エンタメ業界の問題と課題を生成AIが解決!実際の活用事例も徹底解説

WEELメディア事業部AIライターの2scです。
エンタメ業界でご活躍中のみなさん、「人手不足」をはじめとした様々な問題に悩んでいませんか?
近年、日本のエンタメ業界は急激なIT化のしわ寄せ(人手不足 / 収益減…etc.)により伸び悩んでいます。PwCの予測によると、エンタメ業界の年平均成長率(2022〜2027)はグローバルで3.6%であったのに対し、日本では2.1%であったとのこと。(※1)早急な対処が求められます。
その一方で、昨今話題のIT技術「生成AI」はエンタメ業界の窮状を打破してくれる……との期待を集めています。生成AIなら、コンテンツ制作から定型業務まで自動化が可能。人手不足を解決してくれるかもしれないんです!
当記事では、「エンタメ業界×生成AI」で解決できそうな課題をピックアップ。今後想定される用途や現時点での活用事例をお伝えしていきます。
完読いただくと、エンタメ業界の今後の流れが見えてくる……かもしれません!ぜひ、最後までお読みください。
エンタメ業界が抱える問題と課題

ゲーム / アニメ / 動画…etc.あらゆる娯楽を扱う日本の「エンタメ業界」は、IT技術の急激な進歩に起因する問題を抱えています。具体的には、従来の物理メディアからインターネット媒体への移行にともない以下のような問題・課題が表面化。
- プラットフォームへの依存による、収益低下
- ITベンダーへの依存による、社内IT技術の遅れ
- 低賃金労働の慢性化
- 上記に起因する人手不足
さらに中国&韓国のエンタメ業界の隆盛も合わさって、日本のエンタメ業界は世界での競争力を失いつつあるといわれています。
なお、生成AI時代のクリエイター像について詳しく知りたい方は、下記のインタビュー記事を合わせてご確認ください。

なぜエンタメ業界に生成AIが重要なのか
エンタメ業界は、常に新しい技術や流行を取り入れながら成長してきました。
映画にCGが導入されたことでリアリティが格段に向上したように、ゲームや音楽、演劇などの分野でも、技術の進化によって表現の幅が大きく広がっています。
最近ではYouTubeやTikTokなど動画プラットフォームが急速に普及し、動画編集や演出技術への需要が高まり、映像制作において効率化と独自の発想がますます求められるようになりました。
しかし、上の項目でも説明したように、エンタメ業界は人手不足をはじめとする様々な問題も抱えています。
こうした流れの中で特に注目されているのが「生成AI」です。
従来のAIがデータを分析・判断する役割だったのに対し、生成AIは大規模な言語モデル(LLM)などを使い、文章や画像、音声、動画など様々なコンテンツを自ら作り出すことが可能です。そのため、企画、制作、編集といった一連の作業を大幅に効率化できるだけでなく、人間が持つ創造性をさらに刺激し、これまでにない新しい表現方法を生み出すことが期待されています。
また、生成AIの活用を進めることで、エンタメ業界が抱える様々な問題を解決できる可能性が高まり、業界全体の健全な発展も期待できます。
生成AI人材を育てるリスキリングが不可欠
今、ビジネスの現場では生成AIの導入が避けて通れない流れになっています。
ほんの数年前には、テレビドラマの脚本やCMのキャッチコピーを生成AIが手がけるなんて考えもしなかったことですが、現在ではそれが当たり前のように行われるようになりましたね。
こうした大きな転換点を迎えている今こそ、現場で働く人たちが生成AIをうまく使えるような土壌を整えることが、企業や業界全体の成長と課題解決にとって重要になります。
このような背景の中で注目されているのが「リスキリング(Reskilling)」です。リスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」です。
と言っても、「業界の全員を生成AIの専門家に育て上げる」といった話ではありません。むしろ大切なのは、それぞれの部門が自分たちの業務に合った形で生成AIを活用し、仕事の質を高めたり、作業の無駄を省いたりする方法を学んでいくことです。
特にエンタメ業界では、映像制作やストーリー構成、マーケティング活動、さらには顧客対応など生成AIが力を発揮できる場面は非常に多く、生成AI人材を育てることは必要不可欠だと言えます。
なお、デザイナーの仕事を効率化できる無料ツールについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

エンタメ業界で生成AIが活躍する場面

2022年のChatGPT登場以降、あらゆる業界から注目を集める生成AI。テキスト / ソースコード / 画像等、新しいコンテンツが生成できるこのAIモデルは、エンタメ業界の課題を解決してくれるかもしれないとの期待が高まっています。
以下ではそんな生成AIがエンタメ業界で活躍する場面について、詳しく解説していきます。まずは、コンテンツ生成をそのまま活かす場面から詳しくみていきましょう!
リアルタイムでのコンテンツ提供
生成AIの一種でテキストに特化したLLM(大規模言語モデル)なら、リアルタイム・即興でのコンテンツ生成が可能です。ゲームシステムやキャラクターに組み込むことで、テンプレートに縛られないシナリオと会話が提供できます。エンタメ業界のUX向上に役立ってくれるかもしれません。
企画作り・台本作り
エンタメ業界の要・企画作りにおいてもLLMは活躍します。具体的には、新しいコンテンツを生成する能力を活かしての「案出し」や自然言語能力を活かしての「壁打ち」により人間とLLMの協働で、新しい切り口のより良いアイデアを出すことができます。
また、映画やドラマの台本作りでは、ストーリーの下書きを生成AIに提案させることで脚本家やプロデューサーは複数のパターンを俯瞰でき、ストーリーをさらに洗練させていくことができます。
コーディング補助
LLMはソースコードの生成も可能で、ゲームや動画の制作にともなうコーディングを補助してくれます。特にGPT-4oやClaude 3といったトップレベルのLLMにもなると……


このように、一瞬でブロック崩しゲームが生成可能です。そのコーディング能力でもって、エンタメ業界における人手不足・技術不足解消の一助となってくれるでしょう。
カスタマーサポートの業務負担軽減
LLMならWebサイトで動作する「チャットボット」や電話の「自動対応サービス」が実装可能です。チャットボットをエンタメ業界の顧客対応業務に取り入れることで、貴重な人材をメインの制作業務に集中させられます。
アニメーションの作成
イラストや写真が一瞬で用意できる画像生成AIも、エンタメ業界での活躍が期待されています。とくにアニメーション分野との相性が非常に良い点が特徴です

- デザインの案出し
- 3Dモデリング時のテイスト案出し
- 背景美術の生成
アニメ制作の背景イラストやキャラクターデザイン、映画のプロモーション用画像なども、生成AIを活用することで制作費や時間を大幅に抑えながら質の高いビジュアルを生み出すことが可能です。
エンタメ業界に生成AIを取り入れた事例
ここからは、実際のエンタメ業界における生成AIを使った試みを6つご紹介します。まずはNetflixの事例から、詳しくみていきましょう!
事例① Netflix
世界最大級のストリーミングサービス「Netflix」は、いち早く映像制作に画像生成AIを取り入れています。(※2)
画像生成AIを導入したのは、同社が東京に構えるアニメ専門の拠点「Netflix アニメ・クリエイターズ・ベース」です。このアニメ・クリエイターズ・ベースは、
- rinna株式会社:LINEで動く会話ボット「りんな」を手がけたAI開発スタートアップ
- WIT STUDIO:『進撃の巨人』『SPY×FAMILY』…etc.の映像化を手がけたアニメ制作会社
と共同でショートアニメ『犬と少年』を制作。当作品にはアニメーター不足の解決に向けた試みとして、画像生成AIが投入されています。
この『犬と少年』で画像生成AIが用いられた箇所は背景美術。具体的には……
- 「Transformer」を搭載、構図の理解力に優れる
- 学習データにはNetflix保有の背景美術を使用、著作権上のリスクが抑えられている
といった特徴をもつ画像生成AIが投じられました。
事例② HYBE
世界的人気を誇るアイドルグループ・BTSが所属する韓国の総合エンタメ企業「HYBE」も、生成AIの活用に積極的です。(※3)同社からは生成AI技術を応用したバーチャルアーティスト「Midnatt」がデビューしています。
このMidnattの特徴としては……
- 実在のアーティスト(Lee Hyun 氏)をモデルに作られている
- Supertone社の音声生成AI技術による声をもつ
- デビュー曲のMVには、仮想空間が用いられている
以上のとおり。今後は芸能分野でも、生成AIの活躍が進んでいきそうです。
事例③ 株式会社レベルファイブ
『妖怪ウォッチ』や『イナズマイレブン』を手がけるゲーム制作の大手「株式会社レベルファイブ」は、業務の至る所で生成AIの活用を進めています。(※4)
同社は画像生成AI / LLM / 音声生成AI等、さまざまなAIモデルの活用法を編み出しています。具体的には……
- 画像生成AI「Stable Diffusion」
- 群衆や建物等、背景美術の制作
- ゲームタイトル画面のレイアウト案出し
- 3Dモデリング時のテイスト案出し
- マップレイアウトの案出し
- イメージビジュアルの案出し
- イベントステージ演出の案出し
- LLM搭載チャット「ChatGPT」
- キャラクターの設定案出し
- クエスト・依頼の設定案出し
- コーディングの補助
- 音声生成AI「VOICEVOX」
- 仮ボイスの生成
といった場面で、生成AIを活用中です。
事例④ カバー株式会社
大手VTuber事務所を運営する「カバー株式会社」はLLMを活用して、所属のタレント『博衣こより』氏のデジタルクローン(AIこより)を制作しています。(※5)このAIこよりは……
- Whisperによる音声入力機能
- GPT-3.5 Turboによる回答生成機能
- 本人の音声データに基づく回答の読み上げ機能(CoeFontを使用)
- RAGによる会話内容の記憶機能
- プロンプトによる口調の変更機能
を完備。YouTubeの生配信で、タレント本人との共演を果たしました。
事例⑤ 株式会社バーグハンバーグバーグ
『オモコロ』を運営するWeb制作会社「株式会社バーグハンバーグバーグ」は、生成AIを活用した斬新な企画を多数送り出しています。

生成AIの普及で、今までになかった種類のエンタメが生まれてくるかもしれませんね。
事例⑥ AiHUB
エンタメに特化した生成AIの研究・開発を行う「AiHUB」は、TVアニメ『BEYBLADE X』のエンディングテーマのMV制作に参画。(※6)制作にあたって、著作権問題をクリアした画像生成AIを提供しています。
MV制作の手順としては、
- モーションアクターによるダンスを動画に収める
- 動画を3DCGと画像生成AIで仕上げる
以上のとおりで、従来比での工数削減を達成しています。
なお、AiHUBと上記MVの秘話について詳しく知りたい方は、下記のインタビュー記事を合わせてご確認ください。

生成AIの登場でエンタメ業界はますます面白く
当記事ではエンタメ業界における生成AIのポテンシャルをご紹介しました。エンタメ業界で生成AIにできることは……
- リアルタイムでのコンテンツ提供
- 企画作り
- コーディング補助
- カスタマーサポートの業務負担軽減
- アニメーションの作成
以上のとおりでしたね。
なお現在、著作権問題をクリアした生成AIの開発が進められています。登場の暁には、日本のエンタメ業界を盛り上げてくれる……かもしれません。来る日に備えて、普段の業務に生成AIを取り入れていきましょう!

生成系AIの業務活用なら!
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・システム間API連携
最後に
いかがだったでしょうか?
生成AIが現場にどう役立つのか、自社に最適な導入方法を具体的に知りたい方は、一度情報を整理してみませんか?業務課題の棚卸しからサポート可能です。
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開発実績として、
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【監修者】田村 洋樹
株式会社WEELの執行役員として、AI導入支援や生成AIを活用した業務改革を中心に、アドバイザリー・プロジェクトマネジメント・講演活動など多面的な立場で企業を支援している。
これまでに累計25社以上のAIアドバイザリーを担当し、企業向けセミナーや大学講義を通じて、のべ10,000人を超える受講者に対して実践的な知見を提供。上場企業や国立大学などでの登壇実績も多く、日本HP主催「HP Future Ready AI Conference 2024」や、インテル主催「Intel Connection Japan 2024」など、業界を代表するカンファレンスにも登壇している。