クラウドAIとは?エッジAIとの違い、メリット・デメリット、導入事例を解説!
WEELメディア事業部AIライターの2scです。
みなさん、AI導入の選択肢「クラウドAI」はご存知ですか?
このクラウドAIは名前どおり、クラウド上にAIモデルを実装する導入形態になります。ハードウェアの導入やAIモデルの開発を飛ばして、すぐに高性能AIを使い始められるのが一番の魅力です。
当記事では、そんなクラウドAIを徹底解説。メリット・デメリットから、おすすめのケース・活用事例・今後の展開まで余すところなくお伝えしていきます。
完読いただくと、自社へのAI導入がスムーズに進むかもしれません。
ぜひ、最後までお読みください。
クラウドAIの概要
まずは、クラウドAIの概要を解説していきます。以下、「そもそもクラウドとは何か?」というところから、詳しくみていきましょう!
そもそも「クラウド」とは?
「クラウド」または「クラウドコンピューティング」とは、社外の第三者(ベンダー)が提供するITインフラをインターネット経由で使う考え方のこと。まるで雲(クラウド)のように、時間・場所・端末を問わず、同じ機能とデータにアクセスできるのが最大の強みです。
クラウドにはその他にも……
- 時間や場所に縛られず、同じ機能とデータにアクセスが可能
- デスクトップからスマートフォンまで、あらゆる端末でのアクセスに対応
- ITインフラ(サーバー・ストレージ・ソフトウェア…etc.)の導入・保守が不要
- ストレージや計算リソースの規模等を自由に変更可
といった強みがあります。ITインフラを自前で用意する従来の形態(オンプレミス)と比べて、物理的な制約が少ないといえるでしょう。そんなクラウドは、オンプレミスに代わる形で登場・普及しています。
生成AIの登場で注目を集めるクラウドAI
クラウドの応用で、外部のITインフラに実装したAIモデルをインターネット越しに利用する形態を、「クラウドAI」と呼びます。こちらは図式化すると下図のとおりで、クラウドAIの魅力は、どこにいても、どのデバイスからでも、同じAIモデルにアクセスできる点にあります。
このクラウドAIは、生成AIの登場・普及に伴って注目を集めています。
LLM(大規模言語モデル)をはじめとした生成AIは、開発にも運用にも膨大な計算リソースを要します。特にハイエンドの生成AI(GPT-4o / OpenAI o1 / Claude 3…etc.)については、コストの面から、オンプレミスでの導入が非現実的です。
対してクラウドAIなら、計算リソースから完成品の生成AIまで網羅したパッケージをサブスクリプションするだけで導入が完了。予算や技術力を問わずハイエンドの生成AIが導入できることから、注目が集まっています。
クラウドAIとエッジAIとの違い
AIモデルの運用形態では他にも、端末(エッジデバイス)上でAIモデルの動作を完結させる「エッジAI」というものがあります。こちらはクラウドAIと違ってインターネットへのアクセスが不要。下記のとおり、社内で運用が完結させられます。
そんなエッジAIの強みとしては……
- 応答速度に優れ、リアルタイムでの処理・応答ができる
- インターネットにアクセスできない環境でも動かせる
- 外部ネットワークとの通信が不要で、セキュアに運用が行える
- 通信費やサーバーのレンタル費用が抑えられる
以上のとおり。こちらは主に、古典的なAIモデルや小型LLM等で採用されます。
なお、エッジAIについて詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご確認ください。
クラウドAIのメリット
ここではクラウドAIのメリットを5点ご紹介します。まずは、生成AIの運用におけるアドバンテージから、詳しくみていきましょう!
様々なAIモデルが使える
クラウドAIの場合、ベンダー側がLLM・画像生成AI・音声認識モデル・合成音声…etc.様々なAIモデルの完成品を用意してくれています。アップデートもベンダー側で行なってくれるため、開発・保守の手間なしで、気になる最新のAIモデルが試せます。
さらに、多くのクラウドAIはアプリケーションへの実装や独自のファインチューニングにも対応。API連携だけで、既存のサービス・プロダクト上でも各種AIモデルが使えます。
大規模な計算リソースが使える
クラウドAIでは、ハイエンドLLMを動かせる規模の計算リソース(GPU・ストレージ…etc.)がハードウェアの導入なしで利用可能。ノートPCやスマートフォンからでもその計算リソースにアクセスができ、ハイエンドLLMのファインチューニング等、高度な計算処理が行えます。
大量のデータが扱える
大容量のストレージを備えたクラウドAIでは、AIモデルの開発・カスタマイズに欠かせない大量のデータが保管できます。
さらに、ベンダー側で高品質なサンプルデータが提供されることも多く、データが不足している場合でもAIモデルをカスタマイズ可能です。データ周りについては、入れ物も中身もオンプレミス以上のものが使えるでしょう。
ハードの制約を受けない
外部の計算リソースをフル活用するクラウドAIの場合、端末機器(ノートPCやスマートフォン)と通信環境さえあればAIモデルが運用可能。
ハードウェアの制約を受けず、端末とインターネット環境があれば利用可能です。そのため、以下のメリットが得られます。
● 時間・場所・端末を問わず、ハイエンドのAIモデルにアクセスできる
● 物理的脅威(災害や経年劣化)の影響を受けづらい
● ハードウェアの導入が要らず、導入の時間・費用・労力が削減可能
といった恩恵が受けられるでしょう。
初期投資が最小限に抑えられる
ここまで述べてきたとおり、クラウドAIではハードウェアの導入やAIモデルの開発といった過程を飛ばして、ベンダーとの契約だけで各種AIモデルが使い始められます。下準備にかかる時間・費用・労力がゼロになるため、トータルでの初期投資が最小限に抑えられるでしょう。エッジAIと比べて、気軽に導入ができるはずです。
なお、生成AIの導入コストを抑える方法について詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご確認ください。
クラウドAIのデメリット
続いては、クラウドAIのデメリットも5点お見せします。手始めに、インターネットを経由することによる弊害から、詳しくみていきましょう!
リアルタイムでの処理が難しい
自社内や端末内でAIモデルを完結させるエッジAIに比べて、クラウドAIはリアルタイム・即時性を伴った処理が苦手です。というのも、クラウドAIではAIモデル – 端末間のデータの送受信にインターネットが挟まります。そのため処理毎、特にデータ容量がかさむ場合に、タイムラグが発生してしまうのです。
多くの場合、この遅延は大きな問題になりません。ただ、自動運転等スピードを要するタスクではエッジAIに軍配が上がります。
利用・通信にコストがかかる
クラウドAIではAIモデルを使うにあたって、AIモデルやクラウドそのもの、そしてインターネットを介したデータの送受信にコストがかかってしまいます。
特にAIモデルを頻繁に活用する場合、自前でハードウェアを導入・保守したほうがコストを抑えられる、ということも十分に考えられます。クラウドAIで「導入のしやすさ」をとるか、エッジAIで「ランニングコストの安さ」をとるかの判断は、慎重に行なったほうがよいかもしれませんね。
セキュリティ上のリスクがある
クラウドAIでは、ベンダー側によって最高水準のセキュリティ対策が行われています。
ですが、それも完璧とはいえません。ベンダー側が不正アクセスを受けてしまったり、インターネットを介して情報が漏えいしてしまったり、といったセキュリティ上のリスクはゼロにならないのです。
また、業界によってはそもそも社内データを社外に出すこと自体が法律上NGという場合も。最高水準のセキュリティを求めるのであれば、AIモデルの処理を社内で完結させるほかありません。
オフラインで使えない
クラウドAIでは、AIモデルとの入出力のやり取りにインターネットを経由します。そのため、オフラインではAIモデルが一切使えません。昨今、インターネット環境自体がないという状況はまれですが、ネットワーク障害や回線トラブルでもAIモデルが使えなくなるのはデメリットです。
ベンダーへの依存が発生する
クラウドAIでは、AIモデルやクラウドの提供側であるベンダーへの依存が問題になります。
まず、社内のシステム・アプリ一式をベンダーの推奨する仕様に合わせなくてはいけないというのが最大のネック。導入後から他のベンダーやオンプレミスに乗り換えたい場合、移行が困難(ベンダーロックイン)になります。
さらに、AIモデルの提供が終了したり、価格が変更されたりといったベンダーの都合に振り回されるのもデメリット。加えて、ベンダー側がサイバー攻撃・物理的脅威にさらされるリスクも考えておかなくてはいけません。
クラウドAIの利用がおすすめなケース
クラウドAIの強みはひとことで「ベンダーと契約するだけでハイエンドの計算リソースとAIモデルが使える」ことに尽きます。ここから導き出されるクラウドAIの利用に適したケースは……
- 最新・ハイエンドの生成AIを使いたい場合
- 普遍的なAIモデル(顔認証・音声認識・チャットボット…etc.)を使いたい場合
- AIをお試しで使ってみたい場合
- 費用・時間・労力を抑えてAIを導入したい場合
- 社内にAIに詳しいエンジニアがいない場合
- モバイル端末上でもAIの機能にアクセスしたい場合
以上のとおり。クラウドAIは、処理速度・安定性・セキュリティ要件を追求するケースを除いて、広く導入がおすすめできます。
クラウドAIの活用シーン・事例
クラウドAIは業界問わず幅広いシーンで活用されています。その具体的な活用シーン・事例は下表のとおりです。
活用シーン | 実際の活用事例 |
---|---|
自動運転 | BMWが開発を目指すAWS採用の自動運転プラットフォーム(※1) |
商品需要予測 | ・BIPROGY株式会社の需要予測型自動発注サービス「AI-Order Foresight」(※2) ・ホームセンターのカインズ×Google Cloudの需要予測AI(※3) |
農作物栽培の管理 | ・水分量と日光量の自動制御を行うサービス「クレバアグリ」(※4) |
不正行為・不良品の検知 | ・コンカーのAI不正検知サービス「Verify」(※5) ・株式会社船井総合研究所の「製造業向け AI不良品検知サービス」(※6) |
広告・商品提案の最適化 | ・株式会社サイバーエージェントの広告生成&効果予測サービス「極予測AI」(※7) ・Adobeの広告生成&効果予測サービス「Adobe Sensei」(※8) ・Salesforceの「Commerce Cloud」(※9) |
医療分野 | ・富士フイルムの画像診断支援AI開発用プラットフォーム「SYNAPSE Creative Space」(※10) ・Googleの「医療向け Vertex AI Search」(※11) |
チャットボット全般 | ・OpenAIの生成AIチャット「ChatGPT」 ・Google の生成AIチャット「Gemini」 ・生成AI搭載の業務用チャットボット「OfficeBot」(※12) …and more! |
クラウドAIは上記以外にも、様々なシーンで活躍中です。
クラウドAIのプラットフォームの代表例
ここからは、クラウドAIに必要な環境一式がそろったプラットフォームのなかから、特に有名なものを4つ紹介。まずは、世界シェアNo.1のAWSから、詳しくみていきましょう!
AWS
「AWS(Amazon Web Services)」は、アマゾンが送る世界シェアNo.1のクラウドサービスになります。こちらはインフラから機械学習、IoTまで幅広いサービスを網羅していて、クラウドAIの運用に最適です。
また、AWSはClaudeやLlama等のLLMからStableDiffusion等の画像生成AIまで、様々な生成AIが使えるサービス「Amazon Bedrock」も提供中。生成AIの導入・カスタマイズにもうってつけです。
公式サイト:アマゾン ウェブ サービス(AWS クラウド)- ホーム
Microsoft Azure
Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」もクラウドAIの運用に完全対応。こちらにはWindowsやOffice365との連携がしやすい、セキュリティ対策が徹底されているなどの魅力があります。
そして、このMicrosoft Azureで忘れてはいけないのが、OpenAIのAIモデルが使えるサービス「Azure OpenAI Service」です。こちらではChatGPTよりもはるかにセキュアな環境下で、GPT-4oやDALL-E3等、おなじみの生成AIが使えます。
公式サイト:Microsoft Azure
Google Cloud
Googleからは、機械学習系のツールが充実したクラウドサービス「Google Cloud」が登場しています。こちらはディープラーニングや画像認識等、AIモデルの開発を行いたい場合に最適です。
また、Google製LLMのGeminiシリーズが使えるサービス「Gemini for Google Cloud」もラインナップされています。
公式サイト:Google Cloud
IBM Watson(watsonx)
IBMの「IBM Watson(watsonx)」は、AI・データ分析にフォーカスしたクラウドサービスになります。こちらではLlama 3やMixtral 8x7b等、オープンソースのLLMを使ってRAG・要約・コンテンツ生成が可能です。
公式サイト:IBM Watson
クラウドAIの今後
現時点でクラウドAIの弱点となっている「処理時のタイムラグ」「インターネット環境への依存」は今後、通信技術の進歩に伴って解消されていくと考えられます。具体的に、今後実現しうることとしては……
- 光ファイバー通信の発展によるタイムラグの解消
- 5Gの普及によるモバイル端末での処理の高速化
- SpaceXの「Starlink」等、衛星通信による海上・山岳地帯でのAI運用
以上のとおり。「地球上のどこでも遅延なしでLLMが使える」という未来は、そう遠くないのかもしれません。
なお、生成AIのこれまでについて詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご確認ください。
「クラウドAI」なら、ハイエンドの生成AIも手軽に試せる!
当記事では、外部のITインフラとAIモデルをインターネット経由で活用する「クラウドAI」について解説しました。以下にてもう一度、クラウドAIの特徴を振り返っていきましょう。
サブスクリプション方式で気軽に様々なAIモデルが試せるクラウドAIは下記のとおり、幅広いケースに適用が可能です。
- 最新・ハイエンドの生成AIを使いたい場合
- 普遍的なAIモデル(顔認証・音声認識・チャットボット…etc.)を使いたい場合
- AIをお試しで使ってみたい場合
- 費用・時間・労力を抑えてAIを導入したい場合
- 社内にAIに詳しいエンジニアがいない場合
- モバイル端末上でもAIの機能にアクセスしたい場合
処理速度・安定性・セキュリティレベルについてはエッジAIに軍配が上がりますが、多くの企業ではクラウドAIでも問題なく活躍してくれるはず。特にハイエンド・最新の生成AIを業務に取り入れたい場合は、クラウドAIがおすすめです。
- ※1:BMW グループ、次世代自動運転プラットフォームの実現に向けAWS を採用
- ※2:小売業向け AI 自動発注 AI-Order Foresight|BIPROGY株式会社
- ※3:カインズ: Vertex Forecast を用いた需要予測 AI で、オリジナルブランド商品の販売計画や各店舗の発注を適正化 | Google Cloud 公式ブログ
- ※4:クレバアグリ
- ※5:Verify – SAP Concur
- ※6:製造業向け AI不良品検知サービス | 株式会社船井総合研究所
- ※7:「極予測AI」、AIで動画と静止画を横断し広告効果を予測する「クロスフォーマット機能」を追加 ーフォーマットを問わず効果の高いクリエイティブの提案が可能にー | 株式会社サイバーエージェント
- ※8:Adobe SenseiでクラウドAIサービスを体験する | Adobe 日本
- ※9:AIで商品を提案 – セールスフォース・ジャパン
- ※10:富士フイルム「SYNAPSE Creative Space」
- ※11:AI による医療の変革はすでに進んでいる | Google Cloud 公式ブログ
- ※12:OfficeBot
最後に
いかがだったでしょうか?
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