生成AIを社内に導入する時によくある課題とは?その対策も解説
近年、生成AIの技術が急速に進化し、その影響はビジネスの現場にも大きく及んでいます。生成AIには非常に多くの魅力やメリットが存在するでしょう。
その一方で、生成AIを企業に導入するにはハードルがあるのも事実です。導入までの道筋やそれに立ちはだかる課題も存在すると思います。
この記事では、生成AIを企業に導入する際に立ちはだかる課題やその対策について紹介いたします。ぜひ最後までお読みください。
生成AIとは?概要を紹介
生成AIは、人間が行う創造的なタスクを自動化するための最新の技術で、テキストや画像、音声などのデータを自動的に生成する技術となっています。
機械学習の分野で発展してきた深層学習と呼ばれる手法を用いて、大量のデータからパターンや特徴を学習し、それに基づいて新しいデータを生成します。
これまでのAIとは何が違うの?
従来のAIとの違いを一言で表現すると「オリジナルコンテンツ創造の可否」です。
従来の識別型AIはあらかじめデータを与えて「答え」を学習させ、与えられたデータと学んだ答えを比較して、正解か不正解かを判定していました。例えば、AIカメラなど画像認識AIは、画像の中に何が含まれているかを識別しています。この技術では「新しいものを生み出す」という事はできません。
これに対して生成AIは深層学習(ディープラーニング)と呼ばれる手法を用いて、大量のデータからパターンや特徴を学習し、それに基づいて新しいデータを生成します。AI自身が最善の回答を生み出す事が可能という事です。
生成AIにできること
生成AIにできることとしては、以下の項目が挙げられます。
- テキスト・画像・音声の分析:画像や音声をテキスト情報として分析を行う。
- テキスト生成:ユーザーがテキストボックスに質問を入力すると、AIが質問の内容を解析して、回答となるテキストを生成する。
- ソースコード生成:プロンプトを入力することで、JavaScript・HTML・CSSなどのコードを生成してくれる。
- 動画生成:動画のイメージをテキスト入力すると、そのイメージに沿った動画を生成できます。
- 画像生成:プロンプトを入力すると、その内容に応じてAIがオリジナル画像を生成する。
- 音声生成:テキストから音声へ変換し、感情も表現した音声として生成する。
なお、生成AIでできることについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→生成AIの企業利用・開発のリスクとその対策を解説!開発失敗事例も紹介
生成AIの活用事例3つ
生成AIは実際に企業でも活用されています。この章では生成AIの企業での活用事例を3つ紹介します。生成AIの導入といってもイメージがわかないという方は、生成AI導入の参考になりますので、ぜひ最後までお読みください。
事例①LINEヤフー
LINEヤフー株式会社は、2023年10月13日より開発業務に関わるエンジニア約7,000名を対象に生成AIである「GitHub Copilot for Business」を導入しました。※1
従来の生成AIの使い方としては、主に書類作成やリサーチなどの調査での利用が一般的でしたが、ソフトウェア開発で利用されるのは大きな変化です。
テスト導入を行った結果として、エンジニアのコーディング時間が1日あたり1~2時間程度の削減ができたようです。
このように生成AI導入で事務作業だけでなく、エンジニアの業務も効率化できたという事例でした。
事例②アサヒビール
アサヒビール株式会社は、株式会社丹青社と連携し、生成AIを用いた社内情報検索システムを2023年9月より試験導入しました。※2
この事例の特徴は、既存の生成AIをそのまま使うのではなく、丹青社が開発したシステムをもとに作られています。
その結果、社内で保有する膨大なデータや資料を一括検索ができ、さらには要約された状態で確認できる仕組みがあるため、必要な情報を効率よく探せるようになったのです。
事例③KDDI
KDDIは2023年5月24日より、社員1万人を対象に生成AIを活用したAIチャットサービス「KDDI AI-Chat」の利用を開始しました。※3
この導入により、生成AIを安心・安全な環境で生成AIの利用ができるようになりました。
その結果、アイディア出しやクリエイティブ業務、文章作成支援など、業務内で生成AIの利用に慣れ、AIスキル向上や生成AI活用のビジネス展開を行いやすくなったとのことです。
なお、生成AIを導入した他の企業事例を詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→生成AIの法人利用方法10選!法人向け生成AIツールや実際の事例も解説
生成AIのメリット5つ
生成AIの活用は、業務の効率化から新規事業への応用、24時間体制の構築まで非常に多岐にわたるメリットをもたらします。以下では、生成AIがどのようなメリットがあるのか、具体的に5点紹介いたします。
業務を効率化してくれる
生成AIは、文章の作成、画像の生成などなど多岐にわたるタスクを自動化することが可能です。
例えば、会議の議事録用の記録を入力し要約させることで、会議報告書の作成の効率化につながります。
単純で時間のかかる作業をAIの担当としてしまえば、人間がこれらの定型業務を手動で行う必要がなくなり、業務の効率化が図れます。
人件費を削減できる
生成AIは、人間が通常行うタスクを自動化し、さらに高速化することができます。これにより、人間がこれらを行う時間が少なくなる、かつクリエイティブな作業へ集中させることが可能です。
その結果、必要な人員が減少することにつながり、全体的な労働人数を減らし、人件費コストを削減することができます。
クリエイティブな業務に人員が割ける
通常行うタスクの自動化と、単純で時間のかかる作業の生成AI効率化を行うことができます。
これにより、企業の従業員は新しいアイデアを考え出したり、新しいプロジェクトを立ち上げたり、既存の製品やサービスを改善したりするなど、よりクリエイティブな業務に人員と時間を割くことができるようになるでしょう。
24時間体制でサービスが提供できる
生成AIは、人間が必要とする休息や休暇を必要とせず、一日中稼働することができます。これにより、企業は顧客に対して24時間体制でサービスを提供することが可能になります。
たとえば、カスタマーサポートの領域では、生成AIは顧客からの問い合わせに対応し、迅速なサポートを提供することが可能です。顧客はいつでも必要なサポートを受けることができ、企業は顧客満足度を向上させることができます。
新規事業に応用できる
生成AIの導入は、企業が新規事業を開始する際に大きな助力となります。個々の顧客の嗜好に合わせてパーソナライズされたコンテンツを生成することができます。これにより、企業はパーソナライズされたマーケティングキャンペーンを実施したり、個々の顧客に合わせた製品やサービスを提供したりすることが可能です。
また、新しい市場のトレンドを把握したり、新しいビジネスチャンスを見つけたりすることができます。
生成AIのデメリット5つ
生成AIは、業務の効率化から新規事業への応用など、多くのメリットと可能性を秘めていますが、同時に社会生活や仕事に大きな影響のあるデメリットも存在します。ここでは5つのデメリットに関して解説いたします。
コンテンツの品質が不安定
一番の問題はコンテンツの品質が安定しないことです。
一つは「ハルシネーション」と呼ばれる自称で、コンテンツを生成する際のプロセスが完全ではなく、AIが誤った情報を生成する可能性を持つという事です。
もう一つは生成AIの意思決定プロセスは複雑でブラックボックス的であることがあり、その説明が難しい場合があることです。AIのアルゴリズムがどのように動作し、どのように結果を生成するかを理解するのが困難なため、コンテンツの内容が不透明になる可能性を持ちます。
偏ったデータによる不適切な回答
学習データの偏りも大きな課題です。学習データモデルに用いるデータは偏りがないデータを抽出が必要なのですが、無意識に偏っているという事もあります。
例えば、地域による偏りや業種によって異なる公平性が必要となりますし、性別等複数の属性が絡む差別バイアスが発生する可能性があるでしょう。その結果、偏ったアルゴリズムバイアスが入ってしまいます。
プロンプトを介した攻撃
チャット機能を使って正常な利用であるかのように装い、開発者が意図しない悪意を持った挙動を誘発させるプロンプトインジェクションという手法です。対話型AIの脆弱性を見つけて攻撃されます。
基本的に個人情報やAIの根幹に関わる情報を外部に出ないよう設計されています。ですが、意図しない質問のアプローチで流出する可能性を秘めています。
最悪の場合、そのAIのソースコードや内部情報が流出するケースもあるでしょう。
学習データの著作権
生成AIの開発には学習元となるデータセットが用いられますが、このデータセットの著作権の問題が存在します。
著作権法で規定はなされていますが、必要と認められる限度を超える場合や、著作権者の利益を不当に害する場合は、AI開発が目的であっても著作物の利用は認められません。この線引きが難しくグレーな部分です。
実際ChatGPTを開発したOpen AIに対して、アメリカの作家がなどが「著作権で保護された自身の文章が許可なくAIの訓練に使用されている」と損害賠償を求める訴えを起こしています。
また、入力したデータも学習データとして利用するため、結果として自社データ資産が流出してしまうということも起きる可能性があります。
コンテンツの責任
生成AIが作成したコンテンツに対する責任問題は、その使用と普及が広がるにつれてますます重要になっています。
生成AIによって生み出されたコンテンツの責任は、一般的にはその使用者が負うとされています。ですが実際には誰が責任を負うのでしょう?少なくとも生成AIは作成されたコンテンツに責任は負ってくれません。
生成AIの意思決定プロセスは複雑でブラックボックス的であることもあり、責任の所在ははっきりさせておく必要があります。
なお、生成AIのメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→生成AIを使ってシステム開発をする方法やメリット、デメリットを徹底解説
生成AI導入の道のりと課題(問題点)・解決策
では、生成AIを社内業務に導入するにはどういった手順を踏んでいくことになるでしょうか。「生成AIを導入する。」と決めるにもどうしていいかは分からないでしょう。ここではその道のりと、起こりうる課題と対策について解説いたします。
1.調査・選定の課題
まずは、生成AI自身を理解することから始まります。そして、生成AIが社内業務のどの部分を効率化できるのか、どういった業務に使えるのかを調査することになります。
その際に判断すべきことは、「自社の業務課題をAIが解決できるのかどうか」です。課題を考えていくにつれて、その課題はAIで解決すべきことなのか?を掘り下げて追及していきましょう。
それによってどういった生成AIを選べばいいかも自然に見えてきます。
追及する中で課題となりやすいのが「生成AIに対するイメージのずれが大きいこと」です。
生成AIの導入検討時にやってしまいがちなことは以下の2つ。
- 生成AIを導入することを目的にしてしまうこと
- 生成AIを導入すれば、新しいイノベーションが起きると妄信すること
生成AIに対するイメージが人によってばらつきがあるため、上記のような考えを持つ人も少なくありません。生成AIを使って何ができるのか、業務課題の何を解決させたいのかはっきりさせるためにも、生成AIで出来ることを正確に把握することが大切です。
2.業務の改善とフロー変更の課題
調査の結果、生成AIを導入することが決まったら、次は「生成AIを利用したうえでの業務の流れ」について考えましょう。生成AIを導入すると、作業の効率化や人員のバランスなどが大きく変わります。
生成AIがあることを前提とした業務フローを構築して、効率化できる部分は効率化させていきましょう。
ここで起こりうる課題として、トラブルが起きた際の責任はどこへ行くのか?です。生成AIのデメリットの際にも触れましたが、生成AIは責任は取ってくれません。
3.導入・環境構築の課題
導入・環境構築の主な課題は以下の2点です。
- データの品質が不十分
- サイバー攻撃のリスク
AIの導入を決定した後の環境構築は、特にクラウド環境の整備が重要です。
クラウド環境は、スケーラビリティと柔軟性を提供し、大量のデータを処理し、AIモデルを訓練するのに必要な計算能力を提供します。
必要なリソース(ストレージ、計算能力、ネットワーク帯域など)を確保し、これらを最適に配置するためのインフラストラクチャを設計します。さらに、データの管理とセキュリティを確保するためのポリシーとプロトコルを設定することで適切に導入できるでしょう。
AIの性能は、使用するデータの品質に大きく依存します。不十分なデータ品質は、モデルの精度と信頼性を低下させ、ビジネス上の意思決定に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、AIの導入と運用は、当然サイバー攻撃のリスクを増大させる可能性があります。AIシステムは大量のデータを処理し、重要なビジネス上の意思決定を行うため、攻撃者にとって魅力的なターゲットとなりま4.運用の課題
生成AIの導入と環境構築が完了した後、実際に運用を行う段階では、AIシステムのパフォーマンスを監視し必要に応じて調整が必要となるでしょう。
また、新たなデータに対応するためにモデルを定期的に再訓練・アップデートしていくことも重要です。しかし、運用段階においても課題は生まれてくるものです。
これまでに行ったことのない業務となるため、最初は生成AIを適切に活用できる人材・ノウハウが不足していることでしょう。適切に活用できないと、苦労して導入した生成AIを十分に活用できず、最悪の場合、使う人がいなくなってしまうケースもあります。
生成AI導入課題の解決策
生成AI導入の課題について述べたところで、続いてどう解決していくのかについても詳しく解説していきます。
1.調査・選定の解決策
「生成AIに対するイメージのずれが大きい」ことの解決策は「生成AIで出来ることを正確に把握・理解する」です。生成AIに対するイメージのずれは、生成AIを導入する上で大きな障害になる可能性が高くなります。
生成AIは万能ではないため、出来ることを正確に把握・理解するようにしましょう。
2.業務の改善とフロー変更の課題
「トラブルが起きた際の責任はどこへ行くのか?」の解決策は、体制をしっかりと組むことです。トラブルが発生しても生成AIは責任を取ってくれません。
責任の所在や体制をきっちり組み込むためには、生成AIのガバナンス体制をしっかりと構築することが大切です。業務フローの中に責任の所在や管理体制まできっちりと組み込んでおくようにしましょう。
3.導入・環境構築の課題
導入・環境構築の主な課題は以下の2点でした。
- データの品質が不十分
- サイバー攻撃のリスク
それぞれの解決策を解説します。
【解決策①】データの修正や除去を行う
解決策この課題に対する対策として、まず、データの収集、処理、管理のプロセスを見直すことが重要です。
データクレンジングとデータ補完・重複する名寄せの処理の手法を導入し、欠損値や誤ったデータを修正または除去することが精度を出すために重要となります。
【解決策②】強固なセキュリティインフラストラクチャを構築する
解決策はこのリスクに対する対策として、強固なセキュリティインフラストラクチャを構築することが必要です。
プロンプトインジェクションに対しては、指示の上書きを無視したり、安全性を分析することで防げます。また、クラウドへの攻撃は、Azure OpenAI Serviceを使う等で対策を講じるのがおすすめです。取ることができるでしょう。
4.運用の課題
運用の課題では、生成AIに対する十分なスキルを持った人が少ないということでした。解決策としては、教育を行い生成AIスキルを身につける機会を設けることです。
生成AIを導入することでメリットも大きいですが、生成AIが引き起こすリスクにも気をつけなければなりません。
扱う人が生成AIの知識を身につける必要があります。そのためには、社員教育により社員一人一人が生成AIの理解度を深めスキルを積み重ねていくことが重要です。
また、組織全体がAIリテラシーを理解が足りないと、適切な生成AIの利用につながらないため、これについても学ぶことにより理解を深めていくようにしましょう。
生成AIの導入は適切な理解と課題を解決していくことが一番の近道
生成AIを企業で導入することは大きなメリットを生み、業務そのものの流れを変えていくことでしょう。
そこには当然生成AIのデメリットや導入過程での課題が発生してきます。
それらを適切に対策を取っていくことで、適切な生成AIの運用が行えるとともにイノベーションを生み出すことができます。しっかりと生成AIについて理解し、会社の業務効率化や新規事業への応用などイノベーションを起こしていきましょう!
生成系AIの業務活用なら!
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