AGI(汎用人工知能)とは?ANIやASIとの違いや何ができるのか、ビジネス事例を解説
AGI(汎用人工知能)が実現すれば、間違いなく人類の生産性は飛躍的に向上するでしょう。
AGIは人間と同じように状況に応じた思考・判断ができるので、顧客対応や医療現場でも活用できると言われています。
こんなことが本当に実現すればすごいですよね!
というわけで今回は、AGIの特徴やAGIでできること、AGIによって起こりうるリスクなどについて解説します。
ぜひ最後までご覧いただき、AGIに関する知見を深めてください!
AGI(汎用人工知能)とは?
AGI(汎用人工知能)とは、「人間と同様に状況に応じた思考・判断ができるAI(人工知能)」を指します。
現在主流のAIはANI(特化型人工知能)とも呼ばれ、事前に膨大な量のデータを学習させることで、特定の分野では人間並みの能力を発揮できます。
しかし、事前に学習していない内容や想定外のことが起きた際は、適切に対処できないという問題がありました。
一方AGIの場合、事前に学習させる必要はなく、人間と同様に経験から自ら学習できます。
そのため、仮に想定外のことであっても、人間と同じように状況に応じた適切な思考・判断ができるのです。
例)顧客対応業務の場合・現在のAI:事前に学習した範囲内であれば対処できる。逆に想定外の問い合わせがあった際は、誤情報を出力するなど、適切な対応ができない。・AGI:相手の発言・状況に応じた適切な対処ができる。想定外の問い合わせがあった場合でも、最善策を自ら考えられる。 AGIの開発と実装によってもたらされるのは良いことばかりではありません。AGIの実現によって、以下の社会的課題が出てくると危惧されています。 |
2023年現在、AGIはまだ実現できていません。
AGIの開発には課題が多く残されており、開発まであと数十年かかるという説もあります。
しかし、AGIは人間の代替になりうる存在であり、もし実現すれば人類の生産性は飛躍的に向上するのは間違いありません。
AIの種類・違い
AIはその性能の違いによって、下記の5種類に分けられます。
種類 | 定義 | 具体例 | AGIとの違い |
---|---|---|---|
AGI(汎用型人工知能) | 人間と同様に状況に応じた思考・判断ができるAI | まだ実現できていない | ー |
ANI(特化型人工知能) | 特定の分野において人間並みの能力を発揮するAI | Midjourney、ChatGPTなど | AGIと比べて特定のタスクに特化している。 |
ASI(人工超知能) | 人間の知能を超えたAI | まだ実現できていない | AGIの上位互換 |
強いAI | 人間並みの高度な知能を持つAI | まだ実現できていない | AGI・ASIとほぼ同義 |
弱いAI | 特定の分野に特化したAI | iPhoneのSiriなど | ANIとほぼ同義 |
ここでは、
- AGI(汎用人工知能)・ANI(特化型人工知能)・ASI(人工超知能)の違い
- 強いAI・弱いAIの違い
- ChatGPTはAGI(汎用人工知能)なのか?
について解説します。
AGI(汎用人工知能)・ANI(特化型人工知能)・ASI(人工超知能)の違い
ANI(特化型人工知能)とは、その名のとおり「特定の分野に特化したAI」を指します。
例えば画像生成AI「Midjourney」などは、ANIに分類されますね。
ANIは事前に膨大な量のデータを学習させることにより、そのデータの範囲内であれば人間と同等の能力を発揮できます。
逆にANIはデータ範囲外の分野や、想定外の状況には対処できません。
それに対しAGI(汎用人工知能)とは、先ほども説明したとおり「人間と同様に状況に応じた思考・判断ができるAI」です。
想定外の状況にも適切に対処できるという点で、AGIはANIよりも優れています。
そしてASI(人工超知能)とは、「人間の知能を超えたAI」を指します。
ASIはAGIの進化版であり、あらゆる分野において人間よりも優れた能力を発揮するため、意思決定に人間の判断を必要としません。
そのため、「ASIによって人間の存在が脅かされる」と危惧する専門家も中にはいるのです。
強いAI・弱いAIの違い
強いAIとは、「人間並みの高度な知能を持つAI」を指します。
意味としてはAGIやASIとほぼ同じで、人間と同様に状況に応じた思考・判断が可能です。
2023年時点で強いAIはまだ実現できていませんが、イメージとしてはドラえもんや鉄腕アトムが強いAIにあたります。
一方弱いAIとは、「特定の分野に特化したAI」です。
こちらもANIとほぼ同義で、事前の学習範囲内であれば優れた能力を発揮しますが、想定外の事象にはうまく対処できません。
iPhoneに搭載されているSiriなど、現在主流のAIは弱いAIに分類されます。
ChatGPTはAGI(汎用人工知能)なのか?
ChatGPTはAGIではなく、ANI・弱いAIに分類されます。
ChatGPTは大量の言語データを学習させることで、人間同様のコミュニケーションがとれる対話型のAIです。
たしかにChatGPTは非常に優れた性能を持ちますが、その能力は言語処理の分野に限定されます。
そのため人間のように高度な知能は持っておらず、状況に応じた思考・判断もできないため、AGIとは呼べません。
なお、ChatGPTについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→ChatGPT公開から1年!世界を変えたOpenAIがわずか1年で発表したAIツール一覧
AGI(汎用人工知能)は何ができる?
AGIは単純作業に限らず、柔軟な思考・判断を必要とする現場での活用が期待されています。
例えば、AGIを医療の現場で活用すれば、患者に対してより効果的な処置が行えるでしょう。
現在のAIでも一応診断はできますが、その診察結果はあくまで過去の症例を基にアウトプットしたに過ぎず、最適な診断結果とは限りません。
しかしAGIであれば、患者の表情や声などの情報もふまえて、患者一人ひとりに合った効果的な処置が行えるのです。
医療現場に限らず、今後AGIが人手不足となっている現場などで活躍すれば、過重労働などの問題も一気に解決すると思われます。
AGIの社会的課題
AGIの開発と実装によってもたらされるのは良いことばかりではありません。
AGIの実現によって、以下の社会的課題が出てくると危惧されています。
倫理的な問題
AGIが自己意識を持つようになった場合、それは法的権利を持つべき存在となるのでしょうか?
また、AGIが誤った行動を取った場合、その責任は誰が負うべきなのかといった問題が発生してきます。
さらにAGIが悪用された場合、その結果は壊滅的なものになり得ます。
そのため、AGIの開発と管理には厳格なセキュリティ対策が必要となるとともに、それに合わせた法整備の必要性が出てきます。
経済格差が発生する
AGIの恩恵を受けるのは、技術を開発・管理できる一部の人々や企業だけになる可能性があります。
一方AGIによって職を失う人も生まれてくると予測されています。
これにより、経済格差がさらに拡大する可能性があります。
シンギュラリティ後の世界は予想がつかない
AIは2029年には人間と同等の知能を持つと予測されています。
そして2045年にシンギュラリティ(技術的特異点)を迎え、人間の知性を超えると推測されています。
その後の世界は社会、経済、文化など人間の生活のあらゆる側面に影響を及ぼしてくるでしょう。どのような世界になるかは予想もつきません。
なお、生成AIについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→生成AI時代のリスキリングとは?メリットや成功した国内企業事例10選を紹介
AGIが求められている背景・必要性
技術の発展が高速化し、企業は市場の変化に対応し続けなければならない時代が訪れました。
従来型の「弱いAI」では、市場が変化するたびにAIのプログラムを変更することになります。
しかし、プログラムの再構築には膨大な手間とコストがかかり、常に最新の変更を加え続けるのは大変なことです。
AGIの場合には、「AGI自身が思考し、最善の選択肢を選ぶ」事が可能となるため、技術発展をサポートしてくれます。
プログラムを再構築しなくても、常にAGIが自分で社会の変化に対応し、最新の状態に居続けることが可能となるでしょう。
日本におけるAGIの必要性
日本においては「2025年の崖」と「2040年問題」という2つの社会的課題が、AGIの必要性を高めています。
「2025年の崖」は、経済産業省のDXレポートによって提唱された問題です。
多くの企業ではシステムが老朽化して保守・運用に支障をきたすなどにより、DXの推進を妨げている事例が頻発しています。これは毎年最大12兆円という経済損失をもたらすと指摘されています。
さらに「2040年問題」は、労働力のさらなる減少と、それに伴う経済的影響についての問題です。日本では2040年を境に65歳以上の高齢者人口の割合が約35%となり、同時に生産年齢人口がさらに減少すると予測されています。
これらの解決のためにAGIが求められているのが実情です。
さらに労働環境の改善の観点からも、多岐にわたる分野で解決策を導き出せるAGIの実現が期待されています。
AGIが実現したらどうなる?
AGIが実現すれば、仕事にも様々な変化が訪れると予想されています。ここでは主に考えられる4つの変化について紹介します。
AIにとってかわられる仕事が発生する
事務作業や、エンジニア・小売業などAIにとって代わられる仕事が出てきます。
つまり単刀直入に言うと失業する人が出てくるという事です。人手不足が問題となっている分野においてはそれが解消されることでしょう。
従来の職種で性質が変わる仕事が生まれる
AGIの普及は、働き方そのものを根本的に変革する可能性があります。
単純作業やデータ入力などのタスクはAGIが処理するようになり、人間はクリエイティブな分野の作業や、戦略的な業務など考える業務にシフトしていくことになるでしょう。
AGIが現場に参画することで、人間の仕事の質が変化し、結果的に生産性が高まると期待できます。
重要度が増す仕事が新しく生まれる
AGIの普及で新しい職種が誕生する、もしくは重要度が増す職種が生まれてきます。
それはAIシステムを使いこなすAIスペシャリスト、人間がAIを使いこなせるように適応させるAIトレーナー、AIモデルを維持管理していく為の体制を評価するAI評価担当者が挙げられます。
他にも企業や政府機関がAIを適切かつ倫理的に利用できるようガイドラインやポリシーの策定支援を行うAIコンサルタントなどの職種が急速に拡大し、重要な役割を担うことでしょう。
特にAIが公正で倫理的に動作するように監視・調整するAIエチックスの分野は、AIが当たり前に世の中にある未来には、非常に重要な立場を担うことになるでしょう。
法律が整備される
AGIが普及する段階で、法律面での整備が行われることでしょう。
データプライバシー、知的財産、労働法など、多岐にわたる分野で新たな法律が整備されます。
現在でもAI利用に関する法整備が各国で議論されていますが、AGIが登場するとさらに厳密かつ複雑なルールが不可欠になります。
特にデータの利用と保護に関しては、個人のプライバシーを保つことは難しい問題となるかもしれません。
政府はAGIの登場に伴う変化に対応し、安定的にAGIを活用できる法律・規制の整備を進めることになります。
AGI(汎用人工知能)の研究・開発に取り組む企業
ここでは、AGIの研究・開発に取り組む以下の4社を紹介します。
- OpenAI
- Google Deepmind
- 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
- xAI
OpenAI
OpenAIは、アメリカでAIの研究・開発を行っている企業です。
皆さんもご存じのChatGPTはOpenAI社が開発したサービスですね。
OpenAIは「人工知能によって全人類に利益をもたらす」ことを使命に、AGIの開発を進めてきました。
2023年2月、OpenAIはAGIの実現に向けたロードマップを公表し、AGIの作成と管理に関する一連の原則を提案しています。
果たして全人類に利益をもたらすAGIをOpenAI社は開発できるのか、今後の動向に注目したいですね。
なお、一説にはOpenAIはすでにAGIを開発しているという説もあります。
詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
Google DeepMind
Google DeepMindは、イギリスに拠点を置くAIの研究団体で、2014年にDeepMind社とGoogle社が統合して設立されました。
Google DeepMindといえば2015年、人間のプロ囲碁棋士に初めて勝利した囲碁プログラム「AlphaGo」を開発したことでも有名ですよね。
そんなGoogle DeepMindでも、AGIの研究が現在進められています。
同社CEOのデミス・ハサビス氏いわく、「今後10年以内にはAGIが実現するのでは?」とのこと。
かつてのAlphaGoと同様に、世界を驚かせるAGIが開発されるのか?
今後のGoogle DeepMindの動向に注目しましょう。
全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
AGIの研究・開発を進めているのは海外だけではありません。
日本国内でも、NPO法人の全脳アーキテクチャ・イニシアティブがAGIの開発を進めています。
同社では「全脳アーキテクチャ」と呼ばれる脳の構造を解明し、その技術をAI開発に応用しようとしています。
現在のAIは海外製が多いので、国産AGIの実現にも期待したいですね、
xAI
xAIは、Twitterを買収したことでも有名なイーロン・マスク氏が設立したAI企業です。
xAIがAGI開発において目指すのは、「宇宙の真実を解明する」こと。
宇宙への理解を深めることで人間との共存をはかる、安全なAGIの実現を目指しているそうです。
xAIは2023年に設立されたばかりで、まだ大きな実績はありませんが、AGIの開発に携わるのはOpenAI社やテスラ社に在籍していた大変優秀なメンバーばかり。
果たしてxAI社は宇宙の真実を解明できるのか、今後の動向が楽しみですね。
なお、生成AI開発企業について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→中国のおすすめ最強LLMまとめ!OpenAIのライバル生成AI企業から話題のAIツールまで紹介
AGI(汎用人工知能)の実現は生活そのものを変貌させる
AGIの実現に向けてAI開発が続く中、その現状と今後の展望については以下の通りになります。
- AGI(汎用人工知能)とは、「人間と同様に状況に応じた思考・判断ができるAI(人工知能)」を指す。2023年現在、AGIはまだ実現できていない。
- AIは性能の違いによって、「ANI(特化型人工知能)」「AGI(汎用型人工知能)」「ASI(人工超知能)」「強いAI」「弱いAI」に分けられる。ChatGPTなど、現在主流のAIはANI・弱いAIに分類される。
- AGIの実現により、「倫理的な問題」「シンギュラリティ後の世界は予想できない」といった課題が考えられる。や、「実現可能なのか不明」
- AGIはこれまでの生活の形を大きく変えるものであり、AGIを利用することが前提の働き方・生き方となっていく。
もしAGIが実現すれば、この世界は大きく変貌を遂げていくことでしょう。今後のAGI研究の動向に注目していきましょう!
最後に
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