LLMとSLMの違いとは?活用メリットとデメリットを超わかりやすく解説
WEELメディア事業部リサーチャーのいつきです。
みなさんは、言語モデルのなかでもLLMとSLMの2種類があることをご存知でしょうか?
両者はおもに言語モデルとしての規模が異なり、それぞれ適している用途も異なります。
今回の記事では、LLMとSLMの違いを徹底解説し、それぞれのメリット・デメリットも紹介します。
最後まで目を通すと、LLMとSLMそれぞれの特徴を理解できるので、自社業務に適したモデルの導入を検討できるようになるはずです。
ぜひ最後までご覧ください。
LLMとSLMの違いとは
LLMとSLMの違いは、言語モデルとしての規模です。LLMの正式名称はLarge Language Model(大規模言語モデル)で、数千億から数兆のパラメータを持つ大きな言語モデルとなっています。
一方、SLMはSmall Language Model(小規模言語モデル)と呼ばれる小さな言語モデルで、LLMほどの規模はありません。パラメータも数億から数百億です。
それぞれの言語モデルは規模が異なるため、適している用途も異なります。膨大な量の情報を学習しているLLMは、さまざまなタスクをこなせる汎用性の高さが魅力です。
対照的に、SLMは学習している情報量が少ないため、特定のタスクに特化しているケースが多いです。
なお、LLMと生成AIの違いについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
LLMのメリット
多くの学習データを備えるLLMには、以下3つのメリットがあります。
- 高い精度での自然言語処理
- 汎用性が高い
- ゼロショット学習が可能
それぞれのメリットを以下で詳しくみていきましょう。
高い精度での自然言語処理
LLMは、膨大なデータを学習しているため、文章作成や分析などのタスクで高い精度を発揮します。とくに、チャットボットなどのサービスで導入されることが多く、ユーザーの問いかけに対して正確な回答を提供できるのが魅力です。
なお、LLMの回答精度が高いのは、文章の理解力と生成能力の両方に優れているためです。トピックの流れや話題の移り変わりを追う能力も高いため、チャットボットのようにユーザーとの流暢な会話を実現できています。
汎用性が高い
LLMは、質問応答・翻訳・要約・文章生成など、単一のモデルで多様な自然言語処理が可能です。特定の分野に限らず、一般的な会話から専門的な知識に至るまで対応できるため、幅広い用途で活用されています。
また、個別のタスクごとに専用のモデルを用意する必要がなく、1つのモデルで複数の目的を達成できる効率の高さもメリットです。
なお、LLMの汎用性が高いのは、多くのデータを学習していることが関係しています。
ゼロショット学習が可能
LLMは、事前に多くのデータを学習しているため、ゼロショット学習が可能です。
ゼロショット学習とは、AIが一度も見たことがないタスクやデータに対しても、過去に学んだ情報をもとに理解し、答えを出す能力のことです。通常、AIはトレーニングデータを使って学びますが、ゼロショット学習では、特定の例を学ばずとも新しい問題に対処できます。
たとえば、犬の写真だけをたくさん見て学習したAIが、猫の写真を一度も見たことがなくても「これは猫だ」と推測できるようなイメージです。これが可能なのは、AIが「犬」と「猫」の共通点や違いを理解し、類推する力を持っているからです。
LLMのデメリット
上記で多くのメリットを挙げたLLMですが、当然デメリットも存在します。
以下がその一例です。
- ハルシネーションの発生
- 開発コストがかかる
それぞれのデメリットを詳しく紹介するので、導入を検討する際は事前に把握しておきましょう。
ハルシネーションの発生
LLMでテキストを生成すると、事実に基づかない誤った情報を自信を持って生成してしまうハルシネーションと呼ばれる現象を稀に発生させます。
ハルシネーションが発生する理由は、モデルが学習した膨大なデータを基に答えを予測する際に、文脈や関連知識を誤って推測するためです。とくに、質問が曖昧だったり、モデルの学習が不完全だった場合に発生しやすく、誤った情報を信じさせるリスクが伴います。
開発コストがかかる
LLMは規模が大きい分、開発にかかるコストも膨大です。多くの計算リソースを必要とするため、トレーニングに多くの時間がかかることも関係しています。
また、ハードにも高い性能が求められ、エネルギー消費も膨大なので維持費も高額です。そのため、LLMの開発は自然と大企業や研究所などに限られてきます。
なお、生成AI開発の課題を詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
SLMのメリット
今後は小規模言語モデルと呼ばれるSLMのメリットを紹介していきます。
SLMのおもなメリットは以下3つです。
- 開発コストが抑えられる
- 短時間で学習可能
- ハルシネーションが発生しづらい
それぞれメリットを解説していくので、LLMとどっちを導入しようか迷っている方は参考にしてみてください。
開発コストが抑えられる
SLMは規模が小さい分、開発コストを抑えられます。少ない計算リソースで済むため、GPUの性能が低くてもよく、エネルギー消費も少ないのがその理由です。
開発コストが抑えられる分、小規模な事業者でも言語モデルの開発に着手できるメリットもあります。極力コストを抑えながら言語モデルを開発したい方は、ぜひSLMを選びましょう。
短時間で学習可能
SLMは、LLMに比べると短時間で学習できます。パラメータが少ない分、トレーニングに必要な学習データや計算量が少なく済むためです。
なお、LLMは学習に数ヶ月かかるケースも珍しくありませんが、SLMなら数日で学習が完了するケースがほとんどです。開発期間が短い分、言語モデルを早く実践で試せます。
ハルシネーションが発生しづらい
SLMは学習データが少ない分、LLMほどハルシネーションが高頻度で発生しません。特定のタスクにおける使用を想定し、学習するデータの種類を絞っているためです。
ハルシネーションが発生すると、企業としての信用を失いかねないため、これを防げるのは大きなメリットといえます。事実確認の手間も軽減できるので、作業効率も上がるはずです。
SLMのデメリット
LLMと同じく、SLMにもデメリットがあります。
とくに注意したいのが、以下の2点です。
- LLMに比べて汎用性がない
- データ収集の難易度が高い
以下でそれぞれのデメリットを解説するので、導入前によく確認しておきましょう。
LLMに比べて汎用性がない
SLMは学習しているデータ量が少ない分、LLMのような汎用性はありません。特定のタスクに特化した使用を想定しているので、こなすべきタスクが複数ある場合はSLMも複数用意する必要があります。
そのため、自社業務の種類や事業規模に応じて適切な言語モデルを選ぶのが大切です。
データ収集の難易度が高い
SLMを使用する際は分野が限定的であるため、データ収集の難易度が高い傾向にあります。特に、医療や法律関連の分野は情報の機密性が高く、データ収集が困難です。
また、データを集めたとしても、モデルのトレーニングに高度な知識や技術が求められる点も注意しましょう。必要に応じて、専門家の力を借りることも視野に入れる必要があります。
なお、自社データの効率的な集め方について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
LLMとSLMを上手に活用しよう!
LLMとSLMのおもな違いは、パラメータや規模の大きさです。LLMは規模が大きいため汎用性が高く、規模の小さいSLMは特定の分野に特化した性質を持っています。
なお、それぞれのメリット・デメリットについては、以下の表にまとめました。
言語モデルの種類 | LLM | SLM |
---|---|---|
メリット | ・高い精度での自然言語処理 ・汎用性が高い ・ゼロショット学習が可能 | ・開発コストが抑えられる ・短時間で学習可能 ・ハルシネーションが発生しづらい |
デメリット | ・ハルシネーションの発生 ・開発コストがかかる | ・LLMに比べて汎用性がない ・データ収集の難易度が高い |
それぞれの特徴を理解したうえで、自社業務や事業規模に適した言語モデルを選びましょう。
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