人手不足の医療現場を救う生成AI!すでに始まっている活用事例と医療特化AIサービスの全体像を徹底解説

人手不足 医療現場 救 生成AI 始まっている 活用 事例 医療 特化 AI サービス 全体像 徹底 解説
押さえておきたいポイント
  • 退院サマリーなどの文書作成で業務が大幅に短縮
  • 診断の最終判断は人が行い、AIは支援に限定することが必要
  • ガイドラインを順守安全に運用する

近年、さまざまな業界で導入が進んでいる生成AIですが、医療現場でも少しずつ導入が進められています。

とくに、慢性的な人手不足に陥っている現状を打破する手段として注目されており、導入実験をおこなっている病院では、医師の書類作成業務を従来の1/3にまで短縮できたという結果も発表されました。※6

そこで今回は、生成AIを医療現場で活用する方法やすでに活用している病院の事例をご紹介します。

最後までお読みいただくと、生成AIの活用方法が理解できるため、いち早く取り入れて業務を効率化できるかもしれません。ぜひ最後までご覧ください。

\生成AIを活用して業務プロセスを自動化/

目次

医療現場で進む生成AIの活用

近年話題になっている生成AIですが、その導入は医療現場でも進んでいます。とくに、事務処理や簡易的な患者対応などで生成AIの利用が進んでおり、業務効率化が少しずつ実現しているのが現状です。

以下では、医療現場で使われている生成AIについて詳しく解説していきます。

生成AIは医療現場でどのように活用されているのか

生成AIは、医療現場で以下のような場面で活用されています。

  • 退院サマリーの自動生成
  • 画像や音声データのテキスト化
  • 医師・看護師の業務支援
  • 患者への説明文の自動作成

これらの導入により、作業効率の大幅な向上が実現しつつあり、患者の待ち時間短縮や診療数の増加、さらには医療機関の経営改善にもつながっています。

また、セキュアな環境で運用できるため、個人情報の安全性を確保したうえでの活用が可能です。

なお、人口老齢化や医療人口減少などにより、医療現場は慢性的な人手不足で悩まされています。このような課題を解決するのに生成AIの利用はピッタリなため、スムーズな医療の提供や医療現場の働き方改革が進むのも時間の問題といえるでしょう。

医療向け生成AIの特徴

医療向け生成AIは、大量の医療データ・医学論文・診療ガイドラインなどを学習し、正確な医療用語を取得しています。そのため、汎用的な生成AIと比べて、事実と異なる情報を生む「ハルシネーション」も起こりにくい仕組みです。

また、多くの医療向け生成AIは日本語の医療表現にも最適化されており、現場でそのまま活用できる実用性を備えています。

単なる情報生成にとどまらず、医師や看護師の業務を支援する「ツール」として機能する点が、汎用的なAIとの大きな違いです。

医療分野における生成AIのガイドライン・法令の最新動向

医療分野で生成AIを活用するうえで、最大の前提条件となるのがガイドラインと法令への対応です。日本では、生成AIの臨床利用を直接規制する包括的な法律はまだ整備されていません。

一方で、医療機関や研究機関が参照すべきガイドラインは急速に整備されつつある状況にあります。

そのため現時点では、「法律で一律に禁止・許可されている」という整理ではなく、複数のガイドラインを踏まえた慎重な運用判断が求められています。

医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)の生成AI利用ガイドライン

医療分野における生成AI活用の代表的な指針として挙げられるのが、医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)が公表している「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン」です。※1

本ガイドラインは2024年10月に初版が公表され、その後、内容を拡充した第2版が2025年7月に公開されました。第2版では、初版の基本的な考え方を踏襲しつつ、医療情報の取り扱いに関する注意点、著作権・プライバシーへの配慮事項、医療従事者が最終判断を担うことを前提とした役割分担がより明確に整理されています。

特に第2版では、「生成AIは意思決定を代替する存在ではなく、医療者を支援する補助的ツールである」という立場が明確に示されています。この点は、生成AIを診断や治療判断に直接用いることへの慎重姿勢を裏付ける重要なポイントと言えるでしょう。

厚生労働省による医療デジタルデータ利活用のガイドライン

もう一つ押さえておくべき指針が、厚生労働省が公表している「医療デジタルデータのAI研究開発等への利活用に係るガイドライン」およびQ&Aです。※2※3

このガイドラインは、生成AIそのものの利用方法を定めたものではありませんが、医療データをAIの研究・開発・検証に用いる際の留意点を体系的に整理しています。

医療機関にとって特に重要なのは、医療データを研究目的で二次利用する場合の考え方、仮名加工情報や匿名加工情報の取り扱い、共同研究や外部委託時の責任分界点のような観点です。

生成AI活用では、「どのデータを、どの環境で、誰が扱うのか」という設計が不可欠です。厚労省のガイドラインは、院内ルールや契約条件を整理する際の実務的な拠り所として位置づけられています。

ガイドラインは整備途上、法整備は発展途上という現状

以上を踏まえると、日本における医療分野の生成AI活用は、「ガイドラインは整備されつつあるが、法整備はまだ発展途上」という段階にあります。

そのため医療機関では、ガイドラインを参照しながら用途を限定したり、診断・治療の最終判断は必ず人が行ったりすることが重要です。

生成AIを「使うか使わないか」ではなく、「どこまでをAIに任せ、どこからを人が担うか」を明確にすることが、今後ますます重要になっていくでしょう。

医療現場における生成AIのメリット・用途

医療現場における生成AIの用途には、以下の4つがあります。

  • 問診の自動化
  • 受付対応の自動化
  • 文書の要約・生成
  • 診療報酬請求業務の効率化と省力化
  • 情報収集の効率化
  • 新人へのノウハウ共有
  • データの抽出・構造化

これらの7つを効率よくおこなえるのが生成AIの大きなメリットです。

以下で、それぞれの用途別に生成AIを利用するメリットを紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

用途1.問診の自動化

医療現場では、生成AIを活用した問診の自動化が進められています。

当記事の医療現場での生成AI活用事例でもご紹介しているのですが、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所が生成AIを活用したプラットフォームの開発しているのがその一例です。※4

同社が開発しているプラットフォームには、生成AIを活用して問診を自動化する内容も含まれているので、患者に対する問診の効率化が進むことでしょう。

問診を一部生成AIに代替できれば、患者に耳を傾ける余裕を確保することにつながるのが大きなメリットです。

用途2.受付対応の自動化

生成AIを活用すれば、受付対応の自動化も可能です。患者への案内や次回予約などの受付対応をAIアバターが代わりにおこなってくれるので、普段受付に配置している人員を別の業務に回せます。

また、画像や動画を使ってわかりやすく解説することもできるため、むしろ人間より丁寧でわかりやすいと感じることもあるかもしれません。

用途3.文書の要約・生成

文書の要約・生成は、生成AIの得意分野です。医療現場においては、以下のような文書の作成に役立ちます。

  • 紹介状・紹介返書
  • 診断書
  • 症状詳記
  • 診療記録
  • 退院サマリー

とくに、医療現場は診療記録の入力や文書作成などの業務に忙殺されがちで、患者と向き合う時間が十分に取れていません。

単純な書類作成や要約などを生成AIに任せれば、医師やその他のスタッフはほかの重要な業務に集中できるので、医療スタッフ・患者の双方にメリットがあります。

用途4.診療報酬請求業務の効率化と省力化

診療報酬の算定業務は、膨大な医療データの確認や複雑なルールの適用が求められるため、医療機関にとって大きな負担となっています。しかし、生成AIを活用すれば、カルテ情報の整理やコーディングの自動化が可能になるため、手作業による確認や入力作業を大幅に削減可能です。

これにより、請求業務の迅速化と人的コストの削減が実現し、医療従事者はより本質的な業務に集中できるようになります。また、ミスの発生も抑えられるため、正確性の向上と収益の安定化にもつながります。

用途5.情報収集の効率化

生成AIを活用することで、論文やガイドライン、診療データなどから必要な情報を瞬時に抽出・整理でき、情報収集の負担が大幅に軽減されます。

また、専門用語に対応したAIによる検索支援や要約機能も存在するため、膨大な資料を一つひとつ確認する手間を省けるのも大きなメリットです。

最終的には、臨床現場での意思決定がスムーズになり、患者対応の質が向上することにもつながります。

用途6.新人へのノウハウ共有

生成AIは、新人へのノウハウ共有をはじめとした教育目的でも活用できます。

事前に多くの情報を学習できる生成AIであれば、社内や業界で必要な知識を溜め込んでおけるので、必要なノウハウを最適なタイミングで共有できるというわけです。

なお、新人の教育は必要な情報を資料としてまとめたり、疑問に都度答えたりする必要がありますが、仕事で忙しい医療スタッフがまとまった時間を用意するのは簡単ではありません

新人側も忙しい先輩に声をかけるのは躊躇しやすいので、こういった課題を解決できるのが大きなメリットです。

用途7.データの抽出・構造化

生成AIの文脈を理解する能力は、データの抽出・構造化にも応用が可能です。

医療現場には、問診票やCT画像等、整理整頓の困難なデータ(非構造化データ)が多数存在します。そこで活躍するのがマルチモーダル生成AIで、こちらなら以下のようなことが可能です。

  • 画像データへの言語化・アノテーション
  • 自由記述式のデータの数値化
  • データの欠損の補完

生成AIを活用すれば、院内に眠っているデータの山を使い、データドリブンな医療が実現できるでしょう。

なお、教育現場における生成AIの利用法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

医療向け生成AIサービス・LLMの種類と選び方

医療分野で活用されている生成AIは、「生成AI」という一語で語られがちですが、用途・設計思想・リスク許容度によって性質は大きく異なります。導入検討を進める際は、まずサービスやLLMをいくつかのタイプに整理し、自院の業務やガバナンス要件と照らし合わせることが重要です。

医療向け生成AIの4つの分類

現在、医療分野で利用されている生成AIサービスやLLMは、概ね以下の4つに分類できます。

電子カルテ一体型

電子カルテ一体型の生成AIは、医療現場で最も導入が進んでいるタイプの一つです。退院サマリーや看護サマリーの自動作成、診療記録の下書き生成など、医師・看護師の記録業務負荷を直接的に軽減できる点が評価されています。

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強み・院内データを前提に設計されている
・操作対象が明確(文書作成など)
・診断や治療判断を直接担わない
注意点・電子カルテベンダーへの依存度が高くなる
・カスタマイズの自由度は限定的
・他システムとの横断的連携が難しい場合がある
電子カルテ一体型サービスの強みと注意点

汎用LLM+医療カスタム

汎用LLMを医療用途に活用するアプローチは、柔軟性の高さが最大の特徴です。

Amazon BedrockやAzure OpenAIなどを利用し、院内マニュアルやガイドラインをRAGで参照させることで、医療現場に即した回答生成が可能になります。その一方で、運用面の設計責任が医療機関側に残る点には注意が必要です。

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強み・文書作成
・院内Q&A
・研究支援
・教育用途
注意点・データの取り扱い設計
・ログ管理
・ハルシネーション対策
・最終確認フロー
汎用LLM+医療カスタム(RAG含む)の強みと注意点

医師向け臨床支援アプリ

診療ガイドラインの検索、鑑別疾患の整理、医学情報の要約など、医師の意思決定を支援する用途に特化したアプリケーション。診断そのものを自動化するのではなく、情報整理や知識補助を主目的としています。

医療特化LLM・エージェント

医療特化型のLLMやエージェントも、ここ数年で急速に進展しています。

代表例としては、Googleが提供するMedLMや、非診断領域に特化した患者対応エージェントを展開するHippocratic AIが挙げられます。また国内では、研究用途を中心に日本語医療文書で継続学習したSIP-jmed-llmシリーズなども登場しています。これらは高度な専門性を持つ一方で、実臨床での単独利用は想定されていないケースが多い点を理解しておく必要があります。

用途別に見る生成AIサービス選定の考え方

医療向け生成AIを選定する際は、「どのAIが優れているか」ではなく、どの場面で何を使うかが大切です。

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分類おすすめの活用例
電子カルテ一体型退院サマリーや看護記録の作成
汎用LLM+RAG院内文書の要約や検索
医師向け臨床支援アプリ診療ガイドラインの確認や情報整理
非診断型エージェント患者フォローや説明業務
おすすめの使い方

いずれの場合も、生成AIは医療者の判断を代替するものではなく、業務を補助する存在であるという前提を崩さないことが、適切な選定につながります。

医療系の生成AIサービス8選

ここでは、医療系の生成AIサービスを8つご紹介します。

今回紹介する生成AIサービスは以下の8つです。

  • MegaOak/iS
  • Cotomi
  • HOKUTO
  • Hippocratic AI
  • Insilico Medicine
  • GaiXer(ガイザー)
  • Amazon Bedrock
  • Med-PaLM

気になる性能や料金は以下で解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

MegaOak/iS

参考:https://jpn.nec.com/press/202403/20240318_01.html

「MegaOak/iS(メガオーク アイエス)」は、NECが販売している国内初の生成AI搭載型電子カルテシステムです。

大規模言語モデル(LLM)が電子カルテに記載の診療情報を取り込んで、診療情報提供書(紹介状)と退院サマリに使用できる文章案を自動生成してくれます。

今後は、クラウドセキュア接続サービスを介して、「MegaOak/iS」以外の電子カルテシステムを導入している医療機関でも利用できる計画を立てているとのことです。※5

Cotomi

参考:https://jpn.nec.com/government/wp/02.html

CotomiはNECが開発した大規模言語モデル(LLM)です。日本語性能の高さと軽量さを両立しており、30万字までの長文処理ができます。

医療文書作成や外来予約の自動化など、さまざまな業務に活かせるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

HOKUTO

参考:https://hokuto.app/

HOKUTOは、最新の医学情報を入手できる医師向けの臨床支援アプリです。アプリなのでスマホの簡単操作で手軽に情報を検索できる点がメリットとして挙げられます。

具体的には、薬剤情報や専門医監修の診療マニュアル等を閲覧できるのが特徴。医療計算ツールも備わっているので、抗菌薬の腎機能投与量計算などができて便利です。

Hippocratic AI

参考:https://www.hippocraticai.com/

Hippocratic AIは、医療業界に特化した大規模言語モデル(LLM)です。患者対応を中心としたヘルスケアに特化しており、さまざまな資格に対する知識を備えています。なお、Hippocratic AIは、114の試験・資格のうち105の資格でGPT-4の回答精度を上回ったとのこと。

また、特にHippocratic AIは、診断・処方は行わない、患者への説明やフォローアップに特化というポリシーを明確に打ち出しており、安全性を重視した設計が特徴です。医療用に特化した言語モデルを利用したい方は、ぜひ試しに使ってみてください。

Insilico Medicine

参考:https://insilico.com/

Insilico Medicineは同名の会社が開発した、創薬に特化している生成AIです。マルチオミクスターゲットの発見と深層生物学解析エンジンの有効化により、新しいリード分子を見つけられます。

また、臨床試験の成功率を予測し、試験設計の弱点も認織できるとのこと。薬の開発を効率的におこないたい方は導入を検討してみてください。

GaiXer(ガイザー)

参考:https://www.gaixer.com/ja-jp/

GaiXer(ガイザー)は、株式会社FIXERと順天堂大学が共同開発した、診療報酬算定を支援する医療向け生成AIサービスです。電子カルテに記録された診療情報をもとに、適切な診療報酬コードをAIが自動で算出する仕組みを採用しています。※7

これにより、病院全体で数日かかっていた算定業務が、わずか数分で完了可能とのこと。医療現場における人手不足や業務負荷の軽減を目指した技術開発として注目されています。

なお、本サービスは、Microsoft Azure上で構築されたセキュアなクラウド環境で動作しており、医療データの安全な取り扱いにも配慮。複雑な診療報酬制度への対応や、ヒューマンエラーの削減にも貢献し、医療機関の業務効率化と経営改善を後押ししています。

Amazon Bedrock

参考:https://aws.amazon.com/jp/bedrock/

Amazon Bedrockは、AWSが提供するクラウドベースの生成AIプラットフォームです。医療分野では、電子カルテの内容を基にした医療コーディングや診療報酬請求業務の自動化に活用できます。

なお、医療情報は厳格なセキュリティ管理が求められます。Amazon BedrockはAWSの高度なセキュリティ基盤上に構築されているため、個人情報保護やコンプライアンスの遵守の観点からも安心です。

Med-PaLM

参考:https://sites.research.google/med-palm/

Med-PaLMとその後継Med-PaLM 2 は、Googleが開発した医療特化のテキスト生成AI(大規模言語モデル / LLM)です。こちらは医療関連の質問に対する回答提供が可能で、以下のとおり医師に匹敵する回答品質を実現しています。

  • Med-PaLM
    • 研究ベンチマークMedQAでの正答率は67.6%
    • アメリカの医師免許試験(USMLE)の合格点(60%以上)を史上初めて突破
  • Med-PaLM 2
    • 研究ベンチマークMedQAでの正答率は86.5%

このMed-PaLMシリーズは、主に消費者・患者向けの医療サービスで活躍が期待できます。

医療現場での生成AI活用事例7選

医療現場での生成AI活用事例として、ここでは7つの事例を紹介します。

  • 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
  • 恵寿総合病院
  • 藤田医科大学
  • 新古賀病院
  • 那須赤十字病院
  • 関西医科大学
  • メイヨークリニック

以下で、それぞれの機関の生成AI活用事例を紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所は、日本アイ・ビー・エム株式会社・地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターと協力して、AIを活用したリアルタイム創薬プラットフォーム事業を進めています。※4

患者様への説明・同意の取得・書類作成支援などで生成AIを活用し、業務効率化を図っていくとのことです。

このシステムがうまく機能すると、医薬品開発の効率化と医師の働き方改革が進むとのことなので、今後の発表に期待しましょう。

恵寿総合病院

恵比寿総合病院は、Ubie株式会社と協力して、生成AIを活用した医師の働き方改革の実証実験をおこなっています。※7

具体的には、大規模言語モデル(LLM)を使用して、医師・看護師・医療事務スタッフがおこなう事務作業に活用しているとのことです。

とくに、医師の退院時サマリー作成業務では、業務時間を最大1/3に削減できているとのこと。日々時間を取られやすい書類の作成業務こそ、生成AIの出番といえそうですね!

藤田医科大学

国内でも最大規模の病床数を持つ藤田医科大学は、医師の業務効率化を目的にAmazon Bedrockを活用したパイロットプロジェクトを実施しました。※8

このプロジェクトでは、患者の入院中の治療歴や診断内容を記録する「退院サマリー」の自動生成に生成AIを導入しています。結果として、退院サマリー作成にかかる時間を最大90%短縮し、患者一人あたり約1分で作成可能になったとのことです。

新古賀病院

福岡県久留米市にある新古賀病院では、生成AIを活用して医療事務の業務効率化に取り組んでいます。とくに注力しているのは、退院時サマリーや診療情報提供書などの医療文書の作成支援です。

2024年5月からは「ユビー生成AI」を導入し、医療文書作成業務の大幅な効率化を実現。導入した診療科全体で医師の業務時間を月30時間以上(約20%)削減することに成功しました。創出された時間は患者診療に充てられ、医療サービスの質向上と働き方改革の両立を実現しています。※9

さらに、電子カルテとの連携による実証実験では、看護添書の作成時間を最大70%削減できる見込みが示されており、今後も現場の負担軽減と医療の質の向上が期待されています。

那須赤十字病院

栃木県大田原市にある那須赤十字病院では、患者が退院する際に作成する記録書の作成に生成AIを導入し、医師の業務効率化と患者満足度の向上を図っています。※10

この取り組みは、医師が入力した診療内容をもとに、AIが記録書の下書きを自動生成する仕組みです。現在は事務負担の軽減を目的に生成AIを活用していますが、今後はより幅広い業務に生成AIの活用を広げていく姿勢を示しています。

関西医科大学

関西医科大学は株式会社テムザックと共同で、生成AI搭載の医療面接トレーニング用ヒューマノイド「医療面接ロボット」を開発しています。

こちらは本物の人間のような外観と生成AIによる自然な受け答えが特徴で、医療現場での対応(医療面接)が訓練可能です。※11

メイヨークリニック

全米一の病院のひとつであるメイヨークリニック(ミネソタ州チェスター)は、2024年1月よりAI企業・セレブラスと共同で、医療向けマルチモーダル生成AIの開発に着手中です。このモデルは数百万件の臨床データと十万件以上の患者ゲノムデータから構築される予定で、治療法決定の最適化・効率化を目指しています。※12

なお、ChatGPTを医療で活用した事例が詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

医療現場における生成AIの注意点やデメリット

医療現場で生成AIを利用する際は、以下の6項目に注意が必要です。

  • 誤診のリスク
  • 情報漏えいのリスク
  • 導入・運用コスト
  • IT人材の不足
  • 学習データの偏り
  • 回答の責任の所在

とくに、誤診や情報漏洩は医療機関としての信頼を失いかねないので注意してください。

以下で、それぞれの注意点を詳しくみていきましょう。

誤診のリスク

生成AIの精度はまだ完全ではないため、診察で活用すると誤診のリスクがあります。実際に、小児科学の専門誌「JAMA Pediatrics」が小児科の病状診断でChatGPT-3.5を使用し、その結果を論文で発表しました。※5

実験の結果、生成AIの正答率はわずか17%だったとのことです。100件の症例を生成AIに診断させたものの、正確な回答を得られたのは17件のみだったと論文に記載されています。

このように、生成AIはまだ誤診のリスクがあるため、診察で本格運用するのは慎重に判断すべきといえるでしょう。

情報漏えいのリスク

生成AIには情報漏洩のリスクがあります。AIツールのなかには、トレーニングやツールの改善目的で入力した内容を保存しているものもあるため、安全性を確認できていないツールで安易に企業や顧客情報を入力するのは危険です。

もし、情報漏洩が起きれば、医療機関としての信頼を失うことになるため、生成AIの利用には十分注意しましょう。

導入・運用コスト

生成AIには多くのコストがかかります。導入時に多額の費用がかかるのはもちろん、システムを維持するために、月額などで一定の運用コストが必要です。

とくに、医療現場では高度なAIツールを導入することもあるため、その費用は一般的なAIツールの比ではありません

せっかく導入したのに使わなくなったということがないよう、将来のことや費用対効果も考えたうえで導入を検討しましょう。

IT人材の不足

生成AIを導入しても、それを使いこなせるIT人材がいなければ意味がありません。生成AIの活用には専門的な知識や技術が求められますが、世界的にみてもまだまだIT人材が不足している状況です。

もし、IT人材の不足が原因で導入を躊躇しているなら、IT専門のコンサル会社などに使い方をレクチャーしてもらうのも1つの手です。

当社も生成AIに関する悩み・相談ごとを数多く引き受けてきた実績があるので、お悩みの方はぜひご相談ください。

学習データの偏り

生成AIは通常、本格的にリリースされる前や運用中に多くの学習データを取り込んでいます。しかし、学習データ自体に誤りがあることも珍しくないため、出力された情報を鵜呑みにするのは危険です。

例えば、患者の質問を生成AIに回答させた場合、間違った情報を答えてしまう可能性もあります。医療現場では、1つのミスが命に関わる事態に発展しかねないため、生成AIの取り扱いには十分注意してください。

回答の責任の所在

生成AIの回答によって医療機関がなにかしらの損失を受けた場合でも、その回答の責任の所在は生成AIを利用した医療機関側にあります

つまり、AIツールの製造元は基本的に責任をとってくれないため、利用者側が十分に注意しなければなりません。

生成AIで出力した情報にはファクトチェックを入れるなど、利用者側で明確なルールを設けて運用しましょう。

なお、生成AIの企業利用・開発のリスクについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

医療現場からよくある質問(FAQ)

生成AIを診断に使ってもよいのか

現時点では、生成AIを診断や治療方針の最終判断に用いることは推奨されていません。研究では、汎用的な生成AIが医学的に不十分、あるいは誤った回答を出すケースが確認されています。特に小児診療などでは、完全に正しい診断に一致した割合が低いという報告もあります。

診断前後の周辺業務を支援する用途に限定して活用するのが一般的です。診断や治療の意思決定は、あくまで医師が担うという役割分担が前提となります。

どの医療データまで生成AIに入力してよいのか

入力可能なデータ範囲は、利用する生成AIの環境と契約条件によって大きく異なります。公開型のチャットサービスでは、入力した情報が学習やログ保存に使われる可能性があるため、患者個人を特定できる情報の入力は避けるべきとされています。

一方、医療向けに設計された環境や、クラウド上でもデータが学習に再利用されない、保存期間や管理方法が明示されている、といった条件を満たす場合は、院内ルールに基づいて利用範囲を定めることが可能です。

重要なのは、どのデータをどの環境で誰が確認するかを事前に明確にし、ガイドラインや院内規程と整合させることです。

オンプレミスとクラウド、どちらが安全なのか

「オンプレミスの方が安全」「クラウドは危険」と一概に言えるわけではありません。現在は、医療情報向けのセキュリティ認証や暗号化、アクセス制御を備えたクラウドサービスも増えています。オンプレミスはデータを院内で完結できるという安心感がある一方、運用・保守の負担が大きい最新のセキュリティ対策を継続する必要がある、といった課題があります。

クラウドは拡張性や更新性に優れる、PoCや段階導入がしやすい反面、契約内容やデータ管理条件の精査が不可欠です。

安全性は「場所」ではなく、設計と運用の透明性で判断することが重要です。

PoCはどのくらいの規模から始めるべきか

多くの医療機関では、1診療科や1業務に限定した小規模PoCから始めています。例えば、特定診療科での退院サマリー作成、一部の看護記録の下書き生成など、対象を絞ることでリスクを抑えながら効果検証が可能です。

PoCでは、作業時間がどれだけ短縮されたか、医療者の負担がどう変わったか、修正や確認にどれだけ手間がかかったか、といった定量・定性の両面で評価することが重要です。

いきなり全院展開を目指すのではなく、検証→改善→拡大という段階的な進め方が現実的です。

医師・看護師の業務はどのように変わるのか

生成AIの導入によって、医師や看護師の役割がAIに置き換わるわけではありません。むしろ多くの事例では、記録作成、事務的な文章作成、情報整理といった時間を取られていた業務が軽減され、その分、患者対応や判断に集中できるようになったと報告されています。

一方で、AI出力の確認、修正、最終判断といった新たな役割も生まれます。生成AIは業務を「減らす」存在ではなく、業務の質と配分を変えるツールとして位置づけることが重要です。

生成AIを医療現場で導入してみよう

生成AIは、医療スタッフの減少や人口老齢化などの影響で、慢性的な人手不足に陥っている医療現場の救世主として期待されています。

具体的には、以下4つの業務を効率化可能です。

  • 問診の自動化
  • 受付対応の自動化
  • 文書の要約・生成
  • 新人へのノウハウ共有

とくに書類作成や軽い受け答えなど、単純な業務における生成AIの有用性は高く、すでにいくつかの病院で導入の実験がおこなわれています。

ただし、生成AIは便利な反面、以下のようなリスクもあるので注意してください。

  • 誤診のリスク
  • 情報漏えいのリスク
  • 導入・運用コスト
  • IT人材の不足
  • 学習データの偏り
  • 回答の責任の所在

なお、本記事では、医療現場に特化した生成AIとして以下をご紹介しました。

  • MegaOak/iS
  • Cotomi
  • HOKUTO
  • Hippocratic AI
  • Insilico Medicine

まずは比較的取り組みやすい、大規模言語モデル(LLM)による文書作成の自動化から始めてみてはいかがでしょうか

WEELが“失敗しないAI導入”を伴走します。

最後に

いかがだったでしょうか?

業務効率化・人手不足解消・収益安定化まで、医療現場における生成AIの導入は経営課題の解決にも直結します。今が取り入れどきです。

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tamura

監修者田村 洋樹

株式会社WEELの代表取締役として、AI導入支援や生成AIを活用した業務改革を中心に、アドバイザリー・プロジェクトマネジメント・講演活動など多面的な立場で企業を支援している。

これまでに累計25社以上のAIアドバイザリーを担当し、企業向けセミナーや大学講義を通じて、のべ10,000人を超える受講者に対して実践的な知見を提供。上場企業や国立大学などでの登壇実績も多く、日本HP主催「HP Future Ready AI Conference 2024」や、インテル主催「Intel Connection Japan 2024」など、業界を代表するカンファレンスにも登壇している。

投稿者

  • WEEL Media部

    株式会社WEELが運営する生成系AI関連メディア「生成AI Media」は、AIの専門家によるWebメディアです。 AIに特化した編集部がAIの活用方法、導入事例、ニュース、トレンド情報を発信しています。

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