【AI絵師】画像生成AIによってイラストレーターの仕事がうばわれる?実態と注意点を解説

WEELメディア事業部AIライターの2scです。
昨今、X(旧Twitter)にAI製の美少女イラストを投稿している「AI絵師」と、本職のイラストレーターとの対立が激化しています。
そのなかで画像生成AIがイラストレーターの仕事を奪うかもしれない、という危機感が強まっているのです。例えばお隣の中国ではすでに、イラストレーターの収入がAIのせいで1/10になる、といった事態が起こっています。
当記事では、物議をかもしているAI絵師の問題点や特徴、始め方や注意点について紹介していきます。
最後までお読みいただくと、イラスト界隈の論争の原因がわかるはずです。ぜひ最後までご覧ください!
AI絵師とは?

「AI絵師」とは、画像生成AIに萌え系のイラストを生成させているクリエイターの総称です。否定的なニュアンスを含むネットスラングで、本来の「絵師」つまり萌え系のイラストレーターと区別する文脈で用いられています。
そんなAI絵師はしばしば、以下のような批判を浴びています。
- ほぼAI任せなのにクリエイターを名乗るべきではない
- 有名絵師が努力して編み出した画風を盗んでいる
- そもそも画像生成AI自体が著作権違反である
X(旧Twitter)や5chのサブカルチャー界隈では、賛否含めてAI絵師に関する論争が繰り広げられている最中です。当記事では論点を明らかにするため、まずこのAI絵師と本来の絵師との違いを紹介していきます。
AI絵師と一般的な絵師の違い
画像生成AIの技術は進歩し続けています。ですのでAI絵師と一般的な絵師とでイラストを比較しても、なかなか見分けがつきません。
ただイラストを世に出すまでの過程は、大きく異なっています。下表のとおり、AI絵師は一般的な絵師が苦労して描き上げるイラストと同等のものを労せず用意してしまうのです。
AI絵師 | 一般的な絵師 | |
---|---|---|
用いるツール | 画像生成AI(DreamStudioやNovelAIが人気) | イラスト制作ソフト(CLIP STUDIO PAINTやAdobe Photoshopが人気) |
人が行う作業 | キーボードによるプロンプトの入力だけ | ペンタブレットによる描画&着色、その他レイヤー操作など |
作品制作にかかる時間 | 3時間〜1日 | 1日〜1週間 |
修行期間 | 2,3日程度 | 1年程度 |
ただ上に挙げた特徴だけなら、まだ技術の進歩として許容できそうです。なにせ一般的な絵師についても、イラスト制作ソフトやペンタブレットといった文明の利器に頼っているといえますよね。
ではなぜ論争が絶えないのでしょうか?次の見出しではAI絵師の問題点を深掘りしていきます。
なお、AI漫画の作成について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

AI絵師が抱える5つの問題点

ここからはAI絵師の問題点を5つ紹介します。便利なだけではない、画像生成AIのグレーな部分をご覧ください。
人間のイラストが低品質なAIイラストに埋もれてしまう
SNSで人間が描いたイラストを探したい場合、AI絵師の投稿が検索の邪魔をしてしまいます。
現在公開されているAIイラストの多くは、俗に「マスピ顔」と呼ばれる判を押したような画風の作品です。手指の作画や陰影など、細かな粗もまだまだ目立ちます。
そのような決して高品質とはいえないAIイラストが、AI絵師の台頭以降、SNS上にあふれかえっています。結果として、プロのイラストレーターが描いたイラストを探したいのにAIイラストが邪魔で見つからない、といった事態が現在進行形で起きているのです。※1
生成したイラストに対して自作発言をするAI絵師もいる
AI絵師の中には、AIに生成させたイラストをあたかも自分で描いたかのように投稿する人もいます。こういった自作発言が、マンガ・イラストの界隈で批判を呼んでいるのです。
もともとマンガ・イラストの界隈は、作品のオリジナリティに対してシビアです。これまでもトレースによる盗作(トレパク)や構図の模倣が、たびたび問題視されてきました。
このような界隈の性質上、AIイラストに対して自作発言をしようものなら批判は免れないということなのです。
一部のAI絵師が人気絵師の絵柄を模倣している
人気絵師にとって自身の画風は、積み上げてきたブランドです。彼らは日夜、練習や研究を重ねて自分だけの画風を確立していきます。
ただそんな努力の結晶をたやすく盗んでしまう、悪質なAI絵師もいます。
画像生成AIは「LoRA学習」といって、人気絵師のイラストを20枚程度学習するだけでその画風の模倣までが可能です。またプロンプトを介して、特定の画風に寄せるような指示ができてしまいます。
当然こういった模倣は、倫理的にグレーな手口です。しかしながら一部の「無法地帯」と呼ばれるサイトでは、特定の人気絵師の絵柄を模倣したモデルが公然と配布されています。
絵師の仕事をAI絵師が奪ってしまうかもしれない
画像生成AIとAI絵師の台頭によって、本来の絵師の仕事が失くなってしまうかもしれません。
実際に中国のゲーム業界では、プロのイラストレーターの代わりに、画像生成AIを起用する事例が増えてきています。
もともと中国のプロイラストレーターは1作品につき、日本円で5〜13万円ほどの報酬を受け取っていました。ですが画像生成AIの台頭以降は、AIが生成したイラストを微修正する仕事を従来の1/10の報酬で受注するほかなくなりつつあるのです。※2
使用する画像生成AIの学習データが著作権に抵触するかもしれない
実は過去の判例で、人気絵師の画風そのものに著作権が適用されたことはありません。ですがAI絵師が著作権的にセーフかどうかは別問題です。
問題となっているのはイラストではなく、彼らが用いる画像生成AIの出自。実は違法にリークされたモデル(Novel AIの海賊版)から派生した画像生成AIが、すでに普及してしまっているのです。
しかもそのなかには他のモデルとの混合が進んだものもあるため、どのモデルがクリーンなのかわからなくなってきています。※3
なお、生成AIが抱える他のリスクについて詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

AI絵師やそのイラストの見分け方

ここからはAI絵師が用意するイラストの特徴を紹介していきます。実はAIイラストと人間のイラストとで、絶対的な見分け方はありません。ですが以下の3点に着目すると、ある程度見分けがつくはずです。
手指の作画
AIに生成させた人物イラストではしばしば、手指の作画に下記のようなミスがみられました。
- 指の本数が多いor少ない
- 指の曲がる角度がおかしい
ただ日に日に画像生成AIの性能は向上しており、手指の作画ミスが起こりにくくなっているようです。したがってイラストの手指だけ確認してAI絵師だと判別するのは、得策ではありません。
顔まわりの作画
もともとAI絵師の人物イラストは、「マスピ顔」と呼ばれる判を押したような顔をもっていました。これは彼らが用いる画像生成AI・NovelAIで、masterpiece(傑作)と入力した際に出力されたものです。
ただ派生モデルの増加にともない、顔つきに基づくAIイラストの判別は難しくなってきています。とはいえ以下のとおり、まだまだAIイラストでは細部の粗が目立ちます。
- 黒目や瞳孔が乱雑に塗られている
- 髪の毛・まつ毛・眉毛の境界が切れたり溶けたりしている
- 他の部位と比べて、耳の作画だけ簡素になっている
AIイラストを見分けたい場合は、顔まわりに着目してみましょう。
物体の細かな作画
先ほど説明したとおり、AIイラストでは細部に作画ミスが表れます。そのなかでも下記の箇所に作画ミスがあるイラストは、AIイラストの可能性が高くなります。
- キーボードなど規則的に並ぶ小さな部品
- 文字
これらの細かな作画ミスは修正が難しいため、AI絵師を見分ける際のヒントとなってくれるでしょう。
AI絵師が使っている画像生成AI

AI絵師が使用する画像生成AIは基本的に、Stability AI社製のStable Diffusionから派生したモデルです。その派生モデルにはさまざまなものがありますが、当記事では代表的なものを2つ紹介します。
NovelAI
NovelAIはアメリカ・Anlatan社発の、文章と画像が生成できるAIサービスです。
そのうち画像生成サービスのほうに、Stable Diffusionから直接派生したモデルが搭載されています。賛否両論ありますが、Novel AIのモデルはキュレーションサイトのDanbooruに転載されたイラストを学習しているため、萌え系の人物イラストに強くなっています。
ちなみにNovelAIで生成した画像の著作権は制作者に帰属しており、商用利用まで許可されています。
公式サイト:NovelAI

WaifuDiffusion
WaifuDiffusionも、Stable DiffusionにDanbooru上のイラストを学習させた派生モデルです。
こちらは有志によって開発されたオープンソースのモデルですが、NovelAIのリークモデルとは無関係なため法的にクリーンです。ただし、Danbooruのイラストを学習データとして使用しているため、学習元データの著作権に関しては完全にクリアとは言い切れない部分もあるので注意しましょう。
グラフィックボードなどの環境さえ用意できれば、無料で使えてしまいます。
公式サイト:hakurei/waifu-diffusion · Hugging Face
Stable Diffusion
Stable Diffusionは、Stability AI社が開発したオープンソースの画像生成AIです。モデルをインストールすれば無料で利用できます。カスタマイズ性が高く、商用利用も可能です。
多くの派生モデルやツールがコミュニティによって開発されています。特に、リアルな画像生成や特定のスタイルに特化したモデルが豊富に存在し、幅広い用途に対応しています。
公式サイト:Stable Diffusion

Midjourney
Midjourneyは、Discord上で利用できる画像生成AIです。専用のDiscordサーバーに参加し、テキストプロンプトを入力することで画像を生成できます。Midjourneyは、芸術的で抽象的なスタイルの画像生成に強みがあり、特に幻想的な風景やキャラクターデザインなどに適しています。
商用利用も可能ですが、利用には月額料金が必要です。生成した画像の著作権は基本的にユーザーにあり、自分の作品として使うことができます。
公式サイト:Midjourney

DALL-E 3
DALL-E 3は、OpenAIが開発した最新の画像生成AIで、2023年9月に公開されました。DALL-E 3は、ChatGPTと統合されており、ChatGPT Plus(有料版)のユーザーは直接画像生成ができます。
MicrosoftのBing Image CreatorやCopilotをとおして無料で利用もできます。しかし、Bing経由で生成した画像は商用利用ができません。
生成された画像の著作権はユーザーに帰属しますが、利用方法によって制限が異なるため、用途に応じて利用規約をよく確認しましょう。
公式サイト:DALL-E 3

AI絵師になる方法
AI絵師として活動するには、ただAIツールを使うだけでなく、作品を作る上でのルールやマナーを理解し、自分に合った画像生成AIを選ぶことが必要です。また、AIにうまく絵を描かせるためのプロンプトの書き方を知ることもとても大切です。ここでは、AI絵師を目指すために必要な3つのポイントを解説します。
AI絵師に必要な知識と心がまえ
AI絵師は、AIが作った画像を使って作品を発信する人のことです。活動するにあたって、次のような知識や心がまえが大切です。
- 著作権や利用ルールを理解する
- 他の人の気持ちに配慮する
- 発信することに責任を持つ
AIが学習に使っている画像には、誰かが描いたイラストや写真が含まれていることがあります。そのため、AIで作った画像を自分の作品として使っていいかどうか、商用利用ができるかなど、ツールごとのルールをきちんと調べておく必要があります。
有名な絵師さんの絵柄をそっくりまねたり、他人の作品を参考にしすぎると、著作権に触れてしまう場合があります。AIで生成した画像によってトラブルになることを避けるためにも、創作のマナーを守りましょう。
AIが作った画像でも、それを発信するのは自分自身です。どのような意図で発信するのか、自分の言葉や思いをきちんと伝える姿勢が大切です。
画像生成AIを選ぶときのポイント
画像生成AIにはさまざまな種類があります。それぞれの特徴を知って、自分の作りたい作品に合うものを選びましょう。画像生成AIを選ぶときのポイントを紹介します。
- 生成される画像のスタイルが目的に合っているか
- 細かい設定が可能かどうか
- 商用利用が可能かどうか
- 日本語での操作がしやすいか
たとえば、アニメ風のイラストを作りたい場合には「Waifu Diffusion」リアルな表現を重視するなら「Midjourney」が適しています。ツールによって得意とする画像のスタイルが異なるため、自分の目的に合ったものを選びましょう。
自分で絵の雰囲気を細かく調整したい場合は「Stable Diffusion」のようにカスタマイズしやすいツールがおすすめです。商用利用ができるかどうかは、ツールごとに違うので注意しましょう。操作画面が日本語対応かどうか、使いやすさも判断材料になります。
プロンプトの基本と学び方
プロンプトとは、AIにどんな絵を描いてほしいかを伝えるための指示文です。プロンプトの書き方を工夫すれば、イメージにより近い絵が作れるようになります。
プロンプトを書くときは、まず絵の構図やポーズを具体的に伝えることが大切です。たとえば「a girl under a cherry blossom tree, side view(桜の木の下に立つ女の子、横向き)」のように書くと、構図が明確になります。
さらに、表情や服装、背景の雰囲気なども細かく指定すると、仕上がりのイメージがより詳細になります。「smiling, wearing a kimono, soft background(笑顔で、着物を着ていて、やわらかい背景)」といった表現をするとよいでしょう。
画像生成では、描いてほしくないものの特徴をあらかじめ伝えておくという方法もあります。これは「ネガティブプロンプト」と呼ばれ、「blurry(ぼやけた)」「distorted hands(ゆがんだ手)」など、避けたい要素を描かないように指示に加えることで、完成度の高い画像を生成できます。
プロンプトを上達させるには、他の人がどのような表現のプロンプトを使っているのかをSNSや作品サイトで見て、参考にするのが効果的です。そして大切なのは、たくさん試してみることです。最初はうまくいかなくても、少しずつ練習を重ねて、自分なりのコツや表現を身につけていきましょう。
AI絵師が活動する際に気をつけるべき3つの注意点

AI絵師として活動する際には、技術力やセンスだけでなく、ルールやマナーにも注意を払う必要があります。近年は、AIによる創作物をめぐってさまざまな議論やトラブルが発生しているため、信頼されるクリエイターになるには「使い方」だけでなく「使い方の姿勢」も問われます。
ここでは、AI絵師として知っておくべき3つの注意点を解説します。
著作権・ライセンス・商用利用に関する注意点
使用する画像生成AIには、それぞれ利用規約があります。商用利用ができるツールもあれば、個人利用に限られるツールもあるため、目的に合わせて確認することが大切です。
同じツールでも利用方法によって制限が変わるケースもあり、注意が必要です。生成画像の著作権が利用者にあるかどうかも含め、公式情報を事前に確認しておきましょう。
なお、文化庁が公表している「AIと著作権に関する考え方について」では、AIの利用に関する著作権リスクを低減するためのチェックリストも公開されています。※4
AI絵師として活動する上でも、基本的な知識として知っておくと安心できる内容です。
個人情報や差別表現への配慮
AIで画像を生成する際には、現実の人物に似た顔や名前を無断で使用しないよう注意が必要です。特定の民族・性別・宗教などに対して偏見を与えるような内容が含まれていないかも確認しましょう。
また、意図せず個人を特定できる情報が含まれていたり、誤解を招くような表現になっていることもあります。生成した画像を公開・配信する前には、内容をよく確認することが大切です。
AIが作り出したものであっても、それを発信するのは人間です。モラルをもち、責任ある表現者としての意識を忘れないようにしましょう。
AI絵師が炎上を避けるための注意点
SNSなどで注目を集めやすいAI画像は、批判や炎上のリスクも高いので注意が必要です。以下のような行為は、炎上や非難の原因になるので気をつけましょう。
- 他人の作風を真似して「自作」として発表する
- プロンプトに既存の作品名やキャラクター名を入れて類似画像を生成する
- 生成元を明かさずに「完全オリジナル」と主張する
著作権や倫理の観点から強い非難を受ける可能性がある行為や、信頼を失う要因となる行為は避けましょう。AIを使って画像を創作する以上、自分の手で描く場合とは異なる視点での配慮が必要です。
AI絵師として活動する際は、透明性を持った発信とコミュニティ内での誠実な姿勢が、炎上を防ぐ最も有効な方法です。
なお、商用利用可能な画像生成AIについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

「AI絵師がすべて悪」というわけではない
当記事では賛否含めて注目を集めている、AI絵師について紹介しました。AI絵師が批判を集める原因となっている5つの問題点を、もう一度以下に示します。
● 人間のイラストが低品質なAIイラストに埋もれてしまう
● 生成したイラストに対して自作発言をするAI絵師もいる
● 一部のAI絵師が人気絵師の絵柄を模倣している
● 絵師の仕事をAI絵師が奪ってしまうかもしれない
● 使用する画像生成AIの学習データが著作権に抵触するかもしれない
上記をみてみるとAI絵師全員が悪というよりは、AIを悪用する一部のユーザーに非がある、ということが読み取れます。
生成AI自体は革新的な技術です。だからこそ、ユーザー一人ひとりが自制心を持って使っていくべきなのでしょう。

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