Qwen-Image-Layeredとは?画像をレイヤー分解して編集できる最新画像生成モデルを解説

- 1枚の画像を意味的に独立した複数レイヤーへ分解し編集できるモデル
- semantic driftや位置ズレを抑え一貫性の高い画像編集を実現
- ローカル実行が前提かつ高いマシンスペックが必要
2025年12月、Alibabaから新たな画像生成モデルがリリースされました。
今回リリースされた「Qwen-Image-Layered」は一枚の画像を複数のレイヤーに分けて編集をすることが可能。従来の画像生成モデルでは、背景や人物の一部を変えようとすると、全体が歪んだりしてしまう問題がありました。
Qwen-Image-Layeredはそういった問題を解決するためのモデルです。
本記事ではQwen-Image-Layeredの概要から仕組み、活用事例などについて解説をします。本記事を最後までお読みいただければ、Qwen-Image-Layeredの理解が深まります。
ぜひ最後までお読みください!
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Qwen-Image-Layeredの概要
Qwen-Image-Layeredは、1枚のRGB画像を「複数のRGBAレイヤー」に分解するためのエンドツーエンド拡散モデル。
一般的な画像編集では、ラスタ画像の中で要素が1枚に溶け合っているため、編集していない領域まで変化する「一貫性の崩れ」が課題でした。

それに対してQwen-Image-Layeredは、意味的に絡み合っていないRGBAレイヤーへ分解し、狙ったレイヤーだけを独立に操作できる設計を採用。編集時の「semantic drift(意図しない意味変化)」や「geometric misalignment(位置やスケールのズレ)」を根本から抑える狙いがあります。
Qwen-Image-Layeredは「画像を編集しているのに、別の部分まで変わる」問題を避けたい現場で、有力な選択肢になるのではないでしょうか。
レイヤー化によって、recolor(色変更)・replace(置換)・revise(修正)・remove(削除)・resize(サイズ変更)・reposition(再配置)といった基本操作を、高い整合性のまま行えます。

また、固定のレイヤー枚数に縛られない「可変レイヤー分解」をサポートする方針も示されています。※1
Qwen-Image-Layeredの仕組み
ここでは、Qwen-Image-Layeredがどのようにして1枚の画像を編集可能なレイヤー構造へ変換するのかを解説していきます。Qwen-Image-Layeredは単なる後処理ではなく、生成段階から「レイヤー分解」を前提に設計されている点が重要です。
従来の画像生成や編集と何が異なるのか、処理の流れを追いながら確認していきましょう。
レイヤー分解を前提とした生成アーキテクチャ
Qwen-Image-Layeredは、入力されたRGB画像をそのまま編集するのではなく、意味的に独立した複数のRGBAレイヤーとして再構成します。ここでのRGBAとは、色(RGB)に加えて透明度(Alpha)を持つ表現形式。
各レイヤーが「物体」「背景」「装飾要素」などを分離して保持する構造になっています。

この分解はルールベースではなく、拡散モデルによるエンドツーエンド学習で実現。つまり、「どこを1つのレイヤーとして切り出すか」自体をモデルが学習している形です。その結果、人手でマスクを作らなくても編集に耐えうるレイヤー構成が得られる仕組みになっています。
入力から出力までの処理フロー
処理の流れは、大きく分けて三段階です。
まず、入力画像を条件として拡散過程に投入し、潜在空間上でレイヤー構造を同時に生成します。次に、生成された各レイヤーにはRGBA情報が付与され、個別に操作可能な状態となります。最後に、編集指示に応じて特定のレイヤーのみを再生成または変形をします。
この際、他のレイヤーは固定されるため、画像全体の構図や意味が崩れにくい設計になっています。
従来の画像生成モデルで遭遇していた「一部だけを変えたい」という編集ニーズに直結する構造だと言えるでしょう。

一貫性を保つための設計上の工夫
Qwen-Image-Layeredでは、semantic driftやgeometric misalignmentを抑えることが設計目標として掲げられています。
そのため、編集対象外のレイヤーが再サンプリングされないよう、生成プロセスを制御。結果として、色変更や差し替えを行っても、位置関係や意味的整合性が保たれやすくなっています。
また、固定枚数ではなく可変数のレイヤーを扱える点もポイントです。
画像の内容に応じて必要なレイヤー数が変わるため、柔軟性の高い編集が可能になります。
なお、追従性と一貫性がケタ違いであるSeedream 4.5について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

Qwen-Image-Layeredの特徴
ここからは、Qwen-Image-Layeredが従来の画像編集・生成モデルと比べて、どのような特徴を持つのかを解説します。特に「編集しやすさ」と「一貫性維持」という観点で、設計思想が色濃く反映されている点が重要です。
レイヤー単位での高い編集独立性
Qwen-Image-Layeredの最大の特徴は、画像を意味的に独立したRGBAレイヤーとして扱える点。
これにより、特定のオブジェクトだけを変更しても、背景や他要素へ影響が及びにくくなりました。従来のインペインティングで起きがちだった「意図しない全体変化」を避けられる開発設計が特徴です。
例えば色変更や差し替えを行う場合でも、対象レイヤー以外は固定されます。その結果、構図や意味の一貫性を保ったまま編集を進められるでしょう。実務での再編集や微調整が多い場面ほど、この特性が効いてきます。

semantic driftとgeometric misalignmentの抑制
本モデルは、semantic driftとgeometric misalignmentを明確な課題としています。semantic driftは、編集後に画像の意味が変わってしまう現象。一方でgeometric misalignmentは、位置やスケールが微妙にズレる問題です。
Qwen-Image-Layeredでは、編集対象外レイヤーを再生成しない設計を採用し、この制御によって、編集操作が局所的に完結しやすくなっています。結果として、意図した変更だけを反映できる安定性が得られる構成です。
可変レイヤー数に対応する柔軟性
レイヤー枚数が固定されていない点も、Qwen-Image-Layeredの特徴です。
画像内容に応じて必要なレイヤー数を動的に扱えるため、単純な構図から複雑なシーンまで対応可能。「常に同じ分解数」という制約がないことが、汎用性を高めています。
要素の多い画像ほど、レイヤー分解の恩恵は大きくなるため、広告素材やビジュアル制作など、構成要素が多い用途で効果が期待されます。
Qwen-Image-Layeredの安全性・制約
ここでは、Qwen-Image-Layeredを利用する際に把握しておきたい安全性と現時点で確認できる制約について解説します。高い編集自由度を持つ一方で、万能ではない点を理解しておくことが大切です。
データ管理とセキュリティに関する考え方
公開ページや論文では、Qwen-Image-Layeredにおける入力画像や生成データの保存方針、暗号化方式、保持期間などの詳細は明示されていません。※2,3
そのため、クラウド環境での利用時にデータがどのように扱われるかは、明らかではありません。業務データや個人情報を含む画像を扱う場合は、利用形態や実行環境を慎重に選ぶ必要があるでしょう。
研究用途やローカル環境での実行を前提とする場合、外部へのデータ送信を避けられる可能性がありますが、その場合でも運用設計やアクセス管理は利用者側の責任となります。
モデル特性に起因する制約
Qwen-Image-Layeredはレイヤー分解を前提としたモデルであるため、全ての画像が常に「人間の直感通り」に分解されるとは限りません。
特に、要素同士が強く重なり合っている画像では、レイヤーの切り分けが難しくなる場合があります。この点は、拡散モデルによる推定に依存している以上、避けられない制約と考えられます。
また、生成結果の品質は入力画像の解像度や構成にも影響されます。極端に低解像度な画像やノイズの多い入力では、編集耐性が下がる可能性があるでしょう。
Qwen-Image-Layeredの料金
Qwen-Image-Layeredはモデルをダウンロードしてローカル環境での実行が前提なので、Qwen-Image-Layeredの使用料金自体は無料です。
Qwen-Image-Layeredのライセンス
Qwen Code v0.5.0のライセンスは「Qwen-Image-Layered」で公開され、誰でも商用・非商用問わず自由に利用・改変・再配布できるオープンソースライセンスとなっています。
| 利用用途 | 可否 |
|---|---|
| 商用利用 | ⭕️ |
| 改変 | ⭕️ |
| 配布 | ⭕️ |
| 特許使用 | ⭕️ |
| 私的使用 | ⭕️ |
\画像生成AIを商用利用する際はライセンスを確認しましょう/
Qwen-Image-Layeredの実装方法
実装自体はHugging Faceなどからモデルをダウンロードして行うことになりますが、それなりのスペックが必要です。
まずは使ってみたいという方は、デモページが用意されているのでこちらを使うのもありかと思います。

ただ、実際にデモページで使ってみましたが、かなり時間が経過する上にエラーになってしまいます。
[デモ動画]
使用者がたくさんいるのかと思いますので、スペックのあるパソコンを持っている場合にはローカルで実行するのがいいかもしれません。
ちなみにこちらの方はQwen-Image-Layeredをフォークしてgoogle colaboratoryをサポートしてくれたようです。
実際に試してみましたが、無料版のT4ではシステムメモリが足りず強制終了になります。A100が使える方はぜひ上記を参考に試してみてください。

Qwen-Image-Layeredの活用事例
Xを見ていると、いくつかQwen-Image-Layeredを使用しているポストを見つけました。
こちらはMacでメモリは128GBのようです。それだけのメモリを積んでいないとMacで実行することは難しいようです。
なお、下記のポストにあるようにfal.aiで利用もできるようです。
こちらの方は間取りを部品ごとに分けられないかを試されており、非常に面白い試みだなと思います。
こちらの方もQwen-Image-Layeredを試されていますが、非常に綺麗にレイヤーごとに分かれています。
Xの投稿を見ているといくつか活用事例が考えられそうです。
クリエイティブ制作での画像編集支援
まずはクリエイティブ制作です。
Qwen-Image-Layeredは、画像を意味的に独立したレイヤーへ分解できるため、広告バナーやビジュアル素材制作での部分修正に適していると考えられます。
例えば、人物だけを差し替えたり、背景色のみを変更したりといった作業が効率化されるでしょう。
ECやプロダクト画像のバリエーション生成
また、EC分野では、同一商品を複数パターンで見せる画像生成が求められます。Qwen-Image-Layeredを用いれば、商品本体のレイヤーを固定したまま、背景や色味だけを変更できます。そのため、商品情報の一貫性を保ったまま多様なビジュアルを用意可能。
背景差し替えやサイズ調整を個別レイヤーで行える点も有効です。撮り直しや再加工のコスト削減につながる可能性があります。
なお、高速・高品質を実現する軽量画像生成モデルであるZ-Image-Turboについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

まとめ
本記事ではQwen-Image-Layeredの概要から仕組み、活用事例について解説をしました。実行するにはそれなりのスペックが必要のため、誰でも手軽にローカルで実装することは難しいかもしれませんが、falなどでも利用できるので、ぜひ利用してみてください。

最後に
いかがだったでしょうか?
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