RAGの開発事例9選!導入するメリットとファインチューニングとの違いを徹底解説

RAGの開発事例9 メリット ファインチューニングとの違い

皆さんは、ビジネスの効率を高めるためのツール検索拡張生成(RAG)をご存知ですか?RAGは、検索エンジンを使って情報を自動的に集め、整理する技術です。RAGを利用することにより、仕事の手間が省け、時間を有効活用できます!

例えば、特定のテーマやキーワードに関する最新情報や競合他社の動向をリアルタイムで把握できるなど、便利な機能があります。

今回の記事では、RAGの開発事例を紹介します。この記事を読むことで、RAGの使い方や効果について理解を深めることができるでしょう。ぜひ、最後までご覧ください。

目次

RAGとは

現代のビジネスにおいて、業務の効率化はますます重要となっています。業務の効率化のためには、効果的なツールの活用が不可欠です。その中でも注目されるのが検索拡張生成(RAG)です。

検索拡張生成(RAG)は、検索エンジンを利用して関連情報を自動的に収集し、効率的に整理する技術です。この技術を活用することで、情報の収集や整理作業にかかる時間を大幅に削減できます。

その結果、業務の生産性を向上させることが可能となります。従来の手作業に比べて遥かに迅速で正確な情報の取得が可能となり、企業の競争力強化に繋がります。

なお、業務効率化について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。

RAGとファインチューニングの違い

検索拡張生成(RAG)とファインチューニングは、効率的な情報処理を目指す際に使用される2つの手法ですが、それぞれ異なるアプローチを取ります。

RAGは、検索エンジンを用いて大量の情報を自動的に収集し、必要な情報を抽出する技術です。一方ファインチューニングは、既存のシステムやアルゴリズムを微調整して、特定の課題に適した性能を引き出す手法にです。

つまり、RAGは情報の収集と整理に焦点を当てており、情報量が多い場合や多様な情報源からの情報を必要とする場合に効果的です。それに対しファインチューニングは、特定の課題に対する精度や性能の向上を目指す場合に有効であり、データのパターンや特性をより細かく調整できます。

RAGを導入するメリット

検索拡張生成(RAG)を導入するメリットは、情報収集と整理の自動化による時間短縮と効率化です。手作業で行っていた作業を自動化することで、生産性を向上させることができます。

ハルシネーションの発生を軽減

検索拡張生成(RAG)を使うときに、間違った情報や信頼性の低い情報による混乱を避けるために、適切なフィルタリングと情報管理が大切です。

RAGシステムには、不適切な情報を取り除く機能があります。これにより、誤った情報による混乱やストレスが軽減され、また使いやすいインターフェースを提供することにも役立ちます。

そのため情報の整理が容易になり、ハルシネーションの発生の軽減が期待できるのです。

応用範囲の拡大

検索拡張生成(RAG)の応用範囲を拡大することで、さまざまな分野での効果的な活用が期待されます。

例えば、医療分野では病気や治療法に関する最新の情報を効率的に収集し、医療従事者の意思決定をサポートできます。また、教育分野では教材や研究資料の収集と整理を自動化し、教育の質を向上させることができます。

さらに、ビジネス分野では市場動向や競合情報の収集を効率化し、戦略立案や意思決定の強化に貢献します。このように、検索拡張生成の応用範囲の拡大は、さまざまな領域での業務効率化と成果の向上につながるのです。

業務時間の短縮

検索拡張生成(RAG)の導入により、業務時間を劇的に短縮できます。従来の手作業に比べて、RAGは情報収集と整理を自動化するため、作業時間を大幅に削減します。

人手で行っていた情報検索やデータ整理作業がRAGによって自動化されることで、従業員はより効率的に業務に集中できます。これにより、時間と労力の節約だけでなく、ヒューマンエラーのリスクも低減されます。

さらに、従業員はRAGによって提供される正確で信頼性の高い情報にアクセスできるため、意思決定の質も向上します。結果として、業務時間の短縮だけでなく、組織全体の生産性と効率性の向上に繋がるのです。

業務の時短に興味がある方は、以下の記事もチェックしてみてください。

RAGの開発事例

あるIT企業では、RAGを活用して顧客からの問い合わせメールを自動的に分類・整理し、適切な部署に振り分けるシステムを開発しました。これにより、顧客サポート業務の効率化と迅速な対応が実現したという事例もあります。

検索拡張生成(RAG)を導入することで、どのようなメリットがあるのか開発事例を一部ご紹介します。

事例① デロイトトーマツコンサルティング

デロイトトーマツコンサルティングは、生成AI・RAGの導入により、全社員にAIを活用する環境を整備しました。※1

これにより、コンサルタントが提供する情報の必要性が減り、知的業務に集中できるようになりました。

社内では、複数のワークグループが立ち上がり、AIを活用したサービスの開発やガイドラインの整備に取り組んでいます。また、社内向けには対話型システムを導入し、コンサルタントがドキュメントの要約や質問ができる環境を整えました。

事例② 医療法人フルーツ

医療法人フルーツは、株式会社mofmofと共同プロジェクトを開始し、わずか2ヶ月で検索拡張生成(RAG)を活用したメモアプリのプロトタイプ(LangChain)を完成させました。※2

LangChainとはLLMを用いた開発ツールキットで、これを使用することでAIアプリケーションの迅速な導入が可能になります。これは、株式会社mofmofにおけるLangChainとOpenAIの最初の開発事例です。

このプロジェクトを手始めに、株式会社mofmofは検索拡張生成(RAG)を用いたプロダクト開発に力を入れていきます。

事例③ 株式会社くすりの窓口

株式会社くすりの窓口は、検索拡張生成(RAG)を活用した生成AIチャットボットの導入に着手し、LLM選定やインフラ構築を1カ月で完了しました。※3

ChatGPT4を採用した検証用チャットボットSlackアプリも同時に提供され、今後はさらに多面的な生成AIサービスの検証を進める予定です。

この取り組みは、新たな顧客体験やサポートの充実を図るための一環であり、将来的には顧客満足度の向上や業務効率化に貢献することが期待されています。

事例④ コネヒト株式会社

コネヒト株式会社は、ChatGPTを使用して社内文書に基づいた回答を生成する機能を開発しました。この機能は、ChatGPTが社内文書を参照し、回答を生成する仕組みです。※4

通常、ChatGPTは学習時のデータに基づいており、特定の企業の情報を提供することが困難です。この問題を解決するため、検索拡張生成(RAG)技術を導入しました。

RAGは、生成AIに検索技術を組み合わせることで、本来の生成AIが知り得ない情報に基づいた回答を可能にします。この機能では、Azure Cognitive SearchやOpenAIの文章埋め込みモデルなどの有料サービスを使用せずに、低コストで実装されています。

「社内文書の参照機能」を使った場合と使わない場合で、ChatGPTの回答にどのような変化が生じたか以下が使用例になります。

  • before: オリジナルのChatGPTを使用した場合
    ChatGPTに「コネヒト(弊社)の制度について知りたい」と伝えないため、回答は一般的な書籍購入補助制度に関するものになります。
    弊社の制度の詳細は外部に公開されていないため、正確な回答は期待できません。
  • after: 「社内文書の参照機能」を使用した場合
    新たに搭載した「社内文書の参照機能」を使用すると、実際の文書に基づいた回答が生成されます。
    例えば、弊社の書籍購入補助制度についての具体的な説明が行われます。

事例⑤ LINEヤフーの「SeekAI」

LINEヤフー株式会社が開発した「SeekAI」は、RAG技術を用いた社内向け業務効率化ツールです。このシステムは、社内の膨大なデータベースから最適な情報を抽出し、従業員の質問に対して的確な回答を生成します。※5

「SeekAI」の特徴は、部門やプロジェクトごとにカスタマイズ可能な点です。社内ワークスペースツールや各種データを参照元として登録でき、従業員は必要な情報を素早く取得できます。テスト導入時には、エンジニアの技術スタック検索時間の削減や、カスタマーサポート業務での高い正答率を実現したそうです。

LINEヤフーは、この取り組みを通じて年間70〜80万時間の業務時間削減を目指しているとのこと。「SeekAI」の導入は、RAGの実用化と業務効率化の好例と言えるでしょう。

事例⑥ セゾンテクノロジー

セゾンテクノロジーは、Amazon Bedrockを活用してRAGシステムを構築し、HULFT製品のテクニカルサポートセンターに導入しました。このシステムは、サポートエンジニアの回答作成時間を最大30%短縮し、業務効率を約10%向上させています。※6

Advanced RAGの手法を採用し、Anthropic Claude 3 HaikuとCohere Command R+を組み合わせることで、高精度な回答生成を実現。Guardrails for Amazon Bedrockを活用して、セキュリティにも配慮したAIチャットボットを構築しました。

サーバーレスアーキテクチャの採用により、運用負荷を削減し、質問1,000件あたり30ドル以下の低コストを達成しています。今後、Agents for Amazon Bedrockの導入を計画しており、より安全で正確な回答生成を目指しているそうです。

事例⑦ 株式会社ゆめみ

株式会社ゆめみは、新入社員のセルフオンボーディングを効率化するため、RAGを活用した独自の生成AI環境を構築しました。このシステムは、社内の膨大な情報から必要なデータをスピーディーに抽出し、新入社員の質問に適切に回答します。※7

システムの特徴として、Slackをインターフェースに採用し、利用のハードルを下げました。またクラウド上にSlack botアプリケーションとRAG技術を組み合わせた環境を構築し、Notionドキュメントから情報を抽出して回答を生成します。

会話の履歴を保持することで、文脈を考慮した応答が可能。ゆめみは、この取り組みを通じて得た技術やノウハウを社外のDX推進にも活用し、より新しい働く環境の提供を目指しているそうです。

事例⑧ ふくおかフィナンシャルグループ

ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、IBMと共同で融資稟議書作成AIの実証実験を行いました。この取り組みは、銀行の基幹業務である融資プロセスの効率化を目指すものです。※8

実験では、生成AIを活用して融資稟議書の意見欄を自動生成し、行員が修正を加える方式を採用。その結果、従来の手作業による作成時間が平均28.3分だったのに対し、AIを活用した方法では18.5分と、35%の時間削減を達成しました。

FFGは今後、Step1の社内業務効率化からStep2の顧客向けサービス組込み、Step3のAI完結型活用へと段階的にAI活用を拡大する計画です。地域金融機関としてAIの可能性を顧客に還元することを目指しています。

事例⑨ 東洋建設株式会社

東洋建設株式会社は、2024年9月に「K-SAFE東洋 RAG適用Version」という労働災害事例検索システムを導入しました。このシステムは、UNAIITが開発した「K-SAFE」を基に、東洋建設の要望に合わせて機能拡張したものです。※9

システムの特徴として、社内の安全関係資料や施工関係資料をChatGPTの検索対象に加え、RAGを適用することで社内基準に基づいた回答が可能になりました。イラスト付きの回答や参照元の表示機能により、情報の視認性と理解度が向上。

この取り組みにより、東洋建設は災害の未然防止、若年層のスキルアップ、職員の負担軽減を目指しているとのこと。今後も同システムの活用を通じて、安全衛生管理の徹底に努めていく方針です。

RAGを導入する際の注意点

検索拡張生成(RAG)を導入する際は慎重に行う必要があります。正確な情報と適切な回答を提供するためには、特に注意が必要です。具体的な注意点は以下の3つです。

実装が難しい

検索拡張生成(RAG)の実装が難しい理由は、複数の要素が組み合わさるためです。

まず、生成AIの動作原理を理解する必要があります。次に、検索技術を組み込むための適切なアルゴリズムやモデルの選択が必要です。

さらに、大量のデータを処理し、関連性の高い情報を抽出するための効率的な方法を見つける必要があります。加えて、検索クエリの適切な設定や文書の選択、そして生成された回答の品質管理も重要です。

これらの要素を総合的に考慮することで、信頼性の高いRAGシステムを構築できますが、その過程は緻密な計画と高度な技術力が求められます

出力される情報の精度

検索拡張生成(RAG)では、生成される情報の精度に注意する必要があります。なぜなら、検索結果に基づいて生成される回答は、検索された文書の信頼性や関連性に大きく依存するからです。

誤った情報や不適切な文書を参照すると、回答の品質が低下し、利用者に誤った情報を提供する可能性があります。そのため、適切な検索クエリの設定や信頼性の高い文書の選択が重要です。

しっかりとした情報源を確保し、精度の高い回答を生成することが求められます

処理に時間がかかる場合がある

検索拡張生成(RAG)では、処理に時間がかかる可能性があります。これは、検索エンジンが大規模な文書データベースを検索し、関連する情報を抽出するために多くの計算資源を必要とするためです。

特に、複数の文書を検索し、その結果を元に回答を生成する場合、処理時間が増加します。また、検索する文書の数や検索クエリの複雑さによっても処理時間が変化します。

したがって、効率的な処理を行うためには、適切な検索エンジンの選択や処理の最適化が必要です。

AIにおけるRAGについてさらに詳細を知りたい方は、以下の記事もお読みください。

RAGを構築する際の費用

RAGの導入には、「どのくらいの費用がかかるのか」「具体的に、どんなところにお金がかかるのか」ご存知でしょうか。実際のところ、RAGの導入費用は、小規模なプロジェクトなら300万円程度、大規模になると3000万円以上かかることもあります。

費用の内訳は、以下のとおりです。

  • データの準備と前処理
    社内文書やナレッジベースを整理し、RAGシステムで利用できる形式に変換。データのクレンジングやフォーマット変換には専用ツールを活用すると、効率よく進められます。
  • システム設計と開発
    RAGの中心となる検索エンジンと生成AIの連携部分を構築。オープンソースのライブラリを使えば、開発コストを抑えることも可能です。
  • インフラ構築
    クラウドサービス(AWSやAzureなど)を利用するのが一般的。クラウドサービスをりようすることで初期費用を抑えつつ、必要に応じたスケールアップが可能になります。
  • テストと調整
    実際の利用シナリオを想定して動作を確認し、不具合があれば調整。課題をクリアすることで、システムの完成度が高まります。
  • 運用・保守
    年間費用として開発費用の20〜30%程度。データの定期更新やシステム改善、セキュリティ対策などが含まれます。

初期費用はかかりますが、RAGの導入により業務効率化やコスト削減が期待できます。プロジェクトの規模や予算に合わせて、段階的に進めていくと良いでしょう。

RAGの開発事例から学ぶこと

検索拡張生成(RAG)は、現代ビジネスにおいて業務効率化や生産性向上に大きく貢献する技術であり、その導入メリットや具体的な事例について解説しました。

RAGの導入には慎重な計画と技術力が必要であり、適切な利用方法を把握することで業務効率化が実現します。検索拡張生成技術の進化と応用範囲の拡大により、さまざまな分野での活用が期待できるでしょう。またその効果は業務時間の短縮やハルシネーションの軽減など、RAGの利点は多岐にわたります。

しっかりとした計画と技術力を駆使して、信頼性の高いRAGシステムを構築しましょう。

最後に

いかがだったでしょうか?

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投稿者

  • 晋平大竹

    生成AIの登場に大きな衝撃を受けたWebライター。好きなAIツールは、ChatGPTとAdobeFirefly。AIがこれからの世界を良い方向に導いてくれると信じ、正しい&有益な情報を発信し続けています!

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