【生成AI×自動車】生成AI時代の自動車業界のリスク・注意点
多種多様な業界で急速に普及しつつある「AI」。
自動車業界も例外ではなく、さまざまな業務にAIが活用されています。
しかしながら、自動車業界におけるAIの導入には大きなリスクを伴うことも事実です。
この記事では、自動車業界の代表的な3つの業種において、それぞれの業務を人が行う場合とAIが行う場合のリスク・注意点を解説します。
また記事後半では、自動車業界で実際に起きたAIに関連する事件についてもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
自動車業界における業務を人が行うリスク・AIが行うリスク
自動車業界はAIの導入や活用が活発な業界の1つです。
自動車製造工場内の業務はもちろん、研究から設計、開発、販売業務に至るまで、様々な現場でAIが活用されています。
しかし自動車業界の業務には、人とAIどちらが行うにしてもそれぞれ異なるリスクが存在するため、業務ごとに適切な判断が必要です。
自動車業界の代表的な以下の3つ業種における、それぞれの業務別リスクを表にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
- 自動車メーカー
- 自動車部品メーカー
- 自動車ディーラー
自動車会社の種類 | 仕事内容 | 人でやるリスク | AIでやるリスク |
---|---|---|---|
自動車メーカー | 研究開発 | ミスが生まれる可能性がある | 情報漏洩のリスクがある |
企画・促進 | ミスが生まれる可能性がある | 情報漏洩のリスクがある | |
生産技術 | ミスが生まれる可能性がある | AIを扱える人材が必要になる | |
自動車部品メーカー | 研究開発 | ミスが生まれる可能性がある | 情報漏洩のリスクがある |
生産技術・管理 | ミスが生まれる可能性がある | AIを扱える人材が必要になる | |
品質保証 | 顧客満足度が低い可能性がある | 責任の所在が不明になる | |
材料の仕入れ | ミスが生まれる可能性がある | 情報漏洩のリスクがある | |
営業 | 顧客満足度が低い可能性がある | 雇用が減少する可能性がある | |
自動車ディーラー | 営業 | 顧客満足度が低い可能性がある | 雇用が減少する可能性がある |
整備 | ミスが生まれる可能性がある | 責任の所在が不明になる | |
事務 | 人件費が嵩む | 雇用が減少する可能性がある | |
展示車の管理 | 安全性の問題がある | 責任の所在が不明になる |
自動車業界における業務を人が行うリスク・注意点
自動車業界の業務を人が行うリスクとして考えられるのは、生産・管理における人為的なミスや、整備・品質保証における安全性の問題などが挙げられます。
特に人為的ミスが発生しやすい業務にはAIの活用が適切です。
自動車業界の中でも、特に生産・整備工程の段階での人為的ミスは人命にも関わってくるため、人が行うリスクは非常に大きいと言えます。
また近年では、若者の車離れや自動車開発領域の拡大などにより自動車業界は人手不足も問題になっているため、全ての業務を人が行っていては労働力が不足してしまいます。
自動車業界における業務をAIが行うリスク・注意点
自動車業界の業務をAIが行うリスクとしてまず予想されるのが、整備工場や生産工場のわずかな条件の変化に対応できない可能性があることです。
機械学習モデルを適切に管理しなければ、製品の品質劣化や工場設備のトラブル・事故、誤った予測による施策の失敗など、さまざまなリスクにつながります。
工場内でのAI活用は、時に人命にかかわる非常に大きなリスクを伴うため、機械学習モデルの精度を定期的にチェックしメンテナンスできる環境を整えなければいけません。
また自動車業界に限ったことではありませんが、AIを業務に活用する際は情報漏洩のリスクに細心の注意が必要です。
ツールによっては入力したデータをAIの学習に応用することがあるため、個人や企業データ、開発データなど重要な情報が外部に漏洩してしまう可能性があります。
AI利用・自動化による自動車業界の事件5選
ここでは実際に自動車業界で起きた、AIに関連する事件を5つご紹介します。
AIを導入することで多大なメリットを得られる反面、大きなリスクも伴うことを、具体例を参考にしっかり理解しておきましょう。
Uber
2018年3月、米ライドシェア大手Uberが開発する自動運転車両のテストカーが、道路を横断中の歩行者をはね死亡させる事故が発生。
試験走行中のため車両にはテストドライバーが搭乗していましたが、スマホ使用による前方不注視によって事故が発生したと結論付けられました。
事故後の分析では、Uberの自動運転AIはそもそも車道に歩行者がいることを想定していなかったため、最後まで「歩行者」とは認識できず急ブレーキも作動しないなど、様々なシステムの欠陥が明らかになりました。
参考記事:「最後まで人間だと認識できず」UberのAI車、初の死亡事故が起きた理由
テスラモーターズ
電気自動車メーカー最大手・テスラモーターズのEV車に搭載されているADAS(先進運転支援システム)「オートパイロット(AutoPilot)」が関わる事故は、2019年以降736件発生し、実に17人が死亡しています。
事故の要因の1つとして、ドライバーがオートパイロットを「自動運転と誤解している」ことが挙げられます。
テスラの「オートパイロット」とオプション機能の「フル・セルフ・ドライビング(FSD)」は、ドライバーの監視が必要な「自動運転レベル2」相当の「運転支援システム」であり、運転の主体はあくまでドライバーにあります。
しかしこの名称が「完全自動運転」であるかのようで紛らわしく、誤解による運転手側の過失が事故につながったケースも少なくありません。
オートパイロットが関連する全ての事故をテスラの運転支援技術のせいにすることはできませんが、自動車メーカーが続々と開発を進める自動運転に対する「安全性」への信頼に、世間から厳しい目を向けられることとなりました。
参考記事:テスラのAutoPilot関連事故、2019年以降に736件/17人死亡
GM/クルーズ(Cruise)
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の傘下「クルーズ(Cruise)」は、米国カリフォルニア州において初めて無人で乗客を運ぶ許可を取得し、完全自動運転(無人)タクシーの実用化に成功しています。
しかし2022年5月、無人タクシーの公道走行許可が下りた矢先に、10数台の無人タクシーが数時間にわたり道路を占拠するという珍事件が発生。
同様の騒動は同年6月にも発生し、周辺住民を驚かせました。
2023年8月には、緊急走行中の消防車両と交差点で衝突し、無人タクシーの乗客1人が負傷。
クルーズの無人タクシーはこれまでにも、緊急走行車両の移動の妨げになるトラブルを度々起こしていました。
さらには、クルーズの無人タクシーに轢かれた女性が車両の下敷きになるという事件も発生。
カリフォルニア州車両管理局の要請を受け、2023年8月以降、クルーズの無人タクシーは多数の問題発生によりその数を半減させることとなりました。
参考記事:ロボタクシー導入で問題続出 サンフランシスコが運行台数を制限
トヨタ自動車
2020年8月、東京パラリンピック・選手村にて、トヨタ社製の自動運転バスと視覚障害のある柔道選手が接触し、負傷した選手が試合を欠場するという事件が起きました。
この事故の際に使用されていた車両は、あくまでシステムが人の運転を支援する「レベル2」であり、運転の主体は人にあったため、搭乗していたオペレーターに過失があると判断されています。
この事故によって、人による操作とシステムによる操作を使い分ける自動運転の難しさが改めて浮き彫りとなりました。
参考記事:自動運転オペレーターのトヨタ社員を書類送検 パラ選手村の接触事故
トヨタ/小島プレス工業
2022年2月、トヨタ自動車に内外装部品を提供する小島プレス工業がサイバー攻撃を受け、同社のシステムに障害が発生。
この影響により、トヨタ自動車が国内に有するすべての完成車工場(14工場28ライン)が稼働停止に追い込まれ、約1万3000台の生産に遅れが生じました。
この事件より以前の2020年6月にも、ホンダが同様の被害を受けています。
参考記事:ハッカーに狙われたトヨタ車の部品、急所は他に「約200社」か
AI×自動車業界のリスクと注意点を理解してうまく活用しよう
この記事では、自動車業界の以下の3つの業種における、AI活用のリスクと注意点について解説しました。
- 自動車メーカー
- 自動車部品メーカー
- 自動車ディーラー
AIの導入が活発な自動車業界ですが、どの業務も人とAIどちらが行ってもそれぞれにリスクは伴います。
しかしAIをうまく活用することで大きなメリットを得られることは間違いありません。
実際に起きた事例も踏まえて、自動車業界におけるAIのリスク・注意点をしっかり理解した上でうまく業務に活用していきましょう。
これからAIの導入を検討している自動車業界の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
最後に
リスクヘッジをしてAIを活用したい方は、弊社にお問い合わせください。
また、次の記事では、自動車業界のサービス一覧を解説しています。