レコメンドAIとは?顧客の行動パターンを解析してくれるAIを徹底解説

みなさま、レコメンドAIを活用して売上を伸ばす企業が増えてきているのを知っていますか?
ビジネスでは、顧客一人ひとりに合った提案が求められます。レコメンドAIは大量のデータから利用者の行動や考えをリアルタイムで解析し、最適な商品やサービスを自動で提案してくれます。
この記事では、レコメンドAIの概要、導入メリット、具体的な事例などを幅広くご紹介。最後までお読みいただくことで、レコメンドAIの仕組みや活用方法を理解することができ、売上拡大やマーケティングの効率化にもつながるでしょう!
「レコメンドAI」とは?

レコメンドAIとは、大量の顧客データを基に、考え方や行動パターンを解析し最適な商品やサービスの提案を自動的に行うシステムです。ユーザーの過去の購入履歴や閲覧データをリアルタイムで分析。関連性が高い商品やサービスを紹介できます。
さらに、画像解析やディープラーニングも一緒に活用すれば、テキストや画像からも顧客の興味・関心を分析可能です。そうすることで、お客様のニーズをより正確に知ることができます。
なお、生成AIの学習方法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

レコメンドAIのメリット
レコメンドAIを活用すると、顧客満足度を上げるための自動提案だけでなく、マーケティング活動の効率化にも役立ちます。主なメリットとしては以下の3つです。
①顧客体験(UX)の向上
ユーザーの過去の購買履歴、閲覧行動、さらにはソーシャルメディア等のデータをリアルタイムで解析することにより、ユーザーごとの最適な提案ができます。
実際、多くの企業において、ユーザーがより興味を持つようになっているのが確認され、顧客満足度の改善に欠かせない存在となっているようです。※1※2
②マーケティングの効率化
市場環境が急速に変化する中、レコメンドAIは膨大なデータを手早く処理し、マーケティング活動を効率化できます。
キャンペーンの効果測定・広告予算の最適配分・リアルタイムな戦略の調整ができるようになることで、広告投資のROIが上がり、収益を増やす手助けとなるでしょう。
③多言語対応
グローバル市場への展開を目指す企業にとって、言語や文化の壁がユーザー体験を左右し、サービスの受け入れやすさに大きく影響するため、多言語対応は必要です。
レコメンドAIは、ユーザーごとの言語や生活習慣、嗜好に応じてコンテンツや提案内容を柔軟に最適化できるため、各国のユーザーに寄り添った魅力的なサービスを提供できます。
結果、各国のニーズに合わせたサービス展開ができるようになり、海外展開のハードルを下げることにもつながります。
レコメンドAIのデメリット
マーケティング活動の効率化などのメリットがある一方、レコメンドAIにはデメリットも存在します。主なデメリットとしては以下の3つです。
①コールドスタート問題(初期の精度低下)
システム導入初期は十分な学習データがまだ蓄積されていないため、レコメンド機能の精度が低くなる「コールドスタート問題」が起きることがあります。
この段階では、ユーザーに対して最適な提案が行いづらく、サービスに影響が出るおそれがあるため、どのようにデータを貯めるかを事前に考えておくことが大切です。
②プライバシー・透明性の問題
個人情報保護法やGDPR等の規約を守らなければならないため、ユーザーの個人情報管理に対して配慮が求められます。
対策としては、データの利用目的や取得方法、保存期間を明確にし、ユーザーに対して透明性を確保する体制を整えることです。
③レコメンド内容の偏り
アルゴリズムの設計によって、特定の好みや傾向が過剰に強調されることにより、ユーザーに表示されるレコメンド内容が偏るかもしれません。
それにより、様々な情報を見る機会を減らし、ユーザーの意思決定に不適切な影響を及ぼす恐れがあるため、企業としては定期的なアルゴリズムの見直しが必要です。
また、データの偏りを最小限に抑えるための検証プロセスを運用に含めるのも重要な対策とされています。
レコメンドAIに使用されるアルゴリズムの種類

レコメンドAIは、さまざまなアルゴリズムを組み合わせることで、正確かつ柔軟な提案ができるようになります。各手法にはそれぞれ特徴があり、ユーザーのニーズに合わせた最適な組み合わせが必要です。
ルールベースレコメンド
ルールベースレコメンドは、あらかじめ定めた条件や規則に基づいてユーザーに提案を行う手法です。簡単に言うと、単純な条件付けによるレコメンドですね。この方式は作るのが簡単で、迅速かつ安定した結果が得られるというメリットがあります。
しかし、ユーザーの利用動向や市場の変動に対応するには限界があるため、ルールベース単独での運用では、成果が得られないかもしれません。そのため、他の手法との併用が不可欠となるでしょう。
協調フィルタリング
協調フィルタリングは、過去のデータを基に、似た特徴を持つユーザー同士の関連性を抽出して最適な提案を行う手法です。
協調フィルタリングには、大きく分けて二つあります。
- ユーザーベース協調フィルタリング
サービスを使用しているユーザーに似た行動をしている他のユーザーを見つけ、そのユーザーたちが高評価をしている商品・サービスをレコメンドする手法。簡単にいうと、似てる人たちが高評価したものを勧める手法です。 - アイテムベース協調フィルタリング
特定の商品サービスを購入・閲覧したユーザーが他に購入・閲覧した商品サービスを分析し、類似商品・サービスをレコメンドする手法。要するに、ユーザーが買ったり、見たりしたものに類似するものを勧める手法です。
ユーザーベースおよびアイテムベース両方の手法を用いることで、各ユーザーにパーソナライズされたレコメンドができるようになります。
しかし、大量のデータ処理が必要となるため、システムにかかる負荷が大きくなるという課題もあります。対応するには、パフォーマンスの最適化や、適切なデータ管理体制の整備が不可欠です。
コンテンツベースフィルタリング
コンテンツベースフィルタリングは、各商品の属性や特徴に着目し、ユーザーの過去の選択履歴と照合することで、類似性の高い商品・サービスを推薦する手法です。
明確な目的を持つユーザーに対しては効果的な提案ができますが、新商品や未知の商品・サービスへの対応が難しい点があります。ニーズの多様化へ対応するために、補完的な手法との併用や、継続的なアルゴリズムの改良方法が考えられます。
知識ベースフィルタリング
知識ベースフィルタリングは、専門家が事前に定義したルールや経験・知識を活用し、推論エンジンを用いてユーザーに対する提案を導き出す手法です。
この方式は、複雑な意思決定に対応できる強みがあります。しかし、システムの構築およびその後の維持管理のコストが高いため、十分なリソースの確保する必要があります。
ハイブリッドレコメンデーションシステム
ハイブリッドレコメンデーションシステムは、複数のアルゴリズムを使用することにより、各手法の長所を活かしながら短所を補完して、よりAIレコメンドの精度を高める手法です。
単独のアルゴリズムでは対応しきれないユーザーのニーズに対して、統合的なアプローチをできるのが大きなメリットとなります。しかし、レコメンドシステム全体の設計や運用が複雑化するため、企業内での運用ルールの明確化が不可欠です。
画像・音声解析レコメンド
画像・音声解析レコメンドは、画像や音声などの非構造化データを対象に解析を行い、視覚や聴覚情報に基づいた新たなユーザー体験をさせる手法です。
近年のディープラーニング技術の急速な進展により、従来のテキストデータに依存しないパターンが認識できるようになっています。しかし、解析精度の向上と高負荷な処理の最適化が求められるため、継続的な技術の見直しとシステム改善に努める必要があるでしょう。
クロスドメインレコメンド
クロスドメインレコメンドは、異なる業種やカテゴリに属する複数のデータソースを統合し、横断的な視点からユーザーへ提案を行う手法です。
各ドメイン間で異なるデータを効果的に融合することで、新たな価値を作り出したり、ユーザーの潜在ニーズの発見ができます。しかし、データの整合性の確保や統合プロセスにおける技術的問題があるため、慎重な設計と運用体制の構築が重要です。
Factorization Machine(FM)
Factorization Machine(FM)は、特徴量の相互作用を効率的に解析し、ユーザーと商品・サービス間の潜在的な関係性を抽出する手法です。
特徴量とは、予測モデルやレコメンドシステムに入力される個々のデータ項目のこと。例えば、ユーザーの場合は年齢・性別・購買履歴・興味関心など、商品・サービスの場合はカテゴリ・価格・評価などが該当します。
多種多様なデータソースから有用な特徴を導き出すことで高精度なレコメンドができるようになります。しかし、モデルの複雑性管理やパラメータの最適な調整が必要とされ、定期的な評価と改善を継続することが運用上の大きな問題です。
GNN(Graph Neural Network)
GNN(Graph Neural Network)は、グラフ構造で表現されるデータにおけるノード間の複雑な相互作用を効率的に解析し、各ノードの特徴を抽出する手法です。
グラフ構造とは、ノードとエッジで表されるデータ構造のことです。GNNはグラフ構造をもとにして、ユーザーと商品・サービス間の隠れたパターンや関係性を学習します。
この手法ははレコメンドシステムのユーザーと商品・サービス間の関係性を学習するのに優れています。しかし、計算コストやモデルの拡張性、過度の平滑化(オーバースムージング)など、モデルが複雑にならないかの管理やパラメータ調整に関する、定期的な評価の見直しを行うことが重要です。
なお、生成AI向けデータセットについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

レコメンドAIの国内企業での活用事例8選
多くの業界でレコメンドAIの導入が進んでおり、具体的な成果が報告されています。実際の活用事例をご紹介します。
事例①トライアルホールディングス

リテールDXを推進するトライアルホールディングスでは、「スマートショッピングカート」にルールベースと協調フィルタリングを組み合わせたハイブリッドレコメンデーションシステムを導入しています。※3
ユーザーが商品をスキャンすると、過去の購買傾向や店舗状況に応じた最適な商品・サービスやクーポンをリアルタイムに提示でき、顧客体験の向上と販売促進、および店舗運営の効率化が実現しました。
事例②AVA Travel

旅行代理店のAVA Travelでは、協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングを組み合わせたハイブリッドレコメンデーションエンジンを作成しています。※4
レコメンドエンジンの提供先では、まだ具体的な旅行プランの決まっていない検討ユーザーに対して瞬時にお客様に合ったおすすめプランを提案することで、顧客満足度の向上につながりました。
事例③エノテカ株式会社

食品・飲料分野のサービスを展開するエノテカ株式会社では、主にコンテンツベースフィルタリングを活用した独自のレコメンドシステムを導入しサイト内の回遊性を高めています。※1
導入したことで、ユーザーの購買行動や興味関心を詳細に分析し、各商品の属性との類似性から個々に最適な商品提案を行うことができるようになりました。
結果、レコメンドによるコンバージョン数が前年と比較して270%、レコメンド経由の売上が300%向上するという成果を残してます。
事例④EXest株式会社

外国人旅行者に旅行サービスを展開するEXest株式会社では、Fujitsuとの協業を通じ、協調フィルタリングとルールベース手法を組み合わせたレコメンドAIの導入効果や性能を検証します。※5
導入することで外国人旅行者の購買行動や興味関心をリアルタイムで収集・統合し、解析した情報で最適な商品提案を行えるようになるとのことです。
また、AIによるアクティビティプランのレコメンドだけではなく、旅行全体のプラン内容の充実を図り、満足度の高いサービスを目指します。
事例⑤日本旅行×ジャスミー

旅が豊かになる情報を提供する日本旅行×ジャスミーが、協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングを組み合わせたハイブリッドレコメンデーションシステムを活用。※6
このシステムにより、パーソナライズされた旅行プランをリアルタイムで表示することができるようになりました。ユーザーは旅前の情報収集がより効率的になるだけでなく、趣味嗜好に合致しつつ目にしたことがなかった様な情報がレコメンドされるようになっています。
事例⑥横浜銀行

地域密着型の金融サービスの横浜銀行では、BrainPad社との協業により、協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングを組み合わせたハイブリッドレコメンデーションシステムを活用。HPのリニューアルを行い、ログインページのPV数を13.7%向上させています。※2 ※7
顧客の取引履歴や行動データを精密に解析し、お客様に合った金融商品を提案することで、関連商品の販売数増加や顧客満足度があがり、業務効率の改善にもつながりました。結果、地域金融の競争力強化に成功したようです。
事例⑦シンクロライフ

デジタル技術を駆使し新たな価値創出を目指すシンクロライフでは、機械学習済みの協調フィルタリングを活用したレコメンデーションシステムを導入しました。※8 ※9
ユーザーの飲食店に関する行動データを詳細に解析し、あらかじめSNS上で一定以上の人気があり、投稿者のリピートしやすいレストランを厳選してレコメンド。顧客体験の向上、ブランド差別化、及び事業成長の推進に大きく寄与しています。
事例⑧株式会社ライトオン

アパレルサービス展開を強化する株式会社ライトオンでは、レコメンドAI技術を導入し、Factorization Machineやスタッフの知識フィルタリングを組み合わせたシステムにより、ユーザーの購買データを解析した「ONIAI」という新しいWebコンテンツの作成をしています。※10 ※11
まるで専属スタイリストと一緒に商品を選んでいるような感覚になれる体験をさせることで、業務効率の向上と顧客満足度の強化、ひいては企業価値の向上に成功しました。
今後注目の「レコメンドAI×生成AI」
「レコメンドAI×生成AI」においては、データの収集と構造化が不可欠です。ユーザー行動や商品・サービス情報を統一的な形式で整理し、Embeddingという機械学習方法を用いてベクトル化を行うことで、類似性や関連性の精度が向上します。
さらに、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という機械学習方法を活用することで、蓄積された情報からユーザーのニーズに合った新たな提案やコンテンツ生成を動的に実施できます。
これらにより、従来のレコメンデーションを超えたパーソナライズされたサービスを作ることができ、今後のマーケティング活動に大きな影響を与えるでしょう。
なお、RAGについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

レコメンドAIで企業に更なる発展を
この記事では、レコメンドAIの特徴や活用事例について紹介しました。パーソナライズされたユーザー好みの提案をすることにより、顧客体験の向上、業務効率化、市場競争力の強化ができます。以下が主なレコメンドAIを導入するメリットです。
- 顧客満足度の向上とエンゲージメントの強化
- マーケティング活動の効率化
- 新たな市場の開拓とブランド価値の向上
レコメンドAIのメリットと導入目的を再度照らし合わせ、最も目的に沿ったレコメンドシステムを取り入れて企業のさらなる発展を目指しましょう!

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最後に
いかがだったでしょうか?
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- ※10:感性解析AI のSENSY、ライトオンで導入!新アルゴリズム“ONIAI”サービス開始
- ※11:ライトオンが運営する公式オンラインショップ『Right-on』にレコメンドエンジン「ZETA RECOMMEND」が導入