生成AIのセキュリティリスクとは?発生した事例や課題、対策を徹底解説
みなさんは、生成AIに伴うセキュリティリスクを理解していますか?
生成AIにはセキュリティリスクが存在し、機密情報の漏洩やプロンプトインジェクション、ハルシネーション、ディープフェイクなどがあります。これらのリスクを無視してAIを使用すると、企業は信頼を失う危険があり、さらには法的問題に巻き込まれることもあります。
実際に、社内の機密情報がAIを通じて外部に漏洩した事例も起きているのです。
この記事では、生成AIに伴うセキュリティリスクやセキュリティ対策、実際に起きている情報漏洩の事例について詳しく紹介しています。最後まで読んでいただくことで、セキュリティリスクやその対策方法がわかり安全に生成AIを使用できます。
ぜひ、最後までご覧ください。
生成AI活用に伴うセキュリティリスクとは
生成AIの活用には多くの利点がありますが、IPA(情報処理推進機構)が指摘するように、セキュリティリスクという課題もあります。生成AI活用に伴うセキュリティリスクは5つあり、機密情報の漏洩やディープフェイク、なりすましメールなどが存在します。これらに対策して生成AIを活用することが重要です。
機密情報の流出(著作権、商標権などの侵害)
生成AIを使用する際のセキュリティリスクの一つが「機密情報」の流出です。生成AIは、大量のデータを基に学習しているため、その中には機密情報を含んでいる可能性があります。例えば、企業が内部で利用する生成AIに誤って社内の機密データを入力すると、その情報が生成されるコンテンツに反映され外部に漏洩する危険性があるのです。
特に、インターネット上の公開データを学習するオープンソースの生成AIモデルを使用する場合、その中に含まれている機密情報を外部に漏らしてしまいます。このような情報漏洩は、企業に法的なリスクや著作権、商標権の侵害などの問題を引き起こす可能性があります。
プロンプトインジェクション
生成AIの使用に伴うセキュリティリスクの一つが「プロンプトインジェクション」です。このリスクは、特定の入力(プロンプト)を通じて、AIに意図しない行動や回答をさせることです。
具体的には、AIに対して誤解を招くような質問や指示を行うことで、AIが不正確な情報を出力するリスクが生じます。このような行為は、AIの誤用と見なされ、結果としてAIの信頼性損失や企業の評判損傷につながる可能性があります。
このリスクは特に、公開されているAIシステムや広く利用されているAIサービスにおいて顕著です。悪意のあるユーザーは、AIを操作して不適切な内容を生成させることが可能で、これが企業にとって重大なセキュリティ問題となり得ます。
ハルシネーション
生成AIを使用する際のセキュリティリスクの一つに、「ハルシネーション」という現象があります。この問題は、生成AIが事実と異なる情報や存在しないデータを生成してしまうことです。
例えば、AIが実在しないイベントや人物についての情報を生成してしまうことがあります。この現象は、特に高度なAIモデルにおいて顕著です。
ハルシネーションは厳密に言うとセキュリティのリスクとは異なりますが、生成した内容の信憑性に影響を及ぼし、結果的にセキュリティ問題へつながる可能性があります。誤った情報が真実として扱われ、ビジネスや重要な意思決定に影響を与えることが懸念されるため、AIの出力を鵜呑みにせず十分な検証を行うことが重要です。
ディープフェイク
生成AIの使用に伴うセキュリティリスクの一つに「ディープフェイク」があります。ディープフェイクは、AIを使って作られた非常にリアルな偽のビデオや画像のことです。この技術は、人の顔や声を他人のものに置き換えることが可能で、偽の映像や音声を作り出すことができます。
例えば、政治的な偽情報の拡散や個人への詐欺、名誉毀損、恐喝などさまざまな問題が起こり得ます。実際に、ウクライナのゼレンスキー大統領が国民に投降するよう呼びかける偽動画が、ディープフェイク技術を使用し作成されました。
ディープフェイクは、生成AI技術の進歩に伴い、さらに進化しています。そのため、この技術の誤用による社会的な影響に注意が必要です。
なりすましメールなどへの悪用
生成AIの使用に伴うセキュリティリスクの一つに、なりすましメールの悪用があります。
AI技術の進化により、詐欺師は人工知能を使用して、より自然で説得力のあるフィッシングメールを作成できるようになりました。これらのメールは、本物に見えるため、受信者を騙すことが容易になります。
日本の多くの企業は、このようななりすましメールに対する対策を十分に行っていないとされています。政府機関は、特にクレジットカード関連の企業に対してフィッシング詐欺に対する対策を強化するよう要請していますが、問題はそれに留まらずビジネスメール詐欺も増えている状況です。この課題は、セキュリティリスクを理解して適切な対応策とソリューションを講じることで、なりすましメールの被害を防げるでしょう。
以上のように生成AIを使用する際には、セキュリティリスクに対する意識と対策が不可欠です。これらのリスクに対する対策とソリューションを講じることで、生成AIをより安全に活用できます。適切な対策を取ることで、企業はリスクを最小限に抑えられるでしょう。
なお、ChatGPTを企業利用するリスクについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
生成AIで発生したセキュリティリスクの事例4選
生成AIは正しく使えば便利ですが、扱いに気をつけないと大問題に発展するケースがあります。この章では、生成AIで実際に問題が発生した事例を紹介します。世界中で発生しているため、自社で生成AIを扱う際はこれらの情報を考慮するように使うのがおすすめです。
事例①サムスン電子(AIチャットボットの利用禁止)
サムスン電子の事例が挙げられます。同社は、従業員がChatGPTなどのAIチャットボットを使用することを禁止しました。この事件は、あるエンジニアが社内の機密ソースコードをChatGPTにアップロードし、誤って外部に流出した事故を受けた措置です。
サムスンは、AIチャットボットに共有されたデータがOpenAIやマイクロソフト、GoogleなどAIサービス運営企業のサーバーに保存され、アクセスや削除が困難になることを懸念しました。また、共有された機密データが他のユーザーに提供される可能性も心配されています。
情報漏洩は生成AIの利用における重大な課題です。IPAの報告書(※1)によれば、これらの課題を克服するためには、企業はセキュリティ対策を強化し、リスクを最小限に抑える必要があります。
事例②ニューヨークタイムズ(著作権侵害でOpenAIを提訴)
アメリカを代表するメディアの1つであるニューヨークタイムズは、自社の記事を無許可で学習させ、著作権を侵害しているとして、2023年12月27日にOpenAIとMicrosoftを提訴しました。(※2)2024年10月現在、訴訟結果は出ていないが、大規模な問題に発展するケースが発生しています。
ニューヨークタイムズとしては、「対価を払わず、コンテンツ利用は遺憾」「ハルシネーションによりニューヨークタイムズの評価にキズがつく危険性がある」「ニューヨークタイムズによる記事と誤って紹介するケースがある」と主張しています。生成AIの回答には気をつけないといけないことがわかりますよね。まだまだ生成AIは完璧ではないことを理解して利用する必要があります。
事例③Group-IB(10万件以上のChatGPTアカウントが闇取引で売買)
10万件以上のChatGPTアカウントが闇市場で取引されたと2023年6月中旬に判明しました。シンガポールのセキュリティ企業であるGroup-IBが発表したもので、闇取引で売買されているログを解析したところ、ChatGPTのユーザIDやパスワードが含まれていたようです。(※3)
コンピュータウイルスを利用して情報を盗んでおり、日を追うごとに闇市場で取引されているアカウント数は増えているようです。このアカウント情報を使い、ChatGPTの会話履歴を閲覧し、機密情報を抜き出すのが目的とされています。
この情報を使い悪用されたかは定かではありませんが、実際に闇取引市場で取引されているのは間違いありません。情報漏洩を防ぐのは簡単ではありませんが、万が一流出したとしても問題とならないように機密情報を入力は決してしないようにしましょう。
事例④Getty Images(画像生成AIの大手を提訴)
世界中で宣伝や広告などで利用できる社員や動画素材を扱うGetty Imagesは、画像生成AI「Stable Diffusion」の開発元を著作権侵害で提訴しました。(※4)
Getty Imagesによると1200万枚以上の画像を無許可で生成AIの学習に利用されていたとのことです。画像生成AIは、インターネット上に公開されている写真やアート作品を利用するため、トラブルが絶えません。Getty Imagesは2023年1月と2月の2回訴訟を起こしており、大きな問題に発展しています。
結論が出るまでには時間を要するとのことです。生成AIを使ったサービスを提供する際は、学習データに気をつけなければならないことがわかります。
企業が直面する生成AIの課題
企業が生成AIを導入する際には、いくつかの課題が存在します。主な課題は以下の点です。
- AIによって生成された情報が正確でない場合がある
- AIを使うことで生じる倫理的な問題
- AI導入によるコストや技術的な難しさ
まず、AIによって生成された情報が正確でない場合があります。この問題を解決するためには、AIの結果を人が常にチェックし、必要に応じて修正する仕組みを作ることが大切です。
また、AIを使うことで生じる倫理的な問題も無視できません。企業は、AIの判断がどのように行われるかを明確にし、透明性を持たせることで、信頼を築くことができます。
その他に、AIを導入するにはコストや技術的な難しさもあります。これらは段階的に導入したり、専門家の助けを借りることで乗り越えられるでしょう。
生成AI活用におけるセキュリティリスク対策
生成AIを活用する際には、セキュリティリスク対策とソリューションの導入が重要です。生成AIのセキュリティ対策として、従業員へのAI教育の実施や機密情報などの情報を生成AIでは使用しないことなどが挙げられます。ぜひ、以下を参考にセキュリティ対策を行ってください。
生成AIセキュリティガイドラインを参考にしたソリューション策定
企業が生成AIを導入する際には、IPAが提供するガイドラインを参考にし、セキュリティに関する課題を認識して効果的な対策を講じることが求められます。生成AIに関連するセキュリティリスクには、具体的な対策とソリューションが必要です。この課題に対する解決策として、アクセス制御の強化やデータの保護が挙げられます。
具体的には、AIシステムへのアクセスをしっかり管理し、誰が使えるかを厳しくチェックすることで、不正なアクセスを防ぎます。また、AIが学ぶデータを定期的に更新して、新しい脅威に対応できるようにします。
さらに、AIの結果を監視するためにログ管理システムを導入し、異常な動きを早く見つける仕組みを作ることも重要です。加えて、従業員にセキュリティについての教育を行い、リスクへの意識を高めることで、全体のセキュリティを強化できるでしょう。
従業員に対して正しいAI教育の実施
生成AIの活用における重要なセキュリティ対策は、「従業員に対する適切なAI教育の実施」です。生成AIには、情報漏洩や権利侵害、誤情報の拡散などのリスクが伴います。従業員がこれらのリスクを理解し、適切に対処できるようにするためには、AIの正しい使い方やリスク管理に関する教育が必要です。
企業は、従業員に対してAIが出力する情報の精度を評価し、問題のある内容を識別する能力を高める研修を行いましょう。また、利用ガイドラインの策定やリスク管理の方針を設定することも重要です。このように適切なAI教育を行うことで、従業員は生成AIを安全かつ効果的に利用できるようになり、企業のセキュリティ体制の強化が可能です。
生成AIで機密性が高い情報を扱わない
生成AIを活用する際の重要なセキュリティ対策は、「機密性が高い情報を扱わない」ことです。生成AIは、入力されたデータを基に学習し、新たな内容を生成します。この過程で、機密性の高い情報を外部に漏らしてしまうリスクがあるのです。
たとえば、企業の内部情報や顧客データなどを生成AIに入力するとその情報が学習データとして使用され、他のユーザーに公開される可能性があります。このリスクを避けるためには、機密情報を含むデータは生成AIへの入力を避け、一般的な情報のみを使用することを推奨します。また、生成AIのサービス事業者が提供するログの保存機能などを活用し、不正利用や情報漏洩のリスク管理をすることも重要です。
オプトアウトの活用
生成AIを活用する際のセキュリティ対策は、「オプトアウトを活用する」ことです。オプトアウトとは、ユーザーが入力したデータをAIの学習から除外することを意味し、個人情報や機密情報の漏洩リスクを減少させるのに有効です。オプトアウトにより、個人情報の保護が可能となりますが、一方でAIがユーザー固有のニーズに応じた回答を提供する能力が低下することもあります。
オプトアウト機能の利用には、申請方法や設定方法を正確に理解し、適切に実施する必要があります。この機能を適切に活用することで、セキュリティを確保しつつ生成AIのメリットを十分に活かすことが可能です。
ガバナンス体制の構築
生成AIを活用する際のセキュリティ対策として、「ガバナンス体制の構築」があります。この方法では、AI技術の使用や開発に関するルールや方針を定めることが求められます。ガバナンス体制は、生成AIの活用に伴うさまざまなリスクを管理し運用を保証するために不可欠です。
具体的には、最初に「AI原則」に基づいてゴールを定めた後、ガイドラインや国際基準に沿ってルールの大枠を策定します。最終的には、企業ごとの業務形態や特有のニーズに合わせたルールを設定し、生成AIの導入効果を最大化しつつリスクを最小限に抑えます。この体制構築により、生成AIの進化に伴うリスクを回避し、安全かつ倫理的な利用が可能です。
生成AIガイドラインの社内周知
生成AIを活用するためには、「ガイドラインの社内周知」が不可欠です。これらのガイドラインには、倫理的および社会的受容性やシステムの正確性を判断するための基本方針が含まれています。そのため、誤情報や機密情報の扱いに関するリスクを低減すると同時に、AI利用の倫理的側面も考慮されます。
社員がこれらのガイドラインに基づいて行動し、ガバナンス体制によるチェックを行うことが重要です。さらに、ガイドラインは定期的に更新し、政府の方針や国際的な基準に適合させることが求められます。こうした対策は、企業の評判を守るだけでなく、法的なリスクを防ぐためにも必要です。
IPA(情報処理推進機構)発行の生成AIセキュリティガイドラインの活用
IPAのガイドラインは、生成AIを安全かつ効果的に活用するための指針を提供しています。(※5)企業はこれらのガイドラインを参考にし、内部ポリシーの方針を決める必要があります。
具体的には、データの取り扱いに関する規定を明確にし、個人情報の保護を徹底することが重要です。また、AIの利用に関する透明性を確保し、関係者に対して適切な情報提供も必要でしょう。さらに、定期的にガイドラインを見直し、最新の技術や法令に対応することで、企業の信頼性を維持できます。
定期的な生成AIアップデート情報の確認
生成AIは日々進化しているため、新しい活用方法が生まれ、それによる新しいセキュリティリスクが発生する場合があります。たとえば、生成AIのアップデートにより、内部の仕組みが変わり従来の使い方ではデータ保護がされない、操作方法が変わるケースが考えられます。
他にも生成AIのアップデートによる変化で、企業内での使い方の変更を余儀なくされる可能性があり気をつけなければなりません。アップデート情報は各生成AIの公式サイトに記載されているため、日々確認するようにしましょう。
なお、生成AIの企業利用・開発のリスクについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
生成AI関連の信頼できるサービス・銘柄の選び方
生成AIを導入する際には、信頼できるサービスや銘柄を選ぶことが重要です。まず、提供元の信頼性を確認し、過去の実績や顧客の評価を調査します。次に、サービスの機能やサポート体制を比較し、自社のニーズに最適なものを選択します。
また、導入後の運用コストやアップデートの頻度も考慮に入れるべきです。さらに、契約前に試用期間を設け、実際の使用感を確認することも推奨されます。サービス・銘柄を選ぶ際に以上の点に気を付ければ、長期的に安心して利用できるサービスが選択でき、企業のAI活用もスムーズにできるでしょう。
生成AIに関するセミナーの重要性
生成AIに関するセミナーは、最新の技術動向やセキュリティリスクに関する知識を深める絶好の機会です。参加者は専門家から直接学ぶことで、AI技術の実践的な活用方法を理解できます。
さらに、セミナーでは他の参加者とのネットワークを築くことができ、情報交換を通じて新たな視点を得ることが可能です。企業にとっては、従業員のスキル向上や、AI導入に伴うリスク管理の強化につながります。また、セミナーで得た知識を社内に持ち帰り、チーム全体で共有することで、組織全体のAI活用能力を高められるでしょう。
生成AIセミナーを受講するメリットについては下記もご覧ください。
生成AIに伴うセキュリティリスクを理解して活用しよう!
生成AIに伴うセキュリティリスクは、以下の5つが挙げられます。
- 機密情報の流出(著作権、商標権などの侵害)
- プロンプトインジェクション
- ハルシネーション
- ディープフェイク
- なりすましメールへの悪用
この中でも、機密情報の流出やハルシネーションは、企業の信頼をなくしてしまう可能性もあるため注意が必要です。
生成AIを安全に活用するための対策は、
- 生成AIセキュリティガイドラインを参考にした具体的なソリューション策定
- 従業員に対する正しいAI教育の実施
- 機密性の高い情報を扱わない
- オプトアウトの活用
- ガバナンス体制の構築
- 生成AIガイドラインの社内周知
- IPA(情報処理推進機構)発行の生成AIセキュリティガイドラインの活用
- 定期的な生成AIアップデート情報の確認
上記の対策方法が考えられます。
生成AIを活用する際は、必ずセキュリティ対策を行い、AIを安全に使用しましょう!
生成系AIの業務活用なら!
・生成系AIを活用したPoC開発
・生成系AIのコンサルティング
・システム間API連携
最後に
いかがだったでしょうか?
生成AIを活用するなら、セキュリティリスクへの対策は必須です。具体的な課題や解決策について詳しく知り、企業としての安全なAI運用を目指しましょう。
株式会社WEELは、自社・業務特化の効果が出るAIプロダクト開発が強みです!
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セミナー内容や料金については、ご相談ください。
また、サービス紹介資料もご用意しておりますので、併せてご確認ください。