LLMとRAGの違いとは?仕組みや導入のやり方・活用シーンを徹底解説

LLM RAG 違い とは 仕組み 導入 やり方 活用 シーン 徹底 解説
押さえておきたいポイント
  • LLMとRAGの違いは、「AI自身の学習データのみで回答するか」と「外部情報を参照して回答するか
  • LLMは文章作成・要約・企画出し、RAGは社内データ検索やFAQ対応向き
  • 導入時は目的・データ・評価指標を整理し、小さく試して改善する流れが重要

LLMとRAGはどちらも生成AIを活用する上で頻繁に耳にする言葉ですが、役割は同じではありませんLLMは文章生成や要約を担うモデルで、RAGは社内文書などを検索して回答に反映する仕組みです。

生成AIベースの会話アシスタント(LLMとRAGを組み合わせたAIなど)の導入により、1時間あたりの問題解決数(生産性)が平均14%(新人では34%)向上したというスタンフォード大学等の研究結果もあり、業務効率化に大きな効果が期待できます※1。

しかし、「両者の違いが分からない」「どちらを導入すべき?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、LLMとRAGの違い、活用シーン、導入手順をビジネス向けに解説します。最後まで読むことで、自社で生成AIをどう活用すればいいか、具体的なイメージが掴めるようになります。

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目次

LLMとRAGの主な違い

LLMとRAGの主な違い

生成AIを業務に導入する際、LLMとRAGの違いを正しく理解しておくことは非常に重要です。この2つは競合するものではなく、AIの回答精度を高めるためのアプローチが異なります。ここでは、それぞれの仕組みや特徴についてわかりやすく整理します。まずは基本となる用語の意味から確認していきましょう。

LLMとは

LLM(Large Language Model)とは、インターネット上の膨大なテキストデータを事前に学習し、人間のように自然な文章を生成できるAIモデルのことで、「大規模言語モデル」とも呼ばれます。文章の作成・要約・翻訳・質問応答・コード生成など、言葉を扱う幅広い業務に活用できます。代表的なものは、ChatGPTの基盤技術であるGPTや、AnthropicのClaudeなどです。

例えば、一般的な知識に基づく文章・メールの作成や議事録の要約、社内向けマニュアルのたたき台作成、翻訳などに役立ちます。

一方で、学習データに含まれていない最新のニュースや更新頻度の高い情報、企業内の機密情報に関する質問には答えられないという弱点があります。そのため、業務で使う際は人による確認や情報源のチェックが欠かせません。

LLMについて詳しく知りたい方は、以下の記事に詳細がまとめられています。ぜひご覧ください。

RAGとは

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、「検索拡張生成」と呼ばれ、外部のデータベースから関連する情報を検索し、その情報をLLMに渡して回答させる仕組みです。RAGでは、社内文書・FAQ・マニュアル・ナレッジベースなどから関連情報を探し、その内容をもとにLLMが回答を作ります。

事前に学習していない情報であっても、検索して見つけた最新データや組み込んだ社内マニュアルなどを参照しながら回答を組み立ててくれます。そのため、事実に基づいた精度の高い回答の出力が可能です。この仕組みは、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を防ぐのに非常に有効です。

LLMとRAGの違い

項目LLM(大規模言語モデル)RAG(検索拡張生成)
役割事前に学習したデータに基づき、自然な文章を生成外部データベースを検索し、その情報をLLMに渡して回答させる仕組み
情報源学習済みの過去データ外部データ(社内文書や最新情報など)
得意な業務文章作成・要約・翻訳・アイデア出し社内FAQ・独自データに基づく回答
弱点・注意点最新・機密情報に未対応、ハルシネーションの恐れ精度は元のデータ品質に依存、処理時間がやや長め
導入ケース汎用的な文章作成や要約のサポート自社独自の非公開情報を答えさせたい場合
LLMとRAGの違い

両者の決定的な違いは、回答の作り方と参照する情報源にあります。

LLMは過去に学習した自身の記憶のみに頼って回答を生成しますが、RAGは外部のデータベースという「辞書」を引き、その情報をLLMに渡して回答を作成します。

学校の試験で例えるなら、LLMが知識を持った学生であるのに対し、RAGは持ち込み可能な教科書や参考書です。LLMだけの場合はすでに持っている知識で答えますが、RAGを組み合わせると学生の知識以外の内容も駆使してくれます。自社の独自情報や専門的な内容を答えさせたい場面では、RAGの仕組みを取り入れることが不可欠となります。

LLMとRAGの活用シーン

LLMとRAGはそれぞれ得意な領域が異なるため、目的に合わせてRAGを組み込むか否かを判断することが業務効率化の鍵となります。ここでは、ビジネスにおいてどのような場面で活躍するのか、具体的な活用シーンを解説します。

LLMが活躍する業務

LLM単体では、一般的な知識を用いたテキスト処理中心の業務で大きな力を発揮します。例えば、長文の議事録の要約、キャッチコピーのアイデア出し、メールの文面作成などが挙げられます。また、プログラミングのコード生成や多言語への翻訳作業なども得意領域です。

特定の社内ルールや独自データを必要とせず、AIの基礎的な推論能力や言語能力だけで完結するタスクであれば、LLMのみで十分に業務を効率化できます。

RAGが活躍する業務

RAGを活用したシステムは、社内の独自データや最新情報を参照する必要がある業務で活躍します。最も代表的な例は、社内規定やマニュアルを読み込ませた社内ヘルプデスク(社内FAQボット)の構築です。「交通費の精算ルールを教えて」といった従業員からの質問に対し、最新の経費精算マニュアルを参照して答えてくれます。

その他にも、過去の営業資料から特定の提案手法を探し出すなど、社内ナレッジの横断的な検索に最適です。

LLMとRAGどちらを導入すべきかの判断ポイント

LLMとRAGどちらを導入すべきかの判断ポイント

自社にRAGを導入すべきか迷った際は、「AIに何を答えさせたいか」を基準に判断しましょう。一般的な文章作成や要約のサポートが目的なら、ChatGPTなどのLLMをそのまま導入するだけで十分な効果が得られます。

一方、「自社の商品情報を顧客に案内させたい」「社内ルールに基づいて回答させたい」など、外部には公開されていない情報を取り扱う場合は、RAGの実装が必須です。似た手法として「ファインチューニング」もありますが、こちらはAIの言葉遣いや出力形式を調整したい場合に向いており、事実関係の正確性を担保するならやはりRAGの導入が推奨されます。

LLMとRAGの導入ステップ

実際にLLMやRAGのシステムを企業に導入する際、どのような手順で進めれば良いのでしょうか。ここでは、導入から本格運用までのやり方を8つのステップに分けて解説します。

STEP

目的・課題の整理

まずは、自社の課題が「LLM単体」で解決できるのか、「RAG」が必要なのかを切り分け、導入のゴールを明確にします。一般的な文章の作成や要約、翻訳、アイデア出しといった汎用的な業務効率化であれば、LLM単体の導入で十分対応可能です。

一方、「社内規程に基づいた問い合わせ対応」や「過去の営業資料の検索」など、自社独自の情報を基にした回答が必要な場合は、RAGの構築を前提としたプロジェクトとして進める必要があります。

STEP

データの準備

LLMとRAGで、導入のハードルが最も大きく分かれるステップです。LLM単体を導入する場合、事前のデータ準備は特段必要ありません

しかし、RAGを構築する場合は、AIが参照する「社内データの整理」がシステムの命となります。情報の正確性を担保するため、古い規程の削除、表記揺れの統一、PDFやWordなど複数あるフォーマットの整理(クレンジング)を徹底して行います。

STEP

モデル選定

自社の用途や予算に合わせて、ベースとなるAIモデル(GPT、Claudeなど)を選定します。LLM単体での利用であれば、文章の精度やコスト、日本語の処理能力が主な選定基準です。

RAGを構築する場合は、これらに加えて「長文の社内データを一度にどれだけ読み込めるか(コンテキストウィンドウの大きさ)」や、検索システムとの連携のしやすさも重要な評価ポイントになります。

STEP

環境構築

情報システム部門として、セキュリティ要件を満たす安全な利用環境を構築します。LLM単体の場合は、入力データがAIの学習に利用されない法人向けSaaS(ChatGPT Enterpriseなど)を契約し、アカウントや権限設定を行うことで手軽にスタートが可能です。

RAGの場合は、検索用のベクトルデータベースの構築や、既存の社内システム・ストレージとLLMをAPI経由で安全に連携させるための開発・ネットワーク設定(閉域網の利用など)が必要になります。

STEP

テスト運用

環境が整ったら、まずは情報システム部門や特定の部署に絞ってテスト運用を実施します。

LLM単体のテストでは、「プロンプト(指示文)の工夫で期待通りの文章が生成されるか」が主な検証ポイントです。

RAGのテストでは検証軸が増え、「①正しい社内文書を検索できているか」「②検索した情報を元に正しい回答を生成できているか」の2段階で精度を確認し、意図した挙動になっているかを見極めましょう。

STEP

評価

テスト運用の結果を評価し、エラーや期待外れの回答があった場合の改善策を講じます。LLM単体であれば、より具体的なプロンプトの記述方法を社内向けにマニュアル化することで改善を図ります。

一方、RAGで事実と異なる回答(ハルシネーション)が起きた場合は、プロンプトの調整だけでなく、「Step2で準備した参照元データの質」や「検索システムのアルゴリズム」に原因があるケースが多いため、データベース側の見直しを実施しましょう。

RAGの精度をより高める方法については以下の記事にまとめられていますので、ぜひ参考にしてみてください。

STEP

本格運用

精度が実用レベルに達したら、利用ガイドラインを策定して全社または対象部門へ展開します。機密情報の入力禁止など、一般的なAI利用ルールの周知は共通して必須です。

さらに、RAG特有の運用ルールとして、「AIの回答を鵜呑みにせず、必ず提示された『参照元の社内ドキュメントのリンク』を人間が確認する」といった業務フローを確立することで、より安全で確実な運用が可能になります。

STEP

継続的改善

AIの導入はスタートであり、現場のフィードバックを受けながらシステムと運用をブラッシュアップし続けることが重要です。LLM単体では、効果的なプロンプトの社内共有や勉強会の開催がメインとなります。

RAGの場合は、社内規程やマニュアルが更新されるたびに、必ずRAGのデータベースも同期して最新化する「継続的なデータメンテナンス体制」を維持することが、システムの形骸化を防ぐ鍵となります。

LLM+RAGの併用技もある

LLMとRAGは組み合わせることでAIのパフォーマンスを最大化できます。実際の業務では、LLMの文章生成力とRAGの検索力を併用する設計が有効です。ここでは、併用技のメリットと注意点を解説します。

RAG&LLMを併用するメリット

両者を併用する最大のメリットは、「高い柔軟性」と「情報の正確性」を両立できる点です。RAGがデータを検索して見つけ出し、LLMがその情報を人間にとってわかりやすい自然な文章に要約・翻訳してくれます。

これにより、専門用語の多い難解な社内文書であっても、AIが噛み砕いて丁寧に説明してくれるようになるのです。企業のナレッジを誰でも簡単に引き出せるようになるため、業務効率が劇的に向上するでしょう。

RAG&LLMを併用するときの注意点

併用する際の注意点として、参照元のデータ品質に回答精度が依存することが挙げられます。RAGが検索する社内マニュアル自体が古かったり間違っていたりすると、LLMはそのまま誤った情報をもとに回答を生成してしまうため注意が必要です。

また、検索プロセスを挟む分、LLM単体で回答を出力するよりも処理に時間がかかる傾向があります。システムを構築する際は、情報の定期的なアップデート体制を整え、検索速度の最適化を図ることが重要です。

よくある質問

ファインチューニングとRAGの違いは何ですか?

情報を最新に保つアプローチと目的が大きく異なります。ファインチューニングはAIモデル自体に追加学習させて「特定の文体やタスク」に適応させる手法ですが、RAGはモデルを書き換えずに「外部データを都度検索」して事実に基づいた回答を生成する手法です。

LLMとRAGの実装・作り方は難しいですか?

ゼロから開発する場合は専門的な技術が必要になります。しかし、近年ではプログラミング不要でRAG環境を構築できる法人向けサービスも多数提供されています。自社での構築が難しい場合は、専門の開発パートナー企業に相談する方法もおすすめです。

RAGを導入すればハルシネーションは完全に防げますか?

大幅に減らせますが、完全に防げるわけではありません。検索した情報が不足していたり、AIが文脈を誤読したりすると、事実と異なる回答を生成するリスクは残ります。重要な業務では必ず人間の目による最終確認を行ってください。

ローカル環境でLLMやRAGを構築することは可能ですか?

はい、ローカル環境での構築は可能です。オープンソースのLLMを活用し、自社専用のサーバーやPC内にRAG環境を構築することで、機密データが外部ネットワークに出ることを防げます。情報漏えいリスクを最小限に抑えたい企業に多く採用されている運用方法です。

LLMとRAGの違いを理解して業務効率化を実現しよう!

LLMは文章生成や要約を担うAIモデルで、一般的なテキスト処理が得意ですが、自社の独自データを正確に活用するためにはRAGの技術が必要不可欠であることがお分かりいただけたかと思います。両者を併用すれば、最新情報に基づいた自然な回答が可能になり、社内ヘルプデスクの構築や業務効率化を最大限に実現できます。 

今後、AI技術はさらに発展していくことでしょう。今のうちからLLMやRAGの運用ノウハウを蓄積しておくことが、企業の競争力強化に直結するはずです。

WEELが“失敗しないAI導入”を伴走します。

最後に

いかがだったでしょうか?

LLMとRAGの違いを理解すれば、文章作成だけでなく社内データ検索やFAQ対応まで生成AI活用の幅が広がります。自社の目的に合わせた設計で、業務効率化と回答精度の向上を両立できます。

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監修者田村 洋樹

株式会社WEELの代表取締役として、AI導入支援や生成AIを活用した業務改革を中心に、アドバイザリー・プロジェクトマネジメント・講演活動など多面的な立場で企業を支援している。

これまでに累計25社以上のAIアドバイザリーを担当し、企業向けセミナーや大学講義を通じて、のべ10,000人を超える受講者に対して実践的な知見を提供。上場企業や国立大学などでの登壇実績も多く、日本HP主催「HP Future Ready AI Conference 2024」や、インテル主催「Intel Connection Japan 2024」など、業界を代表するカンファレンスにも登壇している。

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