生成AIのPoC開発とは?メリットやデメリット、流れ、料金体系を解説
PoC開発は、生成AI開発に不可欠なステップで、新しいアイデアやコンセプトの実現可能性を検証できます。
主な作業にはデータ整備、アノテーション、実現性評価が含まれ、開発の成功に向けた重要なプロセスの一つです。
PoC開発の結果は資金調達や業務提携にも役立ちますが、コスト過多やデータ不足といった課題も注意が必要。この記事を読むことでPoCの重要性や開発手順を理解し、生成AI開発の成功に近づくことができます。
是非、最後までご覧ください。
生成AIのPoC開発とは?
PoC(Proof of Concept)は、新しいアイデアやコンセプトの実現可能性と効果を検証するプロセスです。日本語では「概念実証」と訳され、「ポック開発」「コンセプト実証」とも呼ばれており産業全般で広く活用されています。
例えば、医薬品研究や航空機開発では、新治療法や先進エンジン技術を試験するためにPoCが重要。映画製作でも、資金調達前にPoCとして短編映画や予告編を制作し、投資家やスポンサーの信頼を得る例があります。
したがって、AI開発担当者にとってもPoCは不可欠で、AIプロジェクトのステップの一つとなります。
AI開発プロジェクトでは、
1.企画
2.アセスメント
3.PoC
4.開発
5.実用
の5つのステップがあることを覚えておきましょう。
PoC、実証実験、プロトタイプ、MVPは、異なる開発段階で使われる用語で、それぞれ異なる目的があります。PoCは技術の実現可能性を検証し、実証実験は問題点の特定、プロトタイプは方向性の確認、MVPは市場反応のテストに焦点を当てます。これらの用語はAIシステム開発にも関連し、企業経営者にとって理解が必要です。
PoCと実証実験の違いは、PoCが技術の初期段階で実現可能性を確認する一方、実証実験は実際の環境で問題点を特定するプロセスです。プロトタイプはアイデアや技術の実現性と方向性を確認する試作品で、PoCの成功後に作成されます。
MVPは市場で受け入れられるかを早期に検証する最小限の製品を指し、市場反応をテストする段階で作成されます。これらの用語を理解し、適切なタイミングで使用することは、AI開発プロジェクトの成功に不可欠です。
PoC開発は上記のような特徴を持っていますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
生成AIの開発全般について知りたい方はこちらをご覧ください。
PoC開発のメリット
PoCのメリットには以下の3つがあります。
- リスクの低減:PoCによって新しいプロジェクトや取り組みの実現可能性を事前に検証し、高い不確実性を持つまま進むリスクを軽減できます。
- コスト効率の向上:PoCは小規模な予算で行われ、問題点を特定し、無駄なコストを削減するため、プロジェクト全体の効率が向上します。
- PoCの結果は意思決定の資料として有用:投資家や外部企業にとって信頼性の高い判断材料となり、資金調達や業務提携を容易にし、プロジェクトに注目を集めます。特にAIシステムの外注を検討する企業にとって、これらのメリットは重要です。
PoC開発のデメリット
以下は、PoCのデメリットと注意点です。
- コスト過多:投資と効果の不一致、計算コスト超過などコスト面で失敗することがあります。
- 100%の要求:完全自動化を目指し、適切なデータやアルゴリズムが不足する過度な要求をしてしまいがちです。
- 学習データ不足:適切な教師データの不足による精度低下。
- 外注過剰:外部ベンダーに依存し、自社の技術や知識の不足がプロジェクトの失敗に繋がることがあります。
- 戦略不明確:事業戦略や成功規準が不明瞭なため、期待値のコントロールが難しくなります。
これらのデメリットを回避するためには、適切な目標設定、コスト管理、データの準備、内製化の検討、明確な事業戦略の策定が必要です。
それでは、次に生成AI開発プロジェクトの具体的な流れを説明していきます。
生成AI開発プロジェクトの流れ
生成AI開発のプロジェクトの流れには大きく分けて、
- プロトタイプ開発
- AIソリューション開発
の2つがあります。
以下で、それぞれについてくわしく解説します。
プロトタイプ開発
プロトタイプ開発は、試作品の作成によってAIツールの実現可能性の検証や業務効率向上のニーズに応え、低コストでリスクの少ないAI開発を実現します。具体的な流れは、設計、テストデータ準備、データクレンジング、チューニング、ロジック開発、検証のステップから成ります。
検証後に機能の実現可能性が確認されれば、システム提案と継続的な開発を行います。難しい場合は追加検証し、最適なシステムを提案。助成金や補助金を利用した開発提案も可能で、負担額を大幅に削減できます。
AIソリューション開発
AIソリューション開発は、AIツールやAIサービスの開発から社内への導入まで、包括的なサービスを提供します。
弊社の開発プロセスでは、設計と検証にウォーターフォール方式を採用し、各機能の開発にはアジャイル方式を組み合わせたハイブリッドアプローチを採用。
通常、設計に1ヶ月、開発テストに4ヶ月、検証に2ヶ月、実際の導入に2ヶ月を想定しており、これらの段階を経て8ヶ月で開発を完了することを目指します。ただし、プロジェクトの性質や要件により、開発期間は調整可能であり、柔軟性を持たせています。
なお、生成AIの国内開発事例について知りたい方はこちらからご覧ください
AI機械学習におけるPoCの進め方
PoCの大まかな流れは上記で紹介しましたが、機械学習のPoCは具体的に以下の5ステップで進めていきます。
- PoCに関わるメンバーの選定
- 仮説とゴールの設定
- 具体的な計画の策定
- 機械学習モデルの開発・検証
- 検証結果の分析・次のステップへ
それぞれの手順は以下で解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
PoCに関わるメンバーの選定
まず、PoCに関わるメンバーの選定をおこないます。PoC開発にはさまざまなスキルや知見が求められるので、偏りがないように選びましょう。
具体的には、以下のような人材が必要です。
- 開発に携わるエンジニア
- 実際にAIを活用する現場担当者
- データ分析やAIアルゴリズムに詳しい人材
- メンバーやスケジュール管理を担当するまとめ役
PoC開発を円滑に進めるためには、チーム内でコミュニケーションを取ることも重要です。技術面だけでなく、コミュニケーション能力にも目を向けてメンバーを選定しましょう。
仮説とゴールの設定
まずは、生成AIの導入によって何を実現したいのかを明確にします。このゴールは、「業務を効率化したい」といった漠然としたものを設定してはいけません。
「どのような作業や工程を」「具体的にどのくらいまで」といったように、数値を使って設定しましょう。
たとえば、「〇〇工程の生産性を20%上げて、売上〇%アップを目指す」といったものです。そのために、どのようなモデルを開発してどのような効果を与えるのかといった仮説を立てます。
具体的な計画の策定
ゴールや仮説を設定したら、次は具体的な計画を策定します。いつまでに何を達成するといったスケジュールはもちろん、PoC開発の内容やメンバーそれぞれの役割なども決めましょう。
計画を策定し終えたら、いよいよ機械学習モデルの開発や検証に入ります。
機械学習モデルの開発・検証
機械学習モデルを開発して、効果を検証します。効果を検証する際は、なるべく実践に近い環境を用意して検証しましょう。
なお、対象が人である場合は、なるべく多くの参加者を集めることも大切です。多くのデータを集めることで、客観的かつ高精度なデータを取得できます。
検証結果の分析・次のステップへ
検証のフェーズが終わったら、その結果を分析します。目標の達成度を具体的な数値に落とし込み、成功もしくは失敗したのかを判断しましょう。
成功した場合は本格的な開発や導入に向かって動き出し、失敗だった場合は問題点の洗い出しや次の仮説を立てます。
PoC開発は1回限りの活動ではないため、めげずに何度もチャレンジしましょう。
生成AIのPoC開発で行う作業
生成AI開発のPoC開発で行う作業には以下の3つがあります。
作業 | 作業概要 |
---|---|
データの取得と確認 | データ品質や充足度、整合性を検証し、AIモデルのために整形します。問題があれば再収集や前処理が必要。 |
アノテーションと費用対効果の確認 | データセット整備と費用対効果の重要な要素。正確なアノテーションと、コスト対効果のバランスがAIモデルの性能向上に関わり、高コストや限定的な効果が見られれば他の方法を検討するべき。 |
実現性の確認 | AIモデルの実装やデプロイメントが可能か検証し、技術的側面や時間、予算制約を考慮します。データ利用、セキュリティも評価。アイデアの実行可能性を明確にし、開発成功への方向性決定とスムーズな進行ができます。 |
以下で詳しく解説します。
データの取得と確認
まず、必要なデータを収集し、そのデータがPoCの目的に適しているか、データの品質や充足度を検証し欠損データやノイズがないかを確認します。また、データのフォーマットや整合性も確認し、AIモデルの学習に適した形式に整形。こ
の段階で問題が見つかれば、必要なデータの再収集や前処理が必要となります。正確なデータは、PoCの成功に不可欠であり、適切なデータの取得と確認は信頼性の高い結果を得るために欠かせない作業です。
アノテーションと費用対効果の確認
アノテーションはデータセットのラベリングやタグ付けを指し、AIモデルのトレーニングに必要です。このステップでは、データを正確にアノテーションし、AIが学習できるように整備します。
一方で、費用対効果も検証。アノテーションにかかる費用と、そのアノテーションによってAIモデルの性能がどれだけ向上するかを評価します。アノテーションのコストが高すぎたり、効果が限定的であれば、別のアプローチの検討が必要。費用対効果のバランスを見極めつつ、アノテーション作業を適切に進めることがPoCの成功に繋がります。
実現性の確認
実現性の確認の段階では、AIモデルの実装やデプロイメントが実際に可能かどうかを検証します。実現性の確認には、技術的な側面だけでなく、時間や予算に関する制約も考慮されます。具体的には、AIモデルのトレーニングや推論に必要なリソース、データの利用可能性、セキュリティ要件などが評価されます。
このステップにより、アイデアが現実的に実行可能かどうかが明らかになり、進行すべき方向を決定するのに役立ちます。また、実現性の確認は後の開発段階でのスムーズな進行と成功につながる重要な要素です。
生成AIのPoC開発とアジャイル開発の違い
生成AIにおけるPoC開発とアジャイル開発では、目的・プロジェクトの段階・成果物が異なります。
それぞれの違いを表にまとめました。
開発の種類 | PoC開発 | アジャイル開発 |
---|---|---|
目的 | 生成AI開発や導入の実現可能性を知る | 実証実験を経て生成AIモデルを完成させる |
プロジェクトの段階 | 初期 | 開発 |
成果物 | 生成AI開発や導入の実現可能性に関するデータ | 生成AIモデルの完成系 |
PoC開発の主な目的は、上記のとおりで、生成AI開発や導入の実現可能性を知ることです。これらを知った上で、実際に開発するかどうかの判断をおこなうことになります。
一方、アジャイル開発は、設計・開発・テスト・改善のプロセスを何回も回しながら、柔軟に開発を進めていく手法です。
どちらか一方を選ぶケースはもちろん、PoC開発→アジャイル開発の流れで進めることもあります。
なお、生成AI開発におけるベストな環境の作り方が知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
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生成AIのPoC開発で失敗する主な原因
生成AIのPoC開発は、さまざまな要因により失敗することも多々あります。
主な原因は、以下の3つです。
- 現場の課題に合っていない計画を立ててしまった
- 完璧を求めすぎていた
- 言語化できない事象を計画に組み込んでいた
PoCで失敗してプロジェクト自体がなくなることを、AI界隈では「PoC死」と呼ぶこともあります。
以下では、それぞれ失敗した原因と対策例も合わせて解説するので、失敗例をあらかじめ考慮した計画を立てたい方は参考にしてみてください。
現場の課題に合っていない計画を立ててしまった
生成AIのPoC開発の失敗例で最も多いのが、現場の課題に合っていない計画を立ててしまったがために、思ったとおりの成果が得られないというものです。
こういった場合、メディア映えを狙ってアイデアばかりが先行してしまったことが原因として考えられます。
対策としては、PoC開発の計画を立てる時点で現場の声を取り入れながら、課題を徹底的に洗い出すのが有効です。
PoC開発のプロジェクトチームと現場の意向が合致してこそ、PoC開発の成功への道が開けます。
完璧を求めすぎていた
よく生成AIは完璧な処理ができる思い込んでいる方がいますが、これは間違いです。生成AIは過去のデータを学習してタスクをこなすので、予測できない事態には対応できません。
したがって、100%の精度や完璧な自動化を目標としたばかりに、PoC開発が失敗に終わってしまうケースが多いのです。
こうしたイレギュラーが発生する業務に生成AIを組み込むと、どうしても精度は落ちるため、生成AIを導入する工程や場所を見直すか、目標を見直しましょう。
言語化できない事象を計画に組み込んでいた
生成AIは、具体的な数値などのデータを学習させることで、分析して高精度かつ素早い回答を可能にしています。
しかし、あくまで生成AIは学習データに基づいて機能するにすぎないため、人間が言語化できない事象を学習したり、達成したりすることはできません。
これは計画自体に問題があるので、課題の洗い出しや目標の設定をより明確にするところから始めましょう。
生成AIのPoC開発にかかる費用
ここでは、PoC開発に必要な費用を示します。
弊社の開発費用をご紹介します。
期間は、2~4ヶ月、月120万円からとなっております。
PoC開発 | |
---|---|
価格 | 1,200,000~1,600,000/月 |
期間 | 2~4ヶ月 |
内容 | データ取得と確認アノテーションと費用対効果の確認実現性の確認 |
より詳しくは、こちらのページをご確認ください。
生成AI開発の費用についてはこちらをご覧ください。
弊社の生成AIのPoC開発事例
弊社では生成AIに関する開発を数多く手がけております。
以下に、弊社で手掛けた事例をいくつかご紹介します。
自社専用のAIチャットボット開発実績
弊社では、自社専用のAIチャットボット開発も行っています。
AIチャットボットには専門知識を学習することができ、例えばマーケターやエンジニア、コンサルタントなど、専門家を複数登場させることも可能です。
AIチャットボットを作成することで、社内の質疑にかかる工数を減らすことができ、余剰時間を産むことができます。
弊社は、透明性を重要視しており、このAIチャットボット作成手法を一般公開しています。
以下の記事からご覧ください。
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自社専用のAIチャットボット開発に興味がある方には、まずは無料相談をご用意しております。
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社内人事業務の自動化実績
弊社では、生成AIを活用し社内人事業務を99%自動化をした実績がございます。
社内人事評価にAIを導入することで、社員満足度を定量的に評価でき、社内人事を99%自動化することができます。
方法は以下の通りです。
- 社員インタビューをAIが自動で文字起こし
- 文字起こしした内容をAIに読み込ませる
- 会話内容をAIが解析し、社員満足度を定量的に評価
成果物: スコアリングした数値データ(レーダーチャート)、スコアリングに影響を与えた注目すべき会話内容(Excel)
これにより、人が介在する業務は社員インタビュー時のみとなり、それ以外は全てAIが自動で対応します。
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PoC開発で生成AI開発を成功させましょう!
PoC開発は、生成AI開発の成功に欠かせないステップで、新しいアイデアやコンセプトの実現可能性を検証します。
データ収集、整形、アノテーション、費用対効果の評価、実現性確認が主要な作業です。このプロセスには1,200,000〜1,600,000円/月の費用と2〜4ヶ月の期間が必要。
PoC開発の結果は投資家や外部企業にとって重要で、資金調達や業務提携に役立ちますが、コストや要求過多、データ不足、外注過剰などのデメリットにも注意が必要です。適切な目標設定、コスト管理、データの準備、内製化、事業戦略の策定が必要です。 PoC開発は生成AI開発の成功に向けた不可欠なステップです。
PoC開発を上手に取り入れて、生成AI開発を成功させましょう!
生成系AIの業務活用なら!
・生成系AIを活用したPoC開発
・生成系AIのコンサルティング
・システム間API連携
最後に
いかがだったでしょうか?
弊社では
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・自社専用のAIチャットボットの開発
などの開発実績がございます。
まずは、「無料相談」にてご相談を承っておりますので、ご興味がある方はぜひご連絡ください。
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