【生成AI×物流】各部門毎のAI活用方法と注目の導入事例3選を紹介!
物流業界は急速な経済成長と消費者ニーズの多様化によって、複数の重大な課題に直面しているのをご存知でしょうか?
特に、2024年4月1日からの働き方改革関連法が施行により、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間に制限されるため、運送業界全体に大きな影響を与えることが予想されています。
この記事では、そうした状況に対する解決策の一つとして生成AIの導入に焦点を当てて解説します。物流業界でのAI活用法を知ることで、物流・需要の予測、配送ルートの最適化、倉庫管理の効率化など、多岐にわたる業務での効率化とコスト削減が実現できると実感できます。
ぜひ、最後までご覧ください。
そもそも生成AIとは?
生成AI(ジェネレーティブAI)は従来のAIと異なり、単に情報を整理・分類・検索するだけでなく、学習したデータに基づき新しいコンテンツを生み出すAIのことです。指示に応じて文章を生成する「ChatGPT」などが特に有名ですね。
生成AIの強みの一つは、臨機応変な予測能力です。例えば、物流業界では、絶えず変動する要因(天候や交通状況、市場のニーズなど)の予測ツールを強化するのに役立ちます。
物流業界における生成AIは、リアルタイムでの対応や正確な未来予測をすることで、物流業務の効率化と最適化に大きく貢献しています。
なお、生成AIについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→生成AIの種類を一覧で紹介!それぞれの代表的おすすめAIツールも解説
物流業界が今抱えている課題
物流業界は現代の急速な経済成長と消費者ニーズの多様化に伴い、複数の重大な課題に直面しています。特に深刻な悩みが次の3つです。
- 長時間労働の慢性化
- 配達頻度の増加
- ドライバーの高齢化
これらの問題は、業界全体の効率と持続可能性に影響を及ぼしており、労働環境の改善や効率化技術の導入を急ぐ必要があるとされています。
長時間労働の慢性化
物流業界では長時間労働が慢性化しています。
国土交通省のデータによると、令和4年の全産業平均の労働時間は2,124時間であるのに対し、中小型トラックドライバーの平均労働時間は2,520時間、大型トラックドライバーは2,568時間と、全産業平均を大きく上回っています。
また、賃金も全産業平均より低い状況が続いており、長時間労働・長距離運転・低賃金という労働環境がドライバー不足の一因となっています。
配達頻度の増加
電子商取引(EC)市場の拡大により、宅配便の取り扱い個数が増加しています。この影響で、配達頻度が増加し、それに伴い受取拒否や再配達の件数も増えました。
また、個人宅への小口配送が増えたことで配送1回あたりのトラックの積載率は低下傾向にあります。積載率の低下は効率性の低下を意味しており、再配達の増加と合わせて、物流業界の新たな課題となりました。
そこで、これらの問題に対処するため、国土交通省と経済産業省は再配達削減に向けた取り組みを推進しています。「再配達削減PR月間」などのキャンペーンを通じて、再配達率の削減に取り組んでいますが、2024年4月から施行されるトラックドライバーの時間外労働上限規制によって、物流業界への負荷がさらに高まることが予想されています。
参考記事:取り組もう、再配達削減!!
ドライバーの高齢化
ドライバーの高齢化も深刻な問題となっています。
総務省が行った「令和3年 労働力調査」によると、トラック運転者の約半数が45歳以上という結果でした。
さらに、トラックドライバーの職場環境は、他の産業と比較して賃金が低く、労働時間が長いことが指摘されています。これにより、若い世代のドライバーの増加が見込めず、既存の高齢ドライバーに依存する傾向が強まっているのが現状です。
参考記事:統計からみるトラック運転者の仕事
ここまで見てきたとおり、物流業界の課題は深刻で多岐にわたりますが、これらの問題を解決するための有効な手段の一つが生成AIの導入です。
そこで、次からは物流業界でどのように生成AIを活用できるのかについてバックオフィス編、配送業務編、庫内作業編、国際編の4つの観点から見ていきます。各部門ごとの具体的なAI活用法を紹介することで、物流業界が直面している課題をどのように解決できるのか、そしてそれによってどのようなメリットが得られるのかを掘り下げていきます。
物流業界でAIができること
現状、物流業界で生成AIの活用事例は見つけられませんでした。しかし、現在多くの業界で生成AIの活用方法を模索している時期であり、弊社ではそのお手伝いをさせていただいております。もしお役に立てることがあれば、ぜひお問い合わせください。
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ここでは、従来のAIに期待できる物流業界での利用方法を紹介していきます。
物流・需要の予測
生成AIを活用することで、より精度の高い需要予測ができます。大量の過去データや市場トレンドを分析することで、季節変動や突発的な需要変化への迅速な対応が可能です。さらに、在庫管理の最適化や配送ルートの効率化が実現するので、コスト削減が期待できます。
カスタマーサポートの強化
AIの導入により、カスタマーサポートを大きく強化できます。AIチャットボットや自動応答システムにより、顧客からの問い合わせに24時間体制で対応可能となるので、顧客満足度の向上につながることでしょう。
また、頻繁に発生する問い合わせの自動処理により、スタッフはより複雑な問題に注力できるようになります。
リスクの洗い出し
AIはリスク管理にも重要な役割を果たします。輸送中の事故や遅延、在庫の過剰・不足など、様々なリスクを予測し、それらに対する対策を提案します。AIによるリアルタイム分析により、潜在的な問題を早期に特定し、リスク回避策を講じることが可能です。
顧客行動の分析
AIは顧客データを深く分析し、顧客行動の傾向を把握することができます。顧客の購買パターンや嗜好を理解し、個々の顧客に合わせてカスタマイズしたサービスを提供できます。また、顧客のニーズに応じたサービス提供や、より効果的なマーケティング戦略の策定も可能です。
紙媒体からの脱却
物流業界では、紙ベースでの業務が多く残っていますが、AIの導入によりこれらのプロセスのデジタル化を促進できます。書類をデジタル化すれば作業の効率化だけでなく、ミスの削減やリアルタイムでの情報共有も可能です。
また、紙媒体の使用が減るので、環境にも優しくコスト削減にも繋がります。
人材配置の最適化
AIは、配送業務における過去のデータや現在の需要予測を分析し、必要な人員配置を予測できます。過去の配送データや季節、イベントなどの要因を分析することで、過剰な人員配置や不足を未然に防ぐことが可能です。
さらに、ドライバーやスタッフのスキルや経験までも考慮した人員配置もAIにお任せできます。
配送ルートの最適化
配送ルートをAIに最適化してもらうことで、配達効率は大幅に向上します。
リアルタイムの交通情報や天候、配達先の地理的特徴などの多様なデータをAIが瞬時に分析し、最短かつ最も効率的なルートを提案。これにより、燃料コストの削減や配送時間の短縮に繋がります。
居眠りの防止
ドライバーの安全運転を支援するため、生成AIは居眠り防止にも一役買っています。AIはドライバーの運転パターンや顔の表情、目の動きなどをモニタリングし、疲労の兆候を早期に検知。必要に応じて警告を発するなどして、交通事故のリスクを減少させます。
ドライバーの健康と安全を守ると同時に、事業運営にも関係する重要な施策と言えるでしょう。
倉庫管理の最適化
AIのデータ分析と予測モデリングにより、倉庫内での商品管理の効率化と、在庫管理の最適化が可能です。なぜなら、AIが過去のデータと現在の市場動向を分析し、季節性や過去の販売傾向などから需要の変動に応じた適正在庫を予測できるからです。
さらに、保管場所のレイアウトも最適化してくれるので、商品の取り出しや保管効率が向上します。
仕分け・入庫の自動化
倉庫内の仕分けや入庫作業は、AIとロボット技術を組み合わせることで自動化できます。
ファインチューニングされたAIが、入庫される商品の種類や数量を迅速に識別し、適切な保管場所に割り当てます。そして、AI駆動のロボティクスシステムと連携することで物理的な仕分け作業を自動化。ヒューマンエラーを減少させると同時に、作業効率を大幅に向上できます。
検品の効率化
AIによる画像認識技術を使えば、検品作業を効率化できます。AIが商品の品質チェックや破損の有無を正確に判断。人間の目では見落としがちな細かな欠陥も発見できるため、品質保証が向上します。
また、作業時間の短縮とヒューマンエラーの削減も期待できるため、全体的な生産性も向上するかもしれませんね。
輸入品目の分類
AIが特に力を発揮するのは、輸入品目の分類です。
例えば、ベクトルデータベースを利用することで、輸入される商品の特徴や分類基準を瞬時に分析。これにより、関税コードや規制情報を正確に割り当てることができます。
また、AIをファインチューニングすることで、過去のデータや最新の規制情報に基づいて、新規の商品に対しても適切な分類を提案することが可能になります。これによって、分類ミスの減少と、手作業にかかる時間とコストの大幅な削減が期待できるのです。
適用できるEPAの検索
国際物流におけるもう一つの要素は、EPA(経済連携協定)の適用です。そこで生成AIが重要になります。AIによるEPAの検索は、関税手続きを効率化し、迅速な貿易取引を可能にしてくれます。
例えば、「商品をブラジルに輸出したいんだけど、関税が心配だな。」と、AIに問いかけます。すると、「ブラジルへの輸出ですね。EPAを活用すると、関税を削減できる可能性があります。少々お待ちください、最適な協定を調べてみます。」のような、回答を返してくれます。
そして数秒後には、商品の特性や取引先の国、現行の貿易法規などの複雑な条件を分析し、最適なEPAを報告してくれるといった感じです。普段の会話感覚でAIに聞くだけで、膨大な数のEPAから適用できるものを検索してくれるのは便利ですね。
物流業界でのAI導入事例3選
AIの導入事例を3つピックアップし、具体的な事例とその成果をご紹介します。これらの事例から、AIがどのように現場で活用されているのか、また、それが業務プロセスやサービス提供にどのような影響を与えているのか、一緒に見てみましょう!
【ユアサ商事株式会社】生成AIによる配送ルートの最適化で積載効率10%アップを達成!
ユアサ商事株式会社は、自社便の積載率向上とコスト削減を目的としてLoogiaを導入しました。
Loogiaは配車計画をAIで自動作成。ベテランドライバーのノウハウを蓄積して、新人ドライバーでも効率的な配送ルートで運行できるようになるAIツールです。
Loogiaは使いやすく、ドライバーアプリも直感的に操作可能である点が評価されています。実際に導入後、物流センターでは積載率が10%アップ、自社便の配送個口数が月間15%増加したそうです。
参考記事:配送ルート最適化を行い、自社便の積載効率を10%向上。 自社便の配送小口数は月間15%拡大へ。
【株式会社ニチレイロジグループ】賞味期限読み取りAIソリューションを採用して処理速度約2秒を達成!
ニチレイロジグループでは、Automagiが開発した賞味期限読取AIソリューションを採用したことで、物流現場の効率化とDX化が進んだと評価されています。
このソリューションは、画像からAIを用いて賞味期限を自動で読み取るもので、実際の現場での読み取り精度は93%以上、処理速度は約2秒を実現したそうです。賞味期限の読み取りのようなシンプルながらも正確さが求められる作業では、AIのスピードと精度は圧倒的だと言えますね。
参考記事:Automagiの賞味期限読取AIソリューションをニチレイロジグループが採用〜現場での読取精度93%超、処理速度約2秒を実現〜
【出光興産株式会社】配船計画に生成AIを導入して輸送効率20%アップを達成!
出光興産で、AI技術を用いた海上輸送(配船)計画の実証実験を行いました。
実験では、製油所から油槽所への製品輸送を模擬するシミュレーターとAIによる配船最適化モデルを構築。その結果、輸送効率を最大約20%改善する配船計画を作成できたそうです。
使用した深層強化学習技術は、囲碁や将棋などのゲームで世界チャンピオンを破るなどして知られていますが、社会課題への応用はその複雑さから困難とされていました。
しかし、本実験では深層強化学習だけでなく、複数のアルゴリズムを組み合わせることによって最適なルートを出力することに成功したようです。
参考記事:出光興産とグリッド、業界初の深層強化学習を活用した配船計画最適化の実証実験を完了しました
従来の配船計画は熟練者の経験に大きく依存していたようですが、自動化する試みが成功したことは、技術革新の大きな一歩だと感じます。将来的には、完全自律型の物流システムが実現するかもしれませんね。
なお、生成AIを導入した企業の成功事例について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
→生成AIで自動化する方法!最新の企業成功事例をAIエンジニアが解説
生成AIの力で物流業界に革命を
いかがでしたか?
この記事では物流業界で生成AIにできることについて、実際の導入事例と共にお伝えしました。簡単にまとめると次の通りです。
物流業界でAIにできること
【バックオフィス編】
- 物流・需要の予測
- カスタマーサポートの強化
- リスクの洗い出し
- 顧客行動の分析
- 紙媒体からの脱却
【配送業務編】
- 人材配置の最適化
- 配送ルートの最適化
- 居眠りの防止
【庫内作業編】
- 倉庫管理の最適化
- 仕分け・入庫の自動化
- 検品の効率化
【国際編】
- 輸入品目の分類
- 適用できるEPAの検索
物流業界でのAI導入事例
- 【ユアサ商事株式会社】生成AIによる配送ルートの最適化で積載効率10%アップを達成!
- 【株式会社ニチレイロジグループ】賞味期限読み取りAIソリューションを採用して処理速度約2秒を達成!
- 【出光興産株式会社】配船計画に生成AIを導入して輸送効率20%アップを達成!
生成AIの進化と応用が進んでいけば、いずれはAIが管理するドローン配送や自動運転トラックが物資を届けるようになり、人手不足や運送コストの問題が大幅に軽減されることでしょう。
もしかすると、私たちの想像を遥かに超える形で、世界はAIによってよりスマートで、よりつながった場所になるかもしれませんね。
生成系AIの業務活用なら!
・生成系AIを活用したPoC開発
・生成系AIのコンサルティング
・システム間API連携
最後に
いかがだったでしょうか?
弊社では
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