LSTM(長・短期記憶)とは?RNNやGRUとの違い、活用するメリットをわかりやすく解説
WEELメディア事業部リサーチャーのいつきです。
LSTMとは、生成AIが自然言語を処理する際に使用するニューラルネットワークの1つ。日本語では長・短期記憶とも略されており、文章生成や音声生成などの技術に活用されています。
今回の記事では、LSTMの特徴や仕組み、RNNやGRUとの違いをご紹介します。
最後まで目を通すと、普段使用している生成AIの仕組みを深く理解できるので、生成AIマスターにまた一歩近づくでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
LSTM(長・短期記憶)とは
LSTM(長・短期記憶)とは、機械学習を行うためのニューラルネットワークの一種で、「Long Short Term Memory」の略です。以前のニューラルネットワークが抱えていた長いデータの処理における課題を克服し、入力された情報を活用して学習モデルを構築できます。
LSTMの主な特徴は、時間の経過とともにデータの依存関係を考慮できる点です。従来のニューラルネットワークは、時間的な情報を保持する能力が弱く、長文や時間の長いデータに対して正確な学習が難しいという課題を抱えていました。
LSTMはこれを改善し、長期間の依存関係があるデータでも高精度な予測や学習を可能にしています。
RNNとの違い
RNNとは、「Recurrent Neural Network」の略で、「回帰型ニューラルネットワーク」とも呼ばれています。時間の経過とともに変化するデータの学習を得意としているので、予測系のタスクをこなせるのが特徴です。
LSTMとRNNの違いは、記憶セルの有無です。LSTMが記憶セルを搭載しているのに対し、RNNには記憶セルがありません。
記憶セルがあるLSTMは入力した情報の一部を維持したまま学習できますが、RNNではニューラルネットワークがある層で計算された情報がそのまま次の層に引き継がれます。
なお、生成AIについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
GRUとの違い
GRUとは、「Gated Recurrent Unit」の略で、「ゲート付き回帰型ユニット」とも呼ばれています。LSTMと似た機能を備えているニューラルネットワークの一種です。
LSTMとGRUは、どちらもRNNの改良版ですが、その構造や仕組みが異なります。LSTMは記憶セルを使って情報を保持する複雑な構造をしているのに対し、記憶セルがないGRUはその分構造がシンプルです。
なお、どちらが優れているかはタスクの種類によって異なります。構造が複雑なLSTMは長文理解などで長けていますが、シンプルなタスクであればGRUのほうが速いです。
LSTMの特徴
LSTMは、RNNのように「前の出力(y_{t-1})」を次のステップで入力として使う構造を持ちながらも、「長期記憶(C_{t-1})」を少しずつ調整していけるのが大きな特徴です。
そのため、LSTMは過去の情報を保持しつつ、新しい情報を適切に取り入れられます。
さらに、LSTMではこれを3つのゲートで制御しています。具体的には、「忘却ゲート(Forget Gate)」「入力ゲート(Input Gate)」「出力ゲート(Output Gate)」の3つです。
この3つのゲートが機能することにより、LSTMは過去の情報を保持しつつも、必要に応じて柔軟に新しい情報を取り入れています。
LSTMを活用するメリット
LSTMを活用するメリットは、長文理解や時系列予測などの複雑なタスクを短時間でこなせる点です。これは、LSTMが記憶セルを活用して、入力した情報を長時間保持していることが関係しています。
従来のRNNでは、やり取りが増えたり、プロンプトが長くなるにつれて勾配が減衰し、過去の入力情報が次第に影響を失っていました。
しかし、LSTMなら保持している情報を必要に応じて出力できるので、長期依存関係のタスクを効率的に学習できます。
なお、生成AIを活用する際の課題や対策法が知りたい方は、以下の記事もご確認ください。
LSTMの仕組み
LSTMの仕組みを理解するうえで欠かせないのが、以下3つのゲートです。
- 忘却ゲート
- 入力ゲート
- 出力ゲート
これら3つのゲートがそれぞれ機能することで、LSTMが自然言語処理を効率的にこなしています。
それぞれのゲートの役割について、以下でみていきましょう。
忘却ゲート
忘却ゲートは、入力された情報に基づいて、記憶セルに保存されているデータをどれくらい忘れるかを決定する役割を担っています。0から1までの値を出力することで、記憶セルのデータを管理しているのが特徴です。
たとえば、機械学習の過程で記憶セル内のデータをすべて消去する必要がある場合は、忘却ゲートから0の値が出力されます。逆に、記憶セル内のデータをすべて保持する場合は1の値を出力するという仕組みです。
入力ゲート
入力ゲートの役割は、入力された情報の中から、どの情報を新しく記憶セルに保存するかを決定することです。さらに、シグモイド関数を使って、各入力の重要度を0から1の範囲で評価して出力し、その重要度を反映させています。
入力ゲートで計算された値は、記憶セルに保存されるデータと組み合わされ、次のステップで出力ゲートに引き渡されます。
出力ゲート
出力ゲートは、最終的にどの情報を外部に出力するかを決定する役割を果たしています。入力ゲートまでで処理された情報に対して、その重要度に応じた重みをかけ、最終的な出力データを計算しているのが特徴です。
ここまで3つのゲートを紹介しましたが、LSTMはこれら3つのゲートを使ってデータを効率的に取捨選択し、高精度な機械学習を実現しています。入力された情報を部分的に記憶する仕組みによって、文章生成などの自然言語処理を効率的におこなっているというわけです。
LSTMの活用方法
LSTMの活用方法として、代表的なものを以下にまとめました。
- 自然言語処理:テキスト生成や翻訳、感情分析など幅広いタスクを処理するのに使われています。
- 手書き文字の認識:手書きの文字を認識してデジタルテキストに変換できます。
- 音声認識:音声をテキストデータに変換するのに活用されています。
- 時系列予測:天気予報や株価、需要予測などで活用されています。
- 自動運転:自動運転車に搭載され、物体検出や経路設定などをこなしています。
上記のように、LSTMは複雑なタスクも効率的にこなせるのが魅力です。もしかしたら、知らないうちにLSTMを活用したサービスを利用しているかもしれません。
LSTMの仕組みを理解して、今後も生成AIを効率的に活用していきましょう。
なお、生成AIの国内開発事例が知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
LSTMを理解して生成AIを使いこなそう
LSTM(長・短期記憶)とは、機械学習をおこなうためのニューラルネットワークの一種です。記憶セルで一部の情報を保持しておけるので、長期間の依存関係があるデータも効率的に処理できます。
同じニューラルネットワークの1種としてRNNやGRUとの違いが疑問視されやすいですが、それぞれタスクを処理する仕組みや構造が異なります。
LSTMで使われているのは、以下3つのゲートです。
- 忘却ゲート
- 入力ゲート
- 出力ゲート
それぞれのゲートでデータを効率的に取捨選択し、高精度な機械学習を実現しています。
なお、LSTMの活用方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 自然言語処理:テキスト生成や翻訳、感情分析など幅広いタスクを処理するのに使われています。
- 手書き文字の認識:手書きの文字を認識してデジタルテキストに変換できます。
- 音声認識:音声をテキストデータに変換するのに活用されています。
- 時系列予測:天気予報や株価、需要予測などで活用されています。
- 自動運転:自動運転車に搭載され、物体検出や経路設定などをこなしています。
とくに、LSTMは長文理解や時系列予測などの複雑なタスク処理に優れているのが特徴です。生成AIを活用する際は、ニューラルネットワークの特性も理解したうえで、最適なサービスやモデルを利用しましょう。
最後に
いかがだったでしょうか?
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