指す
- 生徒らのアクティブラーニングに提供し、深い理解を促す
- 生徒らの調べ物に提供し、アクセスできる情報を増やす
- 生徒らの成果物の添削に提供し、多角的な視点を与える
導入先の業務の決定
続いては、生成AIを導入する業務・範囲を具体的に決めていきます。教育現場の場合は、下表の大分類・小分類・具体例の順番で生成AIの使い所を絞り込んで決めるのが便利です。
| 大分類 | 小分類 | 具体例 |
|---|---|---|
| 教員自身の業務への活用 | 採点・通知表作成 | ・記号選択問題の自動採点 ・通知表の評価基準の叩き台作成 |
| お便りの作成 | ・お便りの文章の叩き台作成 ・外国籍生徒向けの翻訳 | |
| スキルアップ | ・授業練習の壁打ち相手 | |
| 生徒への提供 | 調べ物 | ・生徒らの予備知識の範囲を超えた調べ物 ・具体性・事実性が重要でない調べ物 |
| アクティブラーニング | ・意見の壁打ち ・補完・意見の論拠の提供 ・調べ物 | |
| 添削 | ・英作文・英語スピーチの添削 ・日本語文の添削 ・壁打ち ・図画等へのアドバイス |
モデル・ツールの選定
生成AIの使い所が決まったら今度は、どの生成AIモデルやツールを使うかも決めていきます。
教育現場の場合は基本的に、簡単に導入できてテキスト生成も画像生成・分析もこなせるオールインワンの生成AIチャットがおすすめです。ChatGPTまたはGeminiがこれに該当します。
また、私立校であれば、以下のようなカスタマイズできる生成AIソリューションも選択肢に入るでしょう。
- 単体の画像生成AI
- 独自情報を回答に反映できるチャットボット(RAG)
- 学内ポータルサイトと統合した生成AIチャット
導入・改善
最後は、実際に生成AIを教務や授業に導入していきます。この段階では、生成AIの使用を推奨する場面またはそうでない場面を明確にガイドライン化して教員・生徒らに示すことが大切です。
また、定期的に生成AIの活用状況を追跡し、よりよい提供形態を探っていきます。導入して終わりではなく、より業務効率や教育効果を高められる方法はないか、改善を重ねていきましょう。
生成AI導入の流れについて詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご確認ください。

教育現場での生成AI活用についてのよくある質問
ここでは、教育現場における生成AI活用についてのよくある質問にお答えしていきます。
生成AIを活用して教育DXを目指そう!
生成AIは、教育DXを進めるための有力な選択肢の一つです。教務の効率化だけでなく、個別学習・アクティブラーニング・語学学習など、授業の質を高める用途にも活用できます。
一方、教育現場で成果につなげるには、生成AIの導入自体を目的にせず、解決したい課題と利用範囲を明確にすることが重要です。個人情報保護やセキュリティ、教職員・児童生徒向けのルールを整えたうえで、小さく試しながら改善していきましょう。

最後に
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