ゲームAIとは?概要や作り方、活用事例を徹底解説

ゲームAI 概要 作り方 活用事例

ゲームの世界で、AIの活用が驚くべき速さで進化しています。1970年代に単純な動きしかできなかったゲームAIは、今や人間のプロプレイヤーに勝利するまでに成長しました。

この記事では、ゲームAIの基本的な仕組みから最新の活用事例まで、誰にでもわかりやすく解説します。特に、マイクロソフトやソニーなど、世界的な企業8社による革新的な取り組みをご紹介していきます。

この記事を読み終えた後には、あなたが知っているゲームの中に隠されたAIの魅力を、新たな視点で発見できるでしょう。

目次

「ゲームAI」の概要

ゲームAIは、デジタルゲームの世界に新たな息吹を吹き込む技術です。1950年代から少しずつ形を変え、最初は単純なルールだった仕組みが、今では驚くほど賢い意思決定システムに成長しました。

90年代、3Dグラフィックが広がり始めると、AIの役割も大きく変わりました。もはや敵キャラクターの動きを制御するだけでなく、ゲーム世界に命を吹き込む存在になったのです。

ゲームにおけるAIの利用状況
1970年代単純なパターン化された敵キャラクターの動き。アーケードゲームで基本的な動作制御
1980年代2Dゲームでの固定された敵の行動パターン。ステージや仕掛けの複雑化
1990年代・2000年代3Dゲームの登場。自律的な意思決定が可能なキャラクターAIの誕生。チェスや囲碁で人間を破る
2010年代・2020年代ゲーム開発全体へのAI応用。開発効率化、デバッグ自動化。複雑な戦略ゲームでの高度なAI実現

プレイヤーがより深くゲームを楽しめるよう、ゲームAIは絶えず進化しています。ステートマシンやビヘイビアツリーといった技術を駆使し、キャラクターの動きをより自然で予測できない、人間らしいものにしています。

今やゲーム開発の効率を上げ、品質を高める重要な武器となり、ゲーム業界に革命を起こしているのです。

なお、AIを使ったゲーム開発について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

ゲームAIの種類

ゲームの世界は、テクノロジーの進化とともに驚くべき変化を遂げてきました。かつては単純なグラフィックと決まりきったキャラクターの動きだったゲームが、今では息をのむほどリアルで知的な世界に変わりつつあります。

その中心にあるのが、ゲームAIという魔法のような技術。プレイヤーに驚きと感動を届ける、3つの異なるAIの力を紹介します。

キャラクターAI

昔のゲームキャラクターは、まるでロボットのように決まりきった動きしかできませんでした。しかし今、キャラクターAIは全く違います。プレイヤーの行動を瞬時に読み取り、まるで考える生き物のように反応します。

会話一つとっても、状況に応じた言葉を選び、感情を込めて話しかけてきます。まるで目の前に本当の人間がいるかのような、驚くほど自然な対話と行動を実現しているのです。

ナビゲーションAI

迷路のような複雑な地形。昔なら、キャラクターは壁にぶつかったり、同じ場所をぐるぐる回ったりしていたはずです。今のナビゲーションAIは違います。

地形の特徴を瞬時に分析し、最短ルートだけでなく、最も自然な移動経路を見つけ出します。まるで地図を頭の中に描いているかのような、知的で滑らかな動きを実現。プレイヤーは違和感なく、ゲーム世界に没頭できるのです。

メタAI

ゲームの難しさって、実は奥深いんです。簡単すぎても、難しすぎても、プレイヤーは楽しめません。メタAIは、まるでゲームの名参謀のように、プレイヤー1人ひとりに最適な体験を提供します。

プレイスタイルを学習し、その人に合わせて難易度を微妙に調整。まるで、目の前のプレイヤーの実力と気分を読み取っているかのような、繊細な仕掛けを持っているのです。※1

ゲームAIの作り方

ゲームAIの作り方は、先の章で解説した3つのAIを駆使して行われるのが一般的です。

  • キャラクターAI(難易度:低)
  • ナビゲーションAI(難易度:中)
  • メタAI(難易度:高)

これらのAIは上から下に行くにつれて導入の難易度が上がります

キャラクターAIは、プレイヤーの動きを想定してパターンをプログラムするため、導入難易度はあまり高くはありません。ナビゲーションAIも、プレイヤーやキャラクターの動きはある程度制限されているため、自動化を行うのはそこまで難しくないケースが多くあります。

一方で、メタAIは難易度を自動調整する必要があります。これまでのプレイヤーのスコアや行動パターンを瞬時に計測し、アウトプットするため、複雑な計算が求められ、導入難易度は高くなりがちです。複雑な計算を何度も行う必要があるため、ゲームAIを作るのは手間がかかりますが、完成すればエキサイティングなゲームを生み出せるようになります

なお、生成AIの仕組みと学習方法を以下の記事で詳しく解説しています。ゲームAI作りの参考となる箇所もあるため、気になる方はぜひご覧ください。

ゲームAIで用いられやすいアルゴリズム5選

ゲームAIには、機械学習やディープラーニングが使われるケースが多いですが、探索と呼ばれるアルゴリズムも使われるのが一般的です。探索とは、あるデータの集まりの中から必要な情報を探しだすことをいい、メタAIのような対戦型AIで使われることが多くあります。探索の中でもよく利用されるアルゴリズムは、以下のとおりです。

MinMax法

MinMax法は、2人対戦型ゲームでよく使われる探索アルゴリズムです。プレイヤーが最大の利益を得る手を選び、相手は最も不利な手を避けるように行動すると仮定して、全ての可能性を評価します。

簡単にいうと、「とりあえず全部試して最善の一手を選ぶ手法」です。チェスやオセロのようなターン制ゲームで有効ですが、すべての手を探索するため計算量が膨大になるという課題があります。

AlphaBeta法

AlphaBeta法は、MinMax法を改良したアルゴリズムで、不要な分岐の探索をカットして計算量を削減します。具体的には、「枝刈り」を行い、すでに評価が確定している手については探索しないようにすることで、効率的に最善手を見つけます。チェスや将棋などのゲームAIにおいて高速な意思決定が可能なアルゴリズムです。

反復深化探索

反復深化探索は、探索の深さを徐々に増やしながら最適解を求める手法です。まず浅い探索を行い、時間が許す限り深く探索することで、限られた計算資源の中でより良い判断を下せるようになります。特にリアルタイム性が求められるゲームや、計算時間を柔軟に使いたい場面で効果を発揮しやすいアルゴリズムです。

モンテカルロ木探索

モンテカルロ木探索は、不確定要素を含むゲームや大規模な探索空間を持つゲームで有効な手法です。ランダムなシミュレーションを複数回行い、その結果に基づいて有効な手を評価・選択します。

シンプルに試行回数を増やせば精度も上がるので、計算リソースがあるほど強くなれるのがポイントです。囲碁AIのAlphaGoでも採用された手法で、戦略性の高いゲームに適しています

メタヒューリスティクス手法

メタヒューリスティクス手法は、「最適解を探しつつ、いい感じに妥協する」アルゴリズムの総称です。遺伝的アルゴリズムや粒子群最適化のように、試行錯誤しながらどんどん賢くなるタイプのAIに使われます。

例えば、NPCの行動を学習させたり、戦略を進化させたりするのに向いているのが特徴です。がっちり決まったルールじゃなく、状況に合わせて柔軟に動けるAIを作るときに効果的な手法です。

ゲームAIの活用・応用事例8選

ゲーム業界では、AIの活用が急速に広がっています。開発効率の向上から、ユーザー体験の向上まで、その用途は多岐にわたります。

ここでは、実際の企業による具体的な活用事例をご紹介します。

マイクロソフト

参考:https://www.xbox.com/ja-jp/games/store/forza-horizon-5-%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%A0-%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/9mtlkm2djmz2?SilentAuth=1&wa=wsignin1.0

マイクロソフトのレースゲーム「Forza Motorsport」には、2013年から「Drivatar」という独自のシステムが搭載されています。各プレイヤーの運転の特徴を学習して、その人らしい走りを再現する仕組みです。

昨年10月の最新作では、コーナーでの駆け引きや追い抜きの判断力が大幅に向上。人間のドライバーのような自然な振る舞いで、予測のつかないレース展開を生み出しています。※2

株式会社バンダイナムコ研究所

参考:https://www.bandainamco-mirai.com/

バンダイナムコ研究所が手がける次世代のゲームAIが、業界で注目を集めています。大規模言語モデルを使った会話システムでは、キャラクターごとの口調や性格を忠実に再現。音声合成技術「ELMIRAIVE™ VOX」と組み合わせることで、生きているような対話を実現しました。

さらに、プレイ中のゲームの情報や映像をリアルタイムに解析し、ゲームの戦略を自動的に学習したり、プレイの状況解説を行ったりするAIの開発も進めています。このシステムは24時間休みなく対戦や実況配信が可能で、エンターテインメントの新しい形を切り開いています。※3

モリカトロン株式会社

参考:https://morikatron.com/

モリカトロンが開発した「AI会話ジェネレーター」は、TwitterなどのSNSから集めた日常会話を基に、自然な対話を実現するシステムです。開発チームは、GPT-2を日本語用に調整し、まるで人間のような会話を生み出すことに成功しました。

面白いのは、ゲームキャラクターの個性的な話し方を忠実に再現できる点です。例えば、元気な少年キャラクターなら明るく活発な話し方、年配のキャラクターなら落ち着いた話し方というように、キャラクターごとの特徴をしっかり表現します。このような技術はゲームだけでなく、高齢者のケアなど福祉分野での活用も期待されています。※4

オムロン株式会社×株式会社スクウェア・エニックス

参考:https://www.omron.com/jp/ja/technology/forpheus/

オムロンとスクウェア・エニックスは、2019年12月から卓球ロボット「フォルフェウス」を使った新しい取り組みを始めました。オムロンが培ってきた人の感情を読み取る技術と、スクウェア・エニックスが得意とするゲームAIの技術を組み合わせています。

プレイヤーの実力や気持ちに合わせて最適な返球とアドバイスができる、まるでプロコーチのようなシステムを目指して研究を進めています。※5

関西電力株式会社×株式会社ディー・エヌ・エー

関西電力とDeNAが2019年2月に始めた取り組みが、業界から大きな関心を寄せられています。DeNAがゲーム開発で培った「最適解を探る技術」を、火力発電所の運営に活かすという斬新な試みです。

複数の石炭の種類や設備の制約を考慮しながら、最適な運用スケジュールを組み立てます。熟練技術者の経験が必要だった作業を、若手でも扱えるようになりました。このシステムは、従来よりも細かなスケジュール作成が可能で、様々な運用条件での比較検討も短時間で行えます。※6

株式会社ブレインパッド×株式会社セガゲームス

ブレインパッドは、セガのスマートフォン向けゲーム開発に革新的な手法を導入しました。深層強化学習を活用したAIが、ゲームのテストやバランス調整を自動で行います。

注目すべきは、ゲームの設定を変更しても再学習が不要な点です。開発チームは作業を中断することなく、より質の高いゲーム作りに専念できるようになりました。データの専門家たちが、この画期的なシステムの開発を支えています。※7

株式会社アラヤ

アラヤの開発チームは、ゲームの品質管理を効率化する新しい方法を生み出しました。AIが自らゲームをプレイして問題点を見つけ出す「自律エージェント」という仕組みです。

従来の自動テストと違い、予期せぬ事態にも柔軟に対応。実際のプレイヤーの操作データを参考にしながら、ゲームのバランス調整まで手がけられる優れものです。特に、オンラインゲームでは、プレイヤーの腕前に応じたクローンを作成し、テストプレイヤーとして活用することで、より精度の高いバランス調整が可能になりました。※8

株式会社ソニーAI

ソニーAIが開発した「GT Sophy」は、レースゲーム「グランツーリスモ」の世界に新たな歴史を刻みました。世界トップクラスのプレイヤーと互角に戦えるAIドライバーの誕生です。

単なる速さだけでなく、フェアプレー精神も備えた走りが特徴で、2022年2月には世界の強豪たちを相手に勝利。ゲームAIの新しい可能性を示す成果として、大きな反響を呼んでいます。

この成果は科学誌「Nature」の表紙を飾り、AIとゲームの融合における画期的な進歩として世界的に評価されました。※9※10

なお、AIでゲームを作る方法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

ゲームAIが切り開く新時代に注目しよう

ゲームAIは、単なるNPCの制御から、ゲーム開発全体を支える重要な技術へと進化しています。キャラクターAI、ナビゲーションAI、メタAIという3つの基本技術を軸に、各企業が独自の発展を遂げています。

【ゲームAIによって実現できること】

  • プレイヤーの技術に合わせた自然な対戦相手の実現
  • キャラクターの個性を活かした自然な会話システムの構築
  • ゲーム開発における品質管理の効率化
  • プレイヤー体験の向上とゲームバランスの最適化

企業の垣根を越えた技術連携も進み、ゲーム業界に限らず、発電所の運営最適化など、幅広い分野での活用が始まっています。

また、メタAIには以下のアルゴリズムを使われることが多いため、状況に応じて適切な手法を選ぶことでよりよいゲームAI開発が可能となります。

  • MinMax法
  • AlphaBeta法
  • 反復深化探索
  • モンテカルロ木探索
  • メタヒューリスティクス手法

今後も技術革新が続くゲームAIは、エンターテインメントの新たな可能性を切り開いていくでしょう。

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投稿者

  • 晋平大竹

    生成AIの登場に大きな衝撃を受けたWebライター。好きなAIツールは、ChatGPTとAdobeFirefly。AIがこれからの世界を良い方向に導いてくれると信じ、正しい&有益な情報を発信し続けています!

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