AI PCとは?Copilot+ PCとの違い・選び方・おすすめ6機種を徹底解説

AI PC とは Copilot+ PC 違い 選び方 おすすめ 6 機種 徹底 解説
押さえておきたいポイント
  • AI PCとは、NPUを搭載しAIの処理をパソコン本体で完結できるパソコンのこと
  • Copilot+ PCはAI PCの上位規格で、NPU 40TOPS以上・メモリ16GB以上・ストレージ256GB以上が条件
  • 2026年モデルはSnapdragon X2/Core Ultra シリーズ3/Ryzen AI 400が全機種Copilot+ PC対応

AI PCとは、AI処理専用のプロセッサ「NPU」を搭載し、生成AIの処理をパソコン本体だけで完結できるパソコンです。Gartnerは2026年に出荷されるPCの半数以上、1億4,300万台がAI PCになると予測しています。※1

とはいえ「普通のパソコンと何が違うの?」「Copilot+ PCとは別物なの?」と迷っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、AI PCとCopilot+ PCの違い、メリット・デメリット、選び方の目安、2026年8月時点のおすすめ6機種を解説します。読み終える頃には、自社に必要な1台をスペックから判断できるようになります。

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監修者田村 洋樹

株式会社WEEL代表取締役 / 累計25社以上のAIアドバイザリーを担当 / 企業向けセミナー・大学講義でのべ10,000人超に登壇 / 日本HP・インテルなど、大手企業主催カンファレンスへの登壇実績多数。AI導入支援・生成AIを活用した業務改革のプロとして、アドバイザリー・PM・講演者など多面的な立場から企業を支援中。

目次

AI PCとは

AI PCとは、AI関連の処理能力を高めたPCのことです。AI処理に特化したプロセッサ「NPU(Neural Processing Unit)」、高性能なRAMやストレージなどを搭載しているのが特徴で、テキストや画像生成などのタスクを高速に処理できるように設計されています。クラウドで処理したデータをインターネットを介して受け取る従来のPCとは異なり、PCの内部でAI処理が完結するAI PCはセキュリティ面でも優れています。

AI PCについて統一された明確な定義はありませんが、インテルとマイクロソフトは以下の3つを満たしているPCをAI PCと定義しています。※1

  • 「Copilot」に対応している
  • 「Copilotキー」を搭載している
  • CPUとGPUに加えてNPUを搭載している

Copilotはマイクロソフトが提供するAIアシスタントであり、この定義はあくまでWindowsがインストールされたPCなど限定的な範囲での話であり、一般的な定義ではありません。

一方、2026年8月時点でAI PCの実質的な基準になっているのが、マイクロソフトの「Copilot+ PC」です。Copilot+ PCを名乗るには、40TOPS以上のNPU・16GB以上のRAM・256GB以上のストレージという3つの要件を満たす必要があります。※3

TOPSとは「1秒間に何兆回の演算ができるか」を示すNPUの性能指標です。数値が大きいほど、生成AIの処理をパソコン本体で高速にこなせます。2026年8月時点でCopilot+ PCの要件を満たす主なプロセッサは、以下のとおりです。※4

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メーカープロセッサNPU性能Copilot+ PC対応
QualcommSnapdragon X2 Elite Extreme/X2 Elite/X2 Plus80〜85TOPS全モデル対応
IntelCore Ultra シリーズ3(Panther Lake)47〜50TOPS全モデル対応
AMDRyzen AI 400シリーズ50〜60TOPS全モデル対応
IntelCore Ultra シリーズ2(Lunar Lakeなど)13〜48TOPS一部モデルのみ対応
IntelCore Ultra シリーズ1(Meteor Lake)約11TOPS非対応
Copilot+ PCの要件を満たす主なプロセッサ(2026年8月時点)

CES 2026で発表された3社の新CPUは、いずれも全モデルがCopilot+ PCに対応しました。一方でCore Ultra シリーズ1のように、NPU搭載をうたっていても要件に届かない世代がある点は注意したいところです。

家電量販店で「AI PC」と表示されていても、NPUが40TOPSに届かなければリコールやコクリエイターといったWindowsのAI機能は使えません。購入前にCopilot+ PCの表記があるかどうかを確認しましょう。

AI PCと通常のPCとの違い

通常のPCはCPUやGPUを搭載し、資料作成や簡単なデータ処理などの汎用的な用途に使うことを主な目的としています。

Stable DiffusionなどAIによる画像や動画生成などをPC上で行う場合、AIタスク専用に設計されたNPUを搭載したAI PCの利用が欠かせません。例えば、NPUとGPUを連携させ、高速な処理と消費電力量の低減を実現しています。

一般的に普及しているPCのスペックでAIタスクを完結させるのは無理があり、一つのタスクを完了するのに膨大なリソースが必要です。

AI PCとCopilot+ PCの違い

AI PCとCopilot+ PCの違いは、数値基準があるかどうかです。AI PCはNPUを搭載したパソコン全般を指す業界の通称で、明確な合格ラインがありません。対してCopilot+ PCは、マイクロソフトが定めた要件を満たしたパソコンだけが名乗れる認定です。

つまり、Copilot+ PCはAI PCの一部と考えるとわかりやすいでしょう。

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項目AI PCCopilot+ PC
定義元業界の通称(統一基準なし)マイクロソフトの認定基準
NPU性能規定なし(10TOPS台の製品もあり)40TOPS以上
メモリ規定なし16GB以上
ストレージ規定なし256GB以上
OS規定なしWindows 11
専用AI機能製品ごとに異なるリコール・コクリエイター・ライブキャプションなどを利用可能
AI PCとCopilot+ PCの違い

表のとおり、AI PCという表記だけでは性能を判断できません。業務で生成AIをローカル処理させたいなら、Copilot+ PCに該当するかを購入前に確認するのが確実です。

おすすめのAI PC6選

ここからは、おすすめのAI PC6選を紹介していきます。いずれも2026年8月時点で購入でき、Copilot+ PCの要件を満たすモデルに絞りました。今回紹介するのは、以下6つのモデルです。

  • mouse B5-A7A01SR-A
  • ASUS Zenbook SORA 14(UX3407NA)
  • マウスコンピューター DAIV Z4-A9A01SR-B
  • Microsoft Surface Laptop(第8世代)13.8インチ
  • HP EliteBook X G2i 14 AI PC
  • Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 14 Aura Edition

それぞれの特徴を以下で解説していきます。

①mouse B5-A7A01SR-A

AI PCのエントリーモデルmouse B5-A7A01SR-Aの製品ページ
参考:https://www.mouse-jp.co.jp/store/r/ra7040200/

「AMD Ryzen AI 7 350」を搭載した、Copilot+ PC対応のスタンダードノートです。NPU性能は約50TOPSで、Copilot+ PCの要件である40TOPSに余裕を持って対応しています。メモリは16GBから32GB、ストレージは500GBから1TBまで選択でき、価格は206,800円(税込)から。まず1台目のAI PCを試したい方や、部署単位で複数台をそろえたい場合に候補になるモデルです。

②ASUS Zenbook SORA 14(UX3407NA)

Snapdragon X2 Elite搭載のAI PC「ASUS Zenbook SORA 14」の製品ページ
参考:https://store.asus.com/jp/

Qualcommの最新プロセッサ「Snapdragon X2 Elite X2E-88-100」を搭載した、Arm版のAI PCです。NPU性能は最大80TOPSと、2026年8月時点で市販モデル最高クラスの数値を誇ります。

重量は約990gと軽く、カタログ値のバッテリー駆動時間は約33時間。価格は16GB/512GB構成で259,800円(税込)からです。持ち歩きながらローカルでAI処理を回したい方に向いています。

なお、Arm版Windowsのため一部の業務アプリが動作しない場合があります。社内システムの対応状況を事前に確認してください。

③マウスコンピューター DAIV Z4-A9A01SR-B

クリエイター向けAI PC「DAIV Z4-A9A01SR-B」の製品ページ
参考:https://www.mouse-jp.co.jp/store/r/ra7040200/

「AMD Ryzen AI 9 365」を搭載した、クリエイター向けのAI PCです。NPUに加えてCPU・GPUの性能もバランスよく確保しており、画像生成や動画編集といった負荷の高い作業に対応します。

メモリ16GB/ストレージ500GB構成で289,800円(税込)から、32GB/1TB構成でも376,800円(税込)です。写真・動画編集から3D制作まで、幅広いクリエイティブ用途で使えます。

④Microsoft Surface Laptop(第8世代)13.8インチ

Copilot+ PCの基準機となるAI PC「Surface Laptop 第8世代」の製品ページ
参考:https://www.microsoft.com/ja-jp/surface/devices/surface-laptop

Copilot+ PCを定義したマイクロソフト自身が手がける、いわば基準機です。2026年6月16日に発売された第8世代では、プロセッサがSnapdragon X2 PlusまたはSnapdragon X2 Eliteへ刷新されました。13.8インチモデルは291,280円(税込)からで、バッテリー駆動時間は動画再生時で最大20時間。Windowsの新しいAI機能がいち早く提供される点も強みです。より大きな画面が必要なら、15インチモデル(327,580円〜)も選べます。

⑤HP EliteBook X G2i 14 AI PC

法人向けAI PC「HP EliteBook X G2i 14 AI PC」の製品ページ
参考:https://jp.ext.hp.com/notebooks/business/elitebook_x_g2i_14/

インテルの最新世代「Core Ultra シリーズ3」を搭載した、法人向けのAI PCです。Core Ultra X7 プロセッサー 358H構成ではNPU性能が最大50TOPSに達します。最軽量構成で約999gと、14インチクラスとしてはかなり軽い部類です。価格は374,110円(税込)から。x86系のため業務アプリの互換性を確保しやすく、既存の社内システムをそのまま使いたい企業に適しています。

⑥Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 14 Aura Edition

Core Ultra シリーズ3を搭載したAI PC「ThinkPad X1 Carbon Gen 14」の製品ページ
参考:https://www.lenovojp.com/business/product/note/thinkpad-2026/

2026年4月7日に発売された、ThinkPadモバイルのフラッグシップです。Core Ultra シリーズ3を搭載し、最軽量構成で約977gを実現しました。価格は654,060円(税込)からと高価ですが、これはメモリをはじめとする部材高騰の影響で、前モデルから約1.74倍に上昇したためです。※7

ThinkPadの堅牢性とキーボードを重視する方向けの選択肢といえます。

NPU性能を最優先するならSnapdragon X2 Elite搭載機、業務アプリの互換性を重視するならCore UltraやRyzen AI搭載機というのが、AI PC選びの基本的な分かれ道になります。

AI PCを選ぶ際のポイント

高性能なプロセッサを搭載し、ローカル環境でのAIタスク処理に対応できるスペックを有したAI PCの種類は次第に増えています。しかし、何を基準に選べばよいかわからないという方もいるでしょう。

日常業務においてAIによるアシスタントサポートを得たい場合には、Copilot+ PCを選べば充分です。画像生成など処理速度が要求される使い方をする場合は、CPUやGPU、NPUのパフォーマンスやSSDなどのバランスが重要なポイントです。

最も重要なのはAI PCでどのような生成AIモデルを使い、何を達成したいかを明確にすることです。そのうえで、用途別の推奨スペックの目安は以下のとおりです。

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用途NPU性能CPUの目安メモリストレージ
文書作成・要約・議事録などの日常業務40TOPS以上Core Ultra 5/Ryzen AI 5/Snapdragon X2 Plus16GB256〜512GB
画像生成・動画編集・データ分析50TOPS以上Core Ultra 7〜X7/Ryzen AI 9/Snapdragon X2 Elite32GB1TB
ローカルLLMの実行・AI開発50TOPS以上+外部GPUCore Ultra X9/Ryzen AI 932GB以上1TB以上
用途別に見るAI PCの推奨スペック目安(2026年8月時点)

AI PC選びの最低ラインは、NPU 40TOPS・メモリ16GB・ストレージ256GBというCopilot+ PCの要件です。迷ったらメモリ32GBを選んでおくと、後から生成AIの用途が広がっても対応しやすくなります。

CPU世代の見分け方もあわせて押さえておきましょう。インテルなら「Core Ultra シリーズ3」、AMDなら型番に「AI」が入るRyzen AI 300/400シリーズ、Qualcommなら「Snapdragon X2」が2026年時点の基準です。中古や型落ちを検討する際は、Core Ultra シリーズ1が混ざっていないか確認してください。

AI PCの価格相場

2026年8月時点のAI PCの価格相場は、15万円前後から30万円台が中心です。Copilot+ PCの要件でメモリ16GB以上が必須になるため、一般的なノートパソコンより1〜2段階高い価格帯からのスタートになります。価格帯ごとの目安は以下のとおりです。

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価格帯位置づけ代表モデル想定用途
15万円前後エントリーHP OmniBook 7 Aero 13-bg(149,800円〜)文書作成・要約・議事録などの日常業務
20万円台スタンダードmouse B5-A7A01SR-A(206,800円〜)社内の標準機・複数台導入
25〜30万円台高性能モバイルASUS Zenbook SORA 14(259,800円〜)、Microsoft Surface Laptop 第8世代(291,280円〜)外出先でのローカルAI処理
35万円以上法人・ハイエンドHP EliteBook X G2i 14 AI PC(374,110円〜)、Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 14(654,060円〜)管理機能重視・クリエイティブ業務
AI PCの価格帯別の相場と代表モデル(2026年8月時点・税込)

AI PCの相場は15万円前後が下限で、Copilot+ PC対応で10万円台前半に収まる製品はほとんどありません。メモリ16GBが必須要件である以上、当面この水準が続くとみておくのが安全です。

いま買うべきか、待つべきか

結論から言えば、生成AIを業務で使う予定があるなら待つメリットは小さいといえます。値下がりを待つ動きが通用しにくい状況だからです。2025年秋から続くメモリ半導体の価格高騰により、PCの価格は下がるどころか上がり続けています。実際、ThinkPadのフラッグシップは前モデルから約1.74倍に値上がりしました。※7

一方で、性能面では2026年モデルが一つの節目です。Snapdragon X2・Core Ultra シリーズ3・Ryzen AI 400のいずれも全機種がCopilot+ PCに対応し、「買ったのに要件を満たしていなかった」という失敗が起きにくくなりました。

購入時期を分散させたい場合は、まず生成AIを日常的に使う部署にスタンダード帯を導入し、効果を確認してから台数を広げる進め方をおすすめします。

AI PCのメリット

生成AIの導入活用を検討する際、適切な利用環境を準備する必要があります。現在所有するPCや汎用的なPCも検討の候補に挙がっているかもしれません。

一般的なPCと比べ、AI PCには以下4つのメリットがあります。

  • 処理能力が高い
  • 消費電力が少ない
  • セキュリティリスクを抑えられる
  • 利用履歴などからパーソナライズされる

それぞれ詳しく解説するので、ぜひ検討の参考にしてください。

処理能力が高い

AI PCには、人間の脳の神経細胞に近い働きをするNPUが搭載されているため、AIに関わるタスクの処理能力が優れています。処理能力が高いと、テキストや画像生成などのタスクをより高速化できます。

従来のPCでは、AIタスクの処理をクラウド上でこなすケースが大半です。その場合、PCとクラウド間のデータ送受信に時間が掛かります

AI PCなら、データ送受信に掛かる時間を消費する必要もなく、スムーズにタスクを処理できるのが大きなメリットです。

消費電力が少ない

AI PCなら、ローカル環境でAI処理をこなしても、消費電力を抑えられます。AI PCに搭載されているNPUが推論の処理を高速化できるためです。

なお、従来のPCではCPUやGPUがAI処理をこなすため、どうしても時間がかかり消費電力も多くなります。CPUやGPUに負荷をかける分、ほかの処理に悪影響を与える可能性も否定できません。

NPUは、通常のPCにおいてGPUが担う処理を実行するプロセッサです。実際にはNPUがGPUと連携してタスクを処理する場面もありますが、2026年時点ではリコールやコクリエイターなど、NPU単体で完結するWindowsのAI機能がすでに実用化されています。※5

セキュリティリスクを抑えられる

AI PCなら、情報漏洩などのセキュリティリスクも抑えられます。AI処理の際にデータがクラウドを介する必要がなく、PC内部で完結するためです。

クラウドで動作するAIを使う際、企業の機密情報を外部に送信しなければなりません。AIの学習に機密情報が利用され第三者への回答に含まれてしまったり、ネットワークの脆弱性により情報漏洩してしまうなどのリスクがあります。

情報漏洩は企業の信頼やブランドを傷つけ、市場での競争力を一瞬で低下させてしまいます。過去にはサムスン電子のエンジニアが機密情報であるソースコードをChatGPTにアップロードし、その情報が流出したとのニュースがありました。※3社外秘のデータを多く取り扱う企業であれば、セキュリティ対策は必須のため、ぜひAI PCを利用しましょう。

利用履歴などからパーソナライズされる

AI PCを使えば、利用履歴などからパーソナライズされて、使うほどに利便性が向上します。例えば、Webの検索履歴や届いたメールなどを整理してくれるので、過去の情報を思い出しやすくなるのがメリットです。

また、Recall(リコール)と呼ばれる機能を搭載したモデルも存在します。PCが画面を自動スクショすることで、ユーザーが曖昧なテキスト検索をしてもヒットするようになるので、検索体験の利便性がかなり向上します。

AI PCのデメリット・注意点

AI PCには明確なメリットがある一方、導入前に把握しておきたい弱点もあります。ここでは、購入後に「思っていたのと違った」となりやすい4つの注意点を解説します。

本体価格が高い

AI PCの最大のハードルは価格です。Copilot+ PCの要件を満たすにはメモリ16GB以上が必須ですが、2025年秋から続くメモリ半導体の価格高騰が、そのままPC本体の価格に転嫁されています。※8

実際、レノボの「ThinkPad X1 Carbon Gen 14 Aura Edition」は、前モデルの37万6,200円から65万4,060円へと約1.74倍に値上がりしました。レノボ・ジャパンは値上げの主因をメモリーをはじめとした部材の高騰と説明しています。※7

台数をまとめて導入する企業ほど影響が大きいため、更新時期の分散や、全台ではなく生成AIを日常的に使う部署から導入する進め方が現実的です。

対応ソフト・周辺機器が限られる

NPUの性能を実際に引き出せるソフトは、まだ限られています。NPUは搭載されているだけでは働かず、ソフト側がNPUを使う設計になっていて初めて処理が高速化されるためです。

特に注意したいのがArm版Windowsを採用したモデルです。Snapdragon搭載機は省電力性とバッテリー持ちに優れる反面、一部の業務アプリや周辺機器のドライバが提供されておらず、動作しないケースがあります。※9

社内の基幹システムや会計ソフト、複合機のドライバがArmに対応しているかは、導入前に必ず確認しましょう。x86系のCore UltraやRyzen AIを選べば、この問題はほぼ回避できます。

既存PCで足りる業務も多い

ChatGPTやMicrosoft 365 Copilotのようなクラウド型の生成AIを使うだけなら、AI PCは必須ではありません。処理はクラウド側で行われるため、手持ちのパソコンでも同じ結果が得られます。

AI PCが効いてくるのは、社外に出せないデータをローカルで処理したい場合や、オフラインでも生成AIを動かしたい場合です。自社の使い方がどちらなのかを整理してから検討すると、過剰投資を避けられます。

画面記録機能はプライバシー管理が必要

Copilot+ PC専用機能のリコールは、PCの画面を定期的に保存して後から検索できるようにする仕組みです。便利な反面、パスワード入力画面や個人情報を含む画面まで記録される可能性があります。

法人で導入する場合は、Microsoft Intuneなどの管理ツールで有効・無効を制御し、記録対象から除外するアプリやサイトをあらかじめ設定しておくと安心です。

AI PCの活用シーン

AI PCでできることは以下の3つです。

  • 画像や文章の生成
  • PC内の情報検索
  • リアルタイムな翻訳

一見、これらの3つは従来のPCでもできそうですが、AI PCはタスク処理がすべてPCの内部で完結する点が特徴です。クラウドを介さないため、処理速度やセキュリティ面の向上が見込めます。

以下でAI PCができることをそれぞれ解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

画像や文章の生成

AI PCなら、クラウドを介さずとも画像や文章の生成ができます。NPUとSLM(ローカル小規模言語モデル)を使用して画像作成・編集ができる「Cocreator」がその一例です。

Cocreatorは、手書きのイラストとテキストプロンプトを組み合わせ、ほぼリアルタイムで新しい画像を生成できます。手間を軽減しながら高品質な画像を生成できるのが魅力です。

PC内の情報検索

AI PCを使えば、PC内の情報検索もできます。Webの検索履歴やメールなどの情報をPCが記憶してくれるので、記憶が曖昧なときでもすぐにほしい情報を引き出せるのがポイントです。

Copilot+ PCなどに搭載されているRecallの機能を使えば、OutlookのメールやTeamsのチャットなど、希望の画面をワンタッチで開けます。

リアルタイムな翻訳

AI PCなら、リアルタイムな翻訳もできます。NPUを活用した機能「Live Captions」が代表例で、あらゆる音声を素早く英語字幕に変換できるのが特徴です。

現状、「Live Captions」は40以上の言語に対応しているので、翻訳業務において幅広い活躍が期待できます。録音した音声にも対応できるので、ビデオ会議の振り返りなどにも便利です。

生成AIの法人利用方法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

AI PCの企業活用事例

AI PCは実際にどう使われているのでしょうか。ここでは、企業が公開している導入事例と技術検証の中から、業務での実像がわかる3件を紹介します。

トヨタ・コニック・プロ:約800台のAI PCでCopilotの全社活用を軌道に乗せた

トヨタグループのマーケティング会社トヨタ・コニック・プロは、2025年8月に約800台のAI PCを導入しました。搭載プロセッサはインテル Core Ultraで、横河レンタ・リースを通じて調達しています。※10

きっかけは、2025年4月に全社導入したMicrosoft 365 Copilotが、2022年調達の既存PCでは快適に動かなかったことでした。Teamsでの画面共有ができないケースもあり、AI活用以前の段階でつまずいていたといいます。

同社はAI PCへの刷新を「AI PCが人を育てる」と位置づけ、広告制作の内製化とCopilotの本格活用を同時に進めました。生成AIを全社に浸透させるうえで、端末側の性能が前提条件になることを示す事例です。

BIGLOBE:NPUでローカルLLMがどこまで動くかを検証

BIGLOBEは、NPU搭載ノートPCでローカルLLMを実行できるかを検証し、結果を公開しています。使用したのはHP EliteBook X G1i 14 AI(インテル Core Ultra 7 プロセッサー 258V、メモリ32GB)で、OpenVINOを使ってNPU上でモデルを動かしました。※11

検証では、14BパラメータのPhi-4が前処理に約1分13秒・推論に約2分30秒かかった一方、軽量なQwen3の4Bモデルは前処理45秒で動作しています。

現時点ではGPUのほうが総じて高速で、大規模モデルはNPUだけでは荷が重いという結論です。裏を返せば、数Bクラスの軽量モデルなら実用域に入るという目安になります。導入前の期待値調整に役立つ検証といえるでしょう。

日本ビジネスシステムズ:NPUで社内文書を扱う完全ローカルRAGを構築

日本ビジネスシステムズは2026年5月、Copilot+ PCのNPUを使い、クラウドを一切使わないRAGシステムを構築した検証記事を公開しました。※12

構成はAMD Ryzen AI 9 HX 370搭載機に、NPU対応のLemonade ServerとVisual Studio CodeのAI Toolkit、ベクトルデータベースのChromaを組み合わせたものです。実行モデルにはLlama-3.2-3B-Instruct-Hybridを採用し、NPU・GPU・CPUを自動で使い分けています。

検証では就業規則のPDFを読み込ませ、「特別休暇について教えて?」という質問に対して該当箇所を検索し、回答を生成できたと報告されています。社外に出せない社内規程や契約書をAIに扱わせたい企業にとって、実現可能性を示す事例です。

AI PCに関するよくある質問

AI PCが必要な人の特徴は?

社外に出せないデータを生成AIで扱う方に必要です。機密情報や個人情報を含む文書の要約・翻訳・下書き作成をしたい場合、クラウド型の生成AIではデータを外部に送信することになります。AI PCならパソコン内部で処理が完結するため、この懸念を避けられます。

そのほか、オフライン環境で作業する機会が多い方、画像生成や動画編集をローカルで完結させたい方、ローカルLLMを試したいエンジニアの方にも向いています。逆に、ChatGPTやMicrosoft 365 Copilotをブラウザ経由で使うだけなら、現在のパソコンで十分なケースがほとんどです。

AI PCは普通のパソコンより高いですか?

はい、同じ画面サイズの一般的なノートパソコンと比べると高くなります。Copilot+ PCの要件でメモリ16GB以上が必須になるうえ、2025年秋から続くメモリ価格の高騰が本体価格に影響しているためです。※8 2026年8月時点では、20万円台前半が現実的な下限といえます。

AI PCがあれば生成AIは無料で使えますか?

いいえ、すべてが無料になるわけではありません。リコールやコクリエイターなどWindows標準のAI機能は追加費用なしで使えますが、Microsoft 365 Copilotのような有償サービスは別途契約が必要です。オープンソースのローカルLLMを導入すれば、利用料をかけずにAIを動かすことは可能です。

MacはAI PCに含まれますか?

一般的な意味ではAI PCに含まれます。Apple Silicon搭載のMacはNeural Engineという専用プロセッサでAI処理をローカル実行できるためです。ただし、Copilot+ PCはWindows 11を前提とした認定であるため、Macはその対象外となります。

いま使っているパソコンをAI PCにできますか?

いいえ、後からNPUを追加することはできません。NPUはCPUに統合されているため、本体を買い替える必要があります。外部GPUを増設すればAI処理性能自体は上げられますが、Copilot+ PC専用機能は利用できません。

AI PCを使って安全に生成AIを活用しよう!

AI PCは、NPUを搭載することで生成AIの処理をパソコン本体だけで完結できるパソコンです。社外秘のデータをクラウドに送らずに済むため、セキュリティを保ちながら文章生成や議事録の要約といった業務を高速にこなせます。

一方で、本体価格はメモリ高騰の影響で上昇しており、NPUを活かせるソフトもまだ限られます。全社一括ではなく、生成AIを日常的に使う部署から試すのが現実的でしょう。選ぶ際は、NPU 40TOPS以上・メモリ16GB以上というCopilot+ PCの要件を最低ラインに、用途に合わせてメモリとストレージを上乗せするようにしましょう。

WEELが“失敗しないAI導入”を伴走します。

最後に

AI PCの導入により、クラウド依存を減らし、高速な処理と強固なセキュリティを実現できます。生成AIをビジネスに本格活用するための最適な環境を検討してみましょう。

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