宇宙の年齢を超える計算を瞬時に解決!Googleの量子チップ「Willow」をわかりやすく解説
WEELメディアリサーチャーのいつきです。
2024年12月9日、Googleが新たな量子チップとして「Willow」を発表しました。
なんと、多くの量子ビットを使用してスケールアップするにつれて、エラーを指数関数的に削減できる仕組みを整えたのです!
何を言っているのかわからない方も多いと思いますが、「量子コンピューターが登場してから約30年にもわたる課題を解決した」と聞けば、その凄さがなんとなくわかるのではないでしょうか?
- Googleが開発した最新の量子コンピューティングチップ
- 従来のスーパーコンピューターでは10^25年(10の25乗年)かかる計算をわずか5分で完了する能力
- 量子ビット数を増やすことでエラー率を指数関数的に減少させる
今回は、Willowの概要や特徴、その仕組みについて解説していきます。
最後まで目を通すと、最先端の技術をいち早く理解できるので、今後の展開にスムーズに対応できるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
Willowとは
Willowは、量子ビットの数を増やせば増やすほど、エラーを指数関数的に減らすことができる画期的な最新量子コンピューティング・チップです。ベンチマークテストでは、Willowは標準的な計算を5分未満で解きました。これは、主要なスーパーコンピューターが10^25年以上かかる計算です。
Willowとは、Googleが開発した最新の量子コンピューティングチップのことです。量子ビット数を増やすと通常はエラーの発生頻度が増える一方で、Willowでは量子ビット数を増やすほどにエラーを指数関数的に減らす仕組みを実現しています。
これは量子コンピューティングの分野において革命的な出来事で、1995年にPeter Shorが量子エラー訂正を導入して以来、30年解決できなかった問題を解決したと知ればその凄さがわかるのではないでしょうか。
なお、Googleの最先端のAI気象モデル「GenCast」について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
Willowの特徴
概要だけでもWillowの凄さがなんとなく伝わったと思いますが、ここからはWillowの特徴について解説します。
なんと、Willowは以下2つの偉業ともいえる実績を達成しています。
- スーパーコンピューターで10の25乗年もかかる計算を5分で達成
- エラー訂正が閾値以下を達成
以下でそれぞれの特徴について解説していくので、ぜひご覧ください。
スーパーコンピューターで10の25乗年もかかる計算を5分で達成
GoogleのWillow開発チームは、その性能を検証するためにランダム回路サンプリング(RCS)をベンチマークテストとして採用しました。
その結果、現在最速のスーパーコンピューターで10の25乗(1000万年以上)かかる計算をわずか5分未満で完了させたとのことです。
宇宙年齢をはるかに超えるとのことで、それだけでもスケールの大きさが伺えます。
以下は、WillowとGoogleが開発したそのほかの量子コンピューターとの性能差をグラフにしたのものですが、Willowの性能が最高値であることがわかります。
Willowは、量子ビット数を増やしてスケールアップするごとにエラーが減っていくので、ほかの量子コンピューターと比較した際も、スケールアップするごとにパフォーマンスに差が出てきます。
今後も進化し続けていくとのことなので、今後さらにパフォーマンスが向上することもありそうです。
エラー訂正が閾値以下を達成
Willowは、エラー訂正が閾値以下を達成しています。閾値以下というのは、量子コンピューティング分野において「量子ビットの数を増やしながらエラーを減らせる」という意味です。
テストでは、3×3のエンコードされた量子ビットのグリッドから、5×5のグリッド、7×7のグリッドへとスケールアップしてそれぞれのエラー率を計測しています。
その結果、スケールアップするたびにエラー率を半減できたとのことで、これが指数関数的にエラー率を削減したと言われている理由です。
Willowの性能を引き出した仕組み
Willowがここまで高性能であることには、以下2つの理由があります。
- 専用の最新鋭施設で製造
- すべてのコンポーネントが同時に適切に処理される構造を実現
それぞれの理由や仕組みを解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
専用の最新鋭施設で製造
Googleは、Willowを開発するためだけにQuantum AI Labと名付けられた専用の研究施設を建設しています。この研究施設には最新鋭の設備が整っており、繊細な量子コンピューティングチップを組み立てたり、その性能をテストしたりしています。
たとえば、希釈冷凍機と呼ばれる特殊な装置を設置しているのが特徴。これはエネルギー損失なしで電気が流れる極寒の状態を保つための装置で、なんと宇宙空間よりも低い温度を維持しているとのことです。
Quantum AI Labには、これだけ高性能な機器が揃っているので、Willowが高い性能を発揮できている大きな理由といえるでしょう。
すべてのコンポーネントが同時に適切に処理される構造を実現
Willowは、すべてのコンポーネントが同時かつ適切に処理される構造を実現しています。チップのアーキテクチャと製造からゲートの開発と調整まで、あらゆるプロセスに配慮することで実現したとのことです。
ちなみに、コンポーネントには、単一および2量子ビットゲート・量子ビットのリセット・読み出しなどがあります。このうち、どれか1つが遅れるだけでもシステムパフォーマンスが低下してしまうので、かなり繊細な構造であることがわかりますね!
なお、生成AIを企業利用で活用する際のリスク対策について知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
Willowの今後の展開に期待!
ここまでWillowの凄さを解説してきましたが、Willowはまだ発展途上の量子コンピューティングチップです。今後はさらに性能を向上させ、現行の量子コンピューターの手が届かないレベルにまで押し上げると公表しています。
将来的には、実世界のアプリケーションと関連させることも視野に入れているとのことなので、最先端の量子コンピューティング技術が商業的に役立つ日が来るかも知れません。
そうなったときのために、今後もWillowの動向をチェックして、適切な対応をとりましょう!
最後に
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