生成AIを開発する料金相場は?開発費用を抑える方法や注意点を徹底解説
WEELメディア事業部AIライターの2scです。
企業の情報システム部門で活躍中のみなさん!自社用の生成AIを開発する場合にかかる費用について、興味はありませんか?
すでに、生成AIは日本国内の産業にも大きな影響を与えています。その市場規模は将来的に1兆7,774億円まで拡大するとの予測もあります。(※1)
このように注目株の生成AIは、ITベンダーへの開発委託も可能。自社用の生成AIを用意することで、競合他社の一歩先をゆくDXが実現するかもしれません。
当記事では、そんな自社用生成AIの開発について、工程・相場・注意点…etc.をご紹介します。完読いただくと、生成AI開発の大まかな相場観がつかめます。ぜひ、最後までお読みください。
生成AIの実装までの流れ
LLM(大規模言語モデル)や画像生成AI(Text-to-Imageモデル)等の生成AIは、従来のAIモデルや社内システム同様、ITベンダーへの開発委託が可能です。その開発工程・実装までの流れは、以下のとおりになります。
- 課題のヒアリング:クライアントの要件・課題を把握、生成AIが適用できそうな場面を探る
- 要否判断:生成AIの有用性・実現可能性を評価、開発の要否を判定する
- データの前処理:社内データを加工、生成AIの学習工程で使えるようにする
- PoC検証:生成AIのプロトタイプを開発、実用化までトライアンドエラーを繰り返す
- システム開発:PoC成功後、生成AIを業務に組み込むためのシステムを開発する
- ユーザーへのヒアリング:ユーザーからのフィードバック・要望を集める
- 改善点の洗い出し:システムの改善点を特定、継続的に最適化を行う
次項からは、生成AI開発にかかる費用の相場を解説していきます。
生成AIの開発費用の相場
生成AIの開発費用について、その相場を先述の工程別でまとめると下表のとおりになります。
工程 | 相場 |
---|---|
1.課題のヒアリング | 多くの場合、無料 |
2.要否判断 | 約40万~100万円 |
3.データの前処理 | 約200万〜3,000万円 |
4.PoC検証 | 約300万〜500万円 |
5.システム開発 | 約80万〜250万円/月 × 人月 |
6.ユーザーへのヒアリング 7.改善点の洗い出し | あわせて、約60万〜120万円 |
なお、こちらの相場は一例です。開発費用は関与するエンジニアの人数 / 期間 / 生成AIモデルの種類…etc.によって変動しますので、その点はご留意ください。
なお、PoCについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
生成AI開発の費用が変動する理由
先述のとおり、生成AIの開発費用は下記の事由により変動します。
- 開発期間や工数の規模
- 開発に関わるエンジニアの人数
- AIの種類や機能
以下、各事由について詳しくみていきましょう。
開発期間や工数の規模
生成AIを開発する場合、期間・工数の規模はその時々で変動します。
そもそも、ソフトウェアの開発手法には下記の2種類があるのですが、生成AIで採用されるのは専ら後者のアジャイル開発。このアジャイル開発では、定義した要件を満たすまでイテレーションが繰り返されます。
- ウォーターフォール開発:要件定義→設計→開発→テストの順に時間をかけて、1回で開発を終える
- アジャイル開発:要件定義→設計→開発→テストの流れをセット(イテレーション)として、試行錯誤を繰り返す
したがって、生成AIの開発期間・工数の規模を正確に見積もるのは困難なのです。
開発に関わるエンジニアの人件費
生成AIの開発費用が変動する理由には、人件費も挙げられます。エンジニアの人件費自体は下記の計算式で見積もりが可能です。
月数(開発期間)× 人月単価(エンジニア1人あたりの費用) × 人数=人件費
そして人月単価については、下表のようにある程度予測ができます。
エンジニアの種別 | 1人あたりの相場 |
---|---|
プログラマー(下請け・フリーランス) | 40万~80万円/月 |
プログラマー(大手開発会社) | 60万~100万円/月 |
システムエンジニア(初級) | 80万~100万円/月 |
システムエンジニア(中級) | 100万~120万円/月 |
システムエンジニア(上級) | 120万~200万円/月 |
ただ、開発に要する月数・人数はアジャイル開発のためその時々で変動します。したがって、人件費についても正確な見積もりが立てづらいのです。
AIの種類や機能
開発費用は、開発したい生成AIの種類や機能によって変動します。
まず、生成AIの種類については下記のとおりです。それぞれ学習に使うデータが異なるため、開発費用は大きく変動します。
- LLM / 大規模言語モデル:コーパス(億単位の言語資料 / ※2)
- 画像生成AI / Text-to-Imageモデル:画像データセット
- 音声生成AI / Text-to-Speechモデル:音声データセット
…etc.
加えて、生成AIを業務に適用するにあたって、下記の機能を追加することも。その場合はさらに費用が変動します。
- 自社データに基づく回答(RAG)
- Webブラウジング
- 自律型AIエージェント
- GUI
…etc.
以上の事由により、生成AIの開発費用を正しく見積もるのは困難なのです。
なお、AIモデルの種類について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
生成AIを開発する際の注意点
見通しが立てづらい生成AIの開発における注意点は、下記の3点になります。
- 現状の課題や生成AIを開発する目的を明確に設定する
- 生成AIを開発するための相場を把握する
- 複数社から見積もりをもらう
以下、順を追って詳しくみていきましょう。
現状の課題や生成AIを開発する目的を明確に設定する
生成AIの開発にあたっては、現状の課題・目的を明確に設定することが大事。明確な課題・目的がない場合、アジャイル開発の途中で方向性を見失ってしまうリスクがあるのです。
具体的には、開発の前段階で下記を徹底的に洗い出すことが重要です。
- 課題の解決にあたって、本当に生成AIが必要なのか
- 既存・大手の生成AIで代用できないか
- 課題の原因・解決策が言語化できるか
…etc.
方針を固めてから、開発にあたりましょう。
生成AIを開発するための相場を把握する
相場も生成AIの開発で押さえておきたい点のひとつです。開発の各工程でどれぐらいの費用がかかるのかを把握しておくことで、ムダが省きやすくなります。
例えば、先ほどお見せした相場(下表)ですと、「3.データの前処理」の振れ幅が大きくなっていますよね。
工程 | 費用相場 |
---|---|
1.課題のヒアリング | 多くの場合、無料 |
2.要否判断 | 約40万~100万円 |
3.データの前処理 | 約200万〜3,000万円 |
4.PoC検証 | 約300万〜500万円 |
5.システム開発 | 約80万〜250万円/月 × 人月 |
6.ユーザーへのヒアリング 7.改善点の洗い出し | あわせて、約60万〜120万円 |
こちらは、開発する生成AIの性能によって変動する項目。要件設定次第でコストが抑えられるかもしれません。
このように、相場の把握は開発の要なのです。
複数社から見積もりをもらう
生成AIの開発にあたっては、複数社から見積もりをもらうことも重要。ベンダーによって開発費用はまちまちです。加えて、下記についてもベンダーごとに開きがあります。
- 技術力
- 実装できる機能
- オプションの有無
- アフターサポート
比較・検討を十分に重ねた上で、自社のニーズにあったベンダーを見つけましょう。
生成AIの開発費を抑える方法
生成AIの開発費用はその時々で変動するのですが、一貫して費用を抑えられる方法もあります。それは下記の2点です。
- できる作業は自社で行う
- 補助金を活用する
それでは最後に、生成AIの開発費を抑える方法を詳しくみていきましょう。
できる作業は自社で行う
生成AIの開発にあたっては、一部の作業を自社で行ってしまうという手もあります。とくに下記、データの前処理はエンジニア不在でも可能です。
- データクレンジング:データ中のエラー・ノイズ・欠損を除去する前処理
- 正規化:単位や表記のブレをなくす前処理
- アノテーション:データに説明・注釈のタグを添えて分類を行う前処理
人員と時間は必要ですが、外注する場合よりも費用が抑えられるかもしれません。
補助金を活用する
生成AIの開発では、補助金も活用できます。例えば、中小企業向けの「働き方改革推進支援金」は、業務効率化のためのツール・生成AIも対象。条件を満たせば、75%から80%の支援を受けられる可能性があります。(※3 / 例は下図参照)
業態にあった補助金をみつけて、生成AI開発を円滑に進めましょう。
なお、開発費用を抑える方法について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
相場を把握して生成AIの開発を成功させよう
当記事では、生成AIの開発にかかる費用の相場をお伝えしました。以下にてもう一度、生成AI開発の流れと相場をみていきましょう。
工程 | 内容 | 相場 |
---|---|---|
1.課題のヒアリング | クライアントの要件・課題を把握、 生成AIが適用できそうな場面を探る | 多くの場合、無料 |
2.要否判断 | 生成AIの有用性・実現可能性を評価、 開発の要否を判定する | 約40万~100万円 |
3.データの前処理 | 社内データを加工、 生成AIの学習工程で使えるようにする | 約200万〜3,000万円 |
4.PoC検証 | 生成AIのプロトタイプを開発、 実用化までトライアンドエラーを繰り返す | 約300万〜500万円 |
5.システム開発 | PoC成功後、生成AIを業務に組み込むための システムを開発する | 約80万〜250万円/月 × 人月 |
6.ユーザーへのヒアリング 7.改善点の洗い出し | ユーザーからのフィードバックを集め、 システムを継続的に改善していく | あわせて、約60万〜120万円 |
上表のとおり、生成AIの開発費用はその時々で大きく揺れ動きます。ただし、下記のように一貫して開発費用を抑えられる方法もあります。
- できる作業は自社で行う
- 補助金を活用する
相場等をよく理解した上で、生成AIの開発に臨みましょう。
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