ローカルLLMとは?初心者でも超わかりやすいように解説!おすすめLLMも紹介
WEELメディア事業部リサーチャーのいつきです。
最近注目を浴びている生成AIで自社業務を効率化したいと考えるも、情報漏洩などのリスクがあることにより、導入を見送っている企業も多いのではないでしょうか。
そんなときは、ローカルLLM(ローカル生成AI)の出番です。ローカルLLMのメリットは以下です。
- データのセキュリティとプライバシーが担保できる
- レスポンスタイムの短縮
- コストの削減
- コンプライアンス要件への対応
- インターネットに接続できない環境でも利用可能
では、なぜローカルLLMが今注目されているのか、その理由を見ていきましょう。
最後までお読みいただくと、ローカルLLMのメリットや使い方を把握できます。
ぜひ最後までご覧ください。
ローカルLLMとは
ローカルLLMとは、自社サーバーや個人のPC上で動作するLLMのことです。
通常、ChatGPTなどのクラウド型のLLMは、ユーザーが入力した情報を外部ネットワークに送信して、外部で処理された答えが返ってきます。
一方、ローカルLLMは、自社が管理しているサーバーやPCなどの環境で処理が完結するため、情報漏洩の心配がほとんどありません。
したがって、社外秘の情報を生成AIに入力して処理させたいときなどは、ローカルLLMの使用がおすすめです。
なお、生成AIの法人利用について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
クローズドLLMとは
クローズドLLMとは、個人や企業が単独で所有する独占的なAIモデルのことです。ChatGPTやClaude、Geminiなどが代表例であり、ソースコードが一般公開されていないため、開発したLLMが模倣されにくいメリットがあります。
一方、オープンソースLLMは対義語としてよく登場するワードです。これは、ソースコードが無償で一般公開されているLLMのことを指しており、誰でも利用できることから機能開発が進みやすいといえます。
どちらが良いかは利用する環境や、企業の状況によってどちらが良いかは分かれるためここでは明言できません。適切なモデルの選定や導入後の最適化をサポートしてくれる専門家の助言を受けることで、スムーズに運用を開始できるでしょう。
ローカルLLMのメリット
ローカルLLMの導入には、企業の特定のニーズに応じた多くのメリットがあります。データの安全性を確保しつつ、業務効率を向上させるだけでなく、コスト管理や柔軟なカスタマイズも可能です。
以下はローカルLLMの主要なメリットの5つです。
データのセキュリティとプライバシー
ローカル環境でLLMを運用することで、データが外部に流出するリスクを最小限に抑えられます。機密性の高い情報を扱う場合や、データの外部送信が制限されている場合に有効です。
レスポンスタイムの短縮
ローカル環境での実行は、クラウド上のサービスと比べて通信の遅延がないため、リアルタイム性が求められるアプリケーションではレスポンスが速くなります。
コスト管理
クラウドベースのLLMサービスは従量課金制が一般的で、頻繁に使用する場合や大量のデータを処理する場合、コストが高額になることがあります。ローカル環境では初期コストはかかるものの、長期的にはコストを抑えられることがあります。
コンプライアンス要件への対応
業界によっては、データの扱いに関して厳格な規制が存在し、データを外部に送信することが禁じられている場合があります。ローカルでの運用はこれに対応する手段となります。
インターネットに接続できない環境でも利用可能
ネットワークが不安定な場所(医療現場や製造業など)でも、運用ニーズを満たすことができます。
これらのメリットにより、ローカルLLMは企業にとって信頼性の高い選択肢となります。特に、セキュリティが重要視される環境やコスト管理が求められる場面では、その効果を最大限に発揮するでしょう。
ローカルLLMの注意点
ローカルLLMを導入する際には、いくつかの注意点があります。これらの点を理解し、対策を講じることで、より効果的にローカルLLMを運用できます。
ハードウェアの要件
ローカルLLMを実行するためには、相応のハードウェア性能が必要です。特に大規模なモデルの場合、多くの情報を同時に処理するGPUと一つのことを素早く処理するCPUの性能が重要となります。。
なぜなら、十分な計算リソースがないとモデルの動作が遅くなったり、正確な結果が得られなかったりする可能性があるからです。
導入前に必要なハードウェア要件を確認し、必要であればアップグレードを検討することが重要です。
メンテナンスとアップデート
クラウドベースのLLMと異なり、ローカルLLMのメンテナンスやアップデートは自社で行うか、外部の専門家に依頼する必要があります。
最新の機能を使いたい場合や、セキュリティパッチが必要な場合に、適切に対応できないとリスクが高まります。
定期的なメンテナンススケジュールを設定し、モデルや関連ツールのアップデートを確認・適用するプロセスを整備しておくことが重要です。
データの管理とセキュリティ
ローカル環境でLLMを運用することで、データのセキュリティは高まりますが、内部でのデータ管理においては依然として注意が必要です。
特に、モデルに供給するトレーニングデータや運用データの管理が不適切だと、セキュリティ上のリスクが発生する可能性があります。
トレーニングデータや運用データのアクセス制限を厳格にし、暗号化やバックアップなどのセキュリティ対策を講じることが求められます。
カスタマイズの複雑さ
ローカルLLMはカスタマイズ性が高い反面、適切な調整が行われないと、期待したパフォーマンスが得られないことがあります。特に、業務固有のニーズに合わせてモデルを微調整するには、技術的な知識と経験が必要です。
モデルのカスタマイズには、社内に専門知識を持った担当者を配置するか、外部の専門家に依頼することを検討するべきです。また、事前にテスト環境を用意し、カスタマイズの影響を確認することも重要です。
サポートの限界
クラウドベースのLLMでは通常、サービス提供者からのサポートが受けられますが、ローカルLLMではそのようなサポートが限定的であるか、自社で全てを管理する必要があります。これにより、トラブル発生時に迅速な対応が難しくなる可能性があります。
自社内での技術サポート体制を強化するか、信頼できる外部パートナーを確保しておくことが望ましいです。
ローカルLLMを導入する方法
ローカルLLMの導入は、以下の3ステップで簡単に完了します。
- ローカルLLMを実行するためのプログラムをインストールする
- LLMを自身のPCもしくは自社サーバーにインストールする
- 1でインストールしたプログラムで2のLLMを指定してプロンプトを入力する
ローカルLLMを自身のPCで動作させるためには、特定のツールが必要です。具体例として、Ollama・Open-webui・LM Studioなどがあります。
次に、タスクを処理するLLMを自身のPCにインストールしてください。ローカル環境で動作するLLMの代表例としては、Llama-3-ELYZA-JP-8B-AWQやStable Diffusionなどが有名です。
画像生成やコード生成など、インストールするモデルによって得意なタスクが異なるので、LLMの利用目的を明確にしたうえで選びましょう。
LLMを自身のPCにインストールしたあとは、1の手順で入手した専用プラグラム上でLLMを指定して、プロンプトを入力するだけで、LLMがローカル上で簡単に動作します。
ローカル環境で使えるおすすめLLM
ローカル環境で使えるおすすめのLLMは、以下の4モデルです。
- Qwen2-72B-Instruct
- Llama-3-ELYZA-JP-8B-AWQ
- CyberAgentLM
- Stable Diffusion
以下でそれぞれの特徴や強みを解説していくので、ローカルLLMのモデル選択で悩んでいる方は参考にしてみてください。
Qwen2-72B-Instruct
Qwen2-72B-Instructは、アリババ社のQwenグループが開発している大規模言語モデルです。大規模な言語およびマルチモーダルデータが事前にトレーニングされており、視覚や音声理解等も可能にしています。
また、英語や中国語を含む27の言語でトレーニングされているのも特徴。複数言語が出現してしまうコード・スイッチングの現象も対策されています。
なお、Qwen2-72B-InstructをローカルLLMとして使う際は、インストールに料金が発生しません。ローカルLLMを無料で使いたい方は、ぜひチェックしてみてください。
Qwen2-72B-Instructについては、以下の記事で詳しく解説しています。
Llama-3-ELYZA-JP-8B-AWQ
Llama-3-ELYZA-JP-8B-AWQは、株式会社ELYZAがリリースした日本語特化型のLLMです。Meta社の「Llama 3」をベースとしながら、日本語とその周辺知識について多くのデータを学習させています。
なお、日本語の処理能力においては、あのGPT-4をも超えているとのこと。そのほか、各種ベンチマークテストにおいて、名だたるLLMよりも高性能であることを証明しています。
日本語の出力や読み込み精度にこだわりたい方は、ぜひローカルLLMとして活用してみてください。
CyberAgentLM
CyberAgentLMは、サイバーエージェント社が開発した日本語特化型のLLMです。膨大な日本語データでトレーニングされており、225億ものパラメータを備えています。
とくに、高い日本語処理能力を備えているのが特徴。微妙なニュアンスも理解して文章を生成できるので、丁寧な言葉遣いが求められるビジネスメースの作成などにも向いています。
ローカルLLMとしての利用が可能なほか、配布や商用利用等の目的で使用することも許可されているので、さまざまなニーズに対応できるのが強みです。
CyberAgentLMについて詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
Stable Diffusion
Stable Diffusionは、画像生成AIの代表格として知られている人気のLLMです。「深層拡散モデル」が搭載されており、テキスト入力で画像を生成する能力に長けています。
なお、ローカル環境であれば、無料で使えるのも嬉しいポイント。ただし、ハードへの負荷が高いため、ハイスペックなPCが必要です。
イラストやロゴ作成など、画像生成に関わる業務をローカル環境で効率化させたい方は、ぜひインストールしてみてください。
なお、Stable Diffusionについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
知っておきたい用語
ファインチューニング
AIのモデルは、最初からゼロから作ると膨大な時間と大量のデータが必要です。
しかし、すでにある程度学習済みのモデルに追加の学習データを与えて調整することで、自分専用のカスタムAIを作れます。これが、ファインチューニングです。
例えば、 自社のFAQや社内ドキュメントを学習させることで、オリジナルのチャットボットを作成可能です。
他にも医療データや法律などかなり専門的な知識が必要となる分野においてファインチューニングを行うことで、生産性の向上とコスト削減が期待できます。
なお、ファインチューニングについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
RAG
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、AIが外部データを検索しながら回答を生成する技術のことです。
通常のAIモデルは事前に学習したデータからしか回答の生成ができません。しかしRAGを使うとリアルタイムで情報を検索して回答を生成できるようになるため、より正確で詳しい回答を得ることができます。
なお、RAGについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
マルチモーダル対応ローカルLLMの可能性
「マルチモーダル」とは、テキストだけでなく、画像や音声、動画など複数の形式のデータを理解し、処理するAIの仕組みです。
この技術をローカル環境で使えるようになれば、個人や企業のプライバシーを守りながら、より高度なAIアシスタントを作ることができるでしょう。
ローカルLLMだからこそ活用できるマルチモーダル対応LLMの例を3つ紹介します。
画像認識 × テキスト生成
一つ目は、「画像を読み取って説明文を生成する」です。
例えば、製造業において製造されたものに不備があった場合、その写真を撮影し画像からどの部品が故障しているのかの説明を自動で行えます。
音声認識 × テキスト生成
二つ目は、「音声を認識し、その内容をテキスト化して処理する」です。これにより音声アシスタントや音声データの要約が可能になります。
社内会議の音声をローカルLLMがリアルタイムで要約し議事録を作成したり、顧客からの電話内容をAIがリアルタイムで認識し、適切な回答スクリプトを生成できるでしょう。
マルチモーダル × ファインチューニング
ローカル環境でのファインチューニングを行えば、特定業界に特化したマルチモーダルAIを構築できます。
例えば医療分野では患者の診察記録(画像や音声)をAIに見せると、病状の説明や推奨される治療法の提供が可能です。
教育分野では、教材の画像や動画を読み取り、生徒ごとにカスタマイズした説明を生成できます。
法律分野では、書類を読み取ることで契約内容の要約や、リスクの指摘を自動でできるようになるでしょう。
なお、マルチモーダルについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
ローカルLLMを使用して業務を効率化しよう
今回はローカルLLMについて解説をしました。
ローカルLLMは、情報漏洩リスクの低減やレスポンスの高速化、コスト管理など、クラウド型LLMにはない多くのメリットがあります。
特に、機密情報を扱う業務や、オフライン環境での利用が必要な場合には、最適な選択肢となります。
導入の際には、ハードウェアの要件やメンテナンス体制の整備が重要ですが、適切に運用すれば、業務の生産性向上やカスタマイズ性の向上が期待できます。
これからの時代、プライバシーを重視しつつ、AIを活用したい企業にとって、ローカルLLMは見逃せない技術です。
ぜひ、自社の業務改善に役立ててみてください!
生成系AIの業務活用なら!
・生成系AIを活用したPoC開発
・生成系AIのコンサルティング
・システム間API連携
最後に
いかがだったでしょうか?
ローカルLLMを導入することで、自社の機密情報を安全に処理し、コストやコンプライアンスの課題も解決できます。業務に最適なモデル選定や運用方法をサポートし、効果的な活用を実現しましょう。
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