生成AI時代のリスキリングとは?メリットや成功した国内企業事例10選を紹介
メディア事業部AIライターのashinaです。
生成AIの急激な普及により、仕事やスキルの価値が変化し、働き方を再定義していくことが求められています。GAFAMに代表される海外のテック企業が積極的にAI活用を進める一方、日本ではまだまだAIの導入が進んでいないというのが実状です。
そんな中、日本でも近年リスキリングという言葉を耳にするようになってきましたが、リスキリングとはいったいどういう取り組みなのか正確に理解できていない方も多いでしょう。
本記事では、企業における生成AIのリスキリングの重要性やメリット、具体的な活用事例を解説しています。この記事を最後まで読めば、リスキリングについて詳しく学べるため、企業における生成AIの活用法がしっかりと理解できます! ぜひ最後までご覧ください!
生成AI時代に欠かせないリスキリングとは
リスキリングとは、「急速に進化する人工知能(生成AI)技術に適応するために、個人や組織が新しいスキルや知識を身につけるプロセス」のことです。2020年の世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)において、このリスキリングが大きなテーマとして取り上げられました。
その中で提唱されたプロジェクトが「Reskilling Revolution Platform」。『リスキリング革命』と呼ばれるものです。
リスキリング革命とは、第4次産業革命(IoT、AI、ビッグデータを用いた技術革新)に伴う技術の変化に対応した新たなスキルを獲得するために、2030年までに10億人により良い教育、スキル、仕事を提供するという計画。生成AIの発達により、さまざまな新しい仕事が生まれると同時に7,500万人の雇用が技術革新により奪われる可能性があります。
2016年の調査で最も重要なスキルに挙げられていたSTEM(科学、技術、工学、数学)などの技術的スキルは、2023年には優先度がかなり下がります。これは生成AIによって労働者はより少ない知識で、より多くのことができるようになるからです。
この大きな変化に対応するために世界経済フォーラムでは、リスキリング革命を打ち出しました。日本でも2022年10月、岸田首相が今後5年間で1兆円をリスキリングの支援に投じる方針を打ち出しています。
参考記事:AI導入で労働者の40%はリスキリングが必要–IBM調査
生成AIってそんなにすごいの? 社会への影響を紹介
Microsoft社が行った調査によると、全体の70%の人が「生成AIで仕事が楽になる」とポジティブに回答されています。しかし、その一方で50%の人が「生成AIに仕事を奪われる」と考え、恐怖を感じていることがわかりました。
現在の仕事の多くは、生成AIの登場によって大きく影響を受け、働き方を見直さざるを得なくなるでしょう。「あらゆるホワイトカラーの仕事における作業が、生成AIに置き換わっていく」とさえ言われています。
例えば次のような分野の仕事は、生成AIに置き換わっていく可能性が高い職種の例です。
- プログラマー
- 予約サービス
- データアナリスト
- コンサルタント業
- カスタマーサービス
- 簡単な組み立て作業
より具体的には、次のような仕事をAIが自動で行うようになります。
- 生成AIによって自動でプログラミングが行われる
- AIがホテルや、飛行機、飲食店などを自動で検索して予約
- AIが数値やデータを読み取り、分析する
- ChatGPTや音声AIがコンサルを行う
- 企業のカスタマーサポートのAIボット化
- 工場でフルオートメーションAIが稼働
このように生成AIの進化により、現在の仕事のスタイルが大きく変わっていく可能性は高いでしょう。。
なお、業務効率を上げる生成AI活用術について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→【生成AI×仕事術】職場で神様扱いされる活用事例11選 | WEEL
生成AIのリスキリングを行うメリット5選
生成AIと共存し、AIを上手に活用していくためにはリスキリングが必須になってきます。リスキリングしておくことは、企業として次のようなメリットにもつながります。
メリット①:幅広く活躍できる人材が育つ
生成AIへのリスキリングを行うことで、社員は幅広いスキルと知識を身につけ、どこでも通用する万能な人材に成長します。
生成AIを使いこなす能力は、社内での異動や昇進においても活用されます。また仮にリストラなどの問題に直面した場合でも、そのスキルセットが転職市場での競争力を高めてくれるでしょう。
社員が多様な職種に柔軟に適応できることで、キャリアプランの選択肢も広がります。
メリット②:生産性が向上する
リスキリングにより、社員は生成AIの効率的な活用方法を学び、そのスキル向上が生産性の向上に直結します。
生成AIを駆使することで、時間を要する作業の自動化や高度な分析が可能となり、全体の作業効率が向上します。従業員が高度な技術を活用できるようになることで、業務の質も向上し、企業全体の生産性が底上げされます。
「生産性が低い人ほど、生成AIの活用による生産性向上が顕著にみられた」という研究結果も示されています。
参考記事:ここが知りたい『生成AI の「底上げ」効果で変わるリスキリング』
メリット③:採用コストが削減できる
従業員のリスキリングによって、企業は特定の高度なスキルを持つ新たな人材を外部から高額で採用する必要が減ります。
既存の従業員が生成AIを使いこなすスキルを身につけることで、内部から必要な人材を育成でき、結果的に採用コストの削減に繋げることも可能。
また、従業員のスキルアップは離職率の低下にも寄与し、長期的な人材確保に貢献します。
メリット④:新規事業に繋がる
生成AIへのリスキリングは、従業員が新しいテクノロジーを活用する能力を獲得することを意味します。
この新たな知識と技術により、従来にはない創造的なアイデアや新規事業の機会が生まれる可能性も増加します。新しい市場やニーズに対応する革新的なサービスや製品の開発が期待でき、企業の成長と拡大を促進していくのです。
メリット⑤:著作権への理解が深まる
生成AIのリスキリングを通じて、従業員はAI技術が生み出す成果物に関わる著作権や知的財産権についての理解を深めることができます。これにより、法的な問題を避け、企業が生み出すAIベースの成果物を安全かつ効果的に活用することが可能になります。
また、著作権への正しい理解は、企業のイノベーションを促進します。それと同時に、法的なリスクを抑えることにも繋がるでしょう。
生成AIのリスキリングに力を入れている国内企業6社を紹介
国内で、生成AIのリスキリングに力を入れている企業をご紹介します。具体的な事例も交えながら、最先端の企業がどのように AIを活用しているのか見ていきましょう。
株式会社日立製作所
日立製作所は、社員のリスキリング支援のために、学習体験プラットフォーム(LXP)「Degreed(ディグリード)」を導入しました。
デジタルスキルや対応力を持つ人材の強化を重点課題に掲げ、日立グループで活用できるプログラムを開発しました。
社員がスキマ時間にパソコンを使って生成AIを学ぶことができるよう、自発的な勉強環境をサポート。学習意欲を高めることにも成功しています。リコメンド機能付きのシステムで、社員自身が興味のある分野や克服したいと思う分野を、動画やテキストを通して学ぶことができます。
参考資料:自分のキャリアを自分でつくる。 学びをもっと身近に、LXPによる新しい学習体験。
ヤフー株式会社
ヤフーでは、全社員を対象に「生成AIを業務で活用できる人材」を育成すべくリスキリングを行っています。リスキリングをサポートする「Z AIアカデミア」を発足。グループでの知識共有や人材交流、AIを活用したビジネスの協業を進めていきます。
また「AIケーススタディコミッティ」も設置。社員に学習機会の提供し、実践力の底上げを図っています。ノンエンジニアからAIプロフェッショナルに育成するリスキリングを積極的に行っていることも大きな特徴の1つです。
参考資料:文系社員もAI人材へ 企業内大学のAI関連講座で得た学びとは? – Corporate Blog – ヤフー株式会社
ソニー株式会社
ソニーでは、同社の社員約4万人を対象に「AIに関するオンライン研修」を提供しています。
社員のレベルに合わせて
- AI活用の考え方
- AIに関する独学法
- 活用できる生成 AIツール
などについてオンラインで学習できる環境を提供。
社員の基本的なスキルとしてAIを活用できるようにすることで、会社全体のサービスや製品品質の向上につなげることを目指しています。
参考資料:ソニー、社員に独自のAI研修 講師も社員 事務職含む4万人対象
富士通株式会社
富士通は「ITカンパニーからDXカンパニーへ」をモットーに、教育投資としてのリスキリングを開始。学習のためのポータルサイト「FLX」を通じて、生成AIやデジタルスキルなど9000種類以上の教材を提供しています。
長期的な人材育成で、社員が自ら必要なスキルを学び、どこに行っても即戦力になれるような状態を目指し、さらにキャリアプランを見える化したり、社内公募を募ることで、社内戦力の強化を図っています。
参考資料:リスキリングとは?富士通の事例に見るリスキリング推進の理由とビジネスパーソンのメリット
サッポロビール株式会社
サッポログループは、全社的にAIリスキリングに投資する必要があると判断し「全社員DX人財化」を掲げて、DX・IT人財育成プログラムを開始しました。生成AIを含むデジタルスキルを、社員が積極的に学んで身につけられる体制を整えています。
「デジタルスキルを身に付けたら何ができるようになるか」を明確に示すことで、学びの風土や仕事への意識をアップデートしていることがポイント。現実的な成果や価値を生み出すために、グループ全体の経営戦略として、リスキリングに取り組んでいます。
参考資料:全社員4000人をDX人財化! サッポログループの「DX・IT人財育成プログラム」
株式会社DIVX
日本企業のAI導入率は約39%で決して高くありません。そんなAIの導入が遅れている日本ですが、DIVXは独自のAIリスキリングアプローチで、社内のAI導入率100%を達成させました。
このノウハウを生かし、生活AI普及協会が推奨する「生成AI人材採用宣言プロジェクト2024」に参加。今後ますます需要が高まる可能性が高い、生成AI人材が正しく評価される雇用環境の整備や提供に力を入れています。
参考資料:AI×雇用のトレンドを牽引!DIVXが実現する「AIリスキリング」で雇用変革 | 株式会社divxのプレスリリース
リスキリングのその先へ 生成AIの導入成功事例も5つ紹介
実際にリスキリングを導入することで、どのようなメリットや効果があるのか?その成功事例も紹介します。
事例①コカ・コーラ
コカ・コーラは、AIを用いた情報検索システムを導入しました。社内の様々な形式のデータファイルから情報を効率的に取り出し、ユーザーが求める情報を瞬時に提供できるような体制を作っています。
AIが生成した約100語の要約を検索結果として表示することで、資料の内容を瞬時に把握し、目的に応じた情報探しをスムーズに行うことが可能になります。その結果、業務が効率化されました。
事例②ブルームバーグ
ブルームバーグは、金融業界向けの大規模言語モデル「BloombergGPT」を開発しました。大量の金融データから学習したこのAIモデルは、リスク評価や市場センチメントの把握、さらには会計や監査の自動化の可能性を持つと言われています。
金融業界全体のAI活用を推進する可能性を秘めています。
事例③アサヒビール株式会社
アサヒビールは、Azure OpenAI Serviceを活用した情報検索AIを試験的に導入しました。主にR&D部門(新製品の開発、技術の改良、科学分野の研究などを行う部門)での利用が開始され、アサヒグループ全体での技術情報の集約と整理を実現しています。
この新システムにより、商品開発力の強化と業務効率化が見込まれます。
事例④パナソニックコネクト株式会社
パナソニックコネクト社では、生成AIを用いたツールの導入を全社員を対象として行いました。
Azure OpenAI Serviceを活用したAIアシスタントサービス「ConnectAI」を取り入れ、社員がいつでもAIに質問を行える環境を整備しました。これにより必要な社内情報にスムーズにアクセスできるようになり、業務の生産性向上につながります。
大企業の中でもいち早くAIリスキリングのシステムを取り入れたことで、大きな注目を集めました。
事例⑤江崎グリコ株式会社
江崎グリコ社もAI活用に注力している企業のひとつです。2023年3月には、バックオフィスの業務効率化を目的として、AIチャットボットの導入を行いました。これにより同社では、
- 生成AIを活用した需要予測によるマーケティング強化
- 商品開発にAIを用いて開発期間を短縮
このような施策が可能になりました。
またグリコ社は、AIベンチャー出身者を役員として採用するなど、幅広い分野でのAI活用を目指しています。
なお、企業での生成AI活用法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→【生成AI×業務効率化】自動化の鬼になれるAIツールを紹介
生成AIのリスキリングで、社内の仕事を効率化しよう
この記事では、企業における生成AIの「リスキリングの重要性」や「リスキリングを行うメリット」を具体的な事例を交えながら解説しました。
リスキリングのメリット
- 幅広く活躍できる人材が育つ
- 生産性が向上する
- 採用コストが削減できる
- 新規事業に繋がる
- 著作権への理解が深まる
生成AIが急速な発展を見せる中、企業においてもリスキリングは必須条件となっています。上手にAIを活用することができれば、仕事の生産性が上がり、業務をスムーズに遂行できるので、企業にも、働く社員側にも大きなメリットがもたらされるでしょう。
時代の変化に置いていかれないよう、早めの生成AIリスキリングの導入をオススメします。
最後に
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